ワイド団信への加入で住宅ローンを利用できる【持病がある人向け】
執筆者: 中野良唯 (ジョインコントラスト株式会社)
住宅ローンを借りる際は、一般的に「団体信用生命保険(団信)」への加入が必須条件となっています。
中には、フラット35のように団信への加入を任意としている住宅ローンもあるものの、団信に加入できなければ、住宅ローンを借りることはできないと考えても良いでしょう。
近年では、さまざまな団信のプランから自分に適したプランを選択できるようになりました。
その中でも、持病があっても加入できる「ワイド団信」は、多くの人に人気があります。
そこで今回は、持病がある人も加入できるワイド団信の概要やメリットを徹底的に紹介します。
加えて、ワイド団信に加入できるおすすめの住宅ローンも説明するため、持病があるため住宅ローンを借りられるか不安という人は、ぜひ当記事を参考にしてください。
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
住宅ローンワイド団信を徹底解説
ワイド団信には、「加入条件緩和割増保険料適用特約付団体信用生命保険」という正式名称があります。
この団信を取り扱っている銀行では、「ワイド団信」と称することがほとんどです。
一部の銀行では、持病がある人でも加入できるワイド団信を取り扱っており、持病があるために一般的な団信に加入できないという場合でも、加入できる可能性が高まります。
まずは、ワイド団信をより詳しく知るためにも、ワイド団信の概要からメリット、さらに引受実績のある主な症状を紹介します。
ワイド団信の概要
ワイド団信とは
持病があるなどの理由で一般的な団信には加入できない人向けに提供されている団信プランです。
健康状態による引受基準が緩和されている分、金利が高くなるという特徴を持っています。
メリットを解説
ワイド団信の大きなメリットは、「一般的な団信よりも加入しやすい」ことにあります。
一般的な団信で加入できない持病と言うと、心臓病などの大きな病気を想像してしまいがちですが、実はうつ病といった精神的な病気なども持病と認定されます。
働けないほど大きな症状があるわけではないものの、精神的な病気を持った契約者が団信プランに加入できないことは珍しくありません。
団信に加入する際は、住宅ローンの契約時に提出する告知書に、契約者の持病などを報告する必要があります。
引受保険会社が各症状を診断し、住宅ローン契約者の健康状態が団信に加入できる基準にあるかどうかを判断します。
この流れは、一般的な団信であっても、ワイド団信であっても同様です。
さらに一般的な団信においても、加入できない病気が明確に定められているわけではありません。
前述のとおり、ワイド団信は一般的な団信よりも引受基準が緩いため、持病があっても団信に加入して住宅ローンを借りられる可能性が高くなります。
また、虚偽の内容を告知書で報告すると、「告知義務違反」で厳しい罰則を課せられます。
告知書には、隠さずに記入するようにしましょう。
主な症例
おもな疾病の カテゴリー |
ワイド団信で過去に引受実績のあるおもな例 |
---|---|
代謝異常による病気 | 糖尿病、脂質異常症(高脂血症・高コレステロール血症)、高尿酸血症・痛風など |
心臓・血圧の病気 | 狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房細動、期外収縮、心臓弁膜症、高血圧症、血栓性静脈炎(静脈血栓症)などv |
脳の病気 | 脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)、脳動脈瘤(脳動脈解離)、てんかん、ギランバレー症候群など |
精神・神経の病気 | うつ病・うつ状態、自律神経失調症、適応障害、不安障害、強迫性障害、パニック障害、睡眠障害、神経症など |
食道・胃・腸の病気 | 潰瘍性大腸炎、クローン病、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸ポリープなど |
肝臓・胆道・膵臓の病気 | 肝炎・ウイルス肝炎(B型肝炎・C型肝炎)、肝機能障害、脂肪肝、胆石、胆嚢ポリープなど |
呼吸器(胸部)の病気 | 喘息、気管支炎、肺炎、肺血栓塞栓症、結核、睡眠時無呼吸症候群など |
目・耳・鼻の病気 | 緑内障、白内障、網膜剥離、難聴、副鼻腔炎など |
ホルモン・免疫異常による病気 | バセドウ病(甲状腺機能亢進症)、甲状腺機能低下症、リウマチ性疾患、橋本病、全身性エリテマトーデスなど |
血液・造血器の病気・異常 | 貧血、赤血球・白血球の数値異常など |
妊娠・女性特有の病気 | 妊娠、子宮筋腫、卵巣嚢腫、子宮頸部異形成、子宮内膜炎など |
これまでワイド団信では、さまざまな銀行において上記の症状の引受実績を持っています。
保険会社により引受範囲は細かく異なるものの、糖尿病やうつ病、さらに心筋梗塞などの症例があってもワイド団信に加入できていることがわかります。
しかし、すべての銀行で上記の症例があってもワイド団信に加入できるわけではありません。
さらに、住宅ローン契約者の健康状態を総合的に見て判断するため、誰もが確実に加入できるわけではないということを覚えておきましょう。
ワイド団信を利用する上での注意点
ワイド団信は、一般団信の加入が難しい人にとって、大きなメリットのある魅力的な団信プランです。
しかし、ワイド団信に加入する際には、以下の点に注意しておきましょう。
注意点
ここからは、2つの注意点をより詳しく説明します。
金利が上乗せされる
冒頭でも説明したとおり、ワイド団信は健康状態による引受基準が緩和されている分、上乗せされる金利が高くなります。
通常、死亡や所定の高度障害状態・余命6か月以内と判断された場合のみに住宅ローン残高が0円となる一般団信プランでは、金利が上乗せされません。
しかし、ワイド団信の場合は0.2%~0.3%の金利が上乗せされます。
上乗せされる金利が高くなるということは、それだけ毎月の返済額も増えるということです。
利子を減らしたいという人にとっては、デメリットとも言えるでしょう。
毎月の返済額が増え、住宅ローンの返済が困難となってしまわないための対策としては、事前確認が最も重要です。
ワイド団信に加入する前に、まずは総支払額のシミュレーションを行い、毎月きちんと住宅ローンの返済ができるかを確認しましょう。
シミュレーション結果を見て、返済が厳しくなってしまうと少しでも感じた場合は、頭金を多く入れて借入金額を減らすなどの処置をおすすめします。
ワイド団信を取り扱っていない金融機関も存在する
ワイド団信は、ネット銀行の住宅ローンでも加入することができます。
しかし、すべての銀行でワイド団信が取り扱われているわけではありません。
金融機関 | ワイド団信の 取り扱い |
特徴 |
---|---|---|
auじぶん銀行 | 〇 (CA) |
金利 +年0.3% |
ARUHI | 〇 (CA) |
金利 +年0.3% |
イオン銀行 | 〇 (CA) |
金利 +年0.3% |
住信SBIネット銀行 | × | - |
新生銀行 | × | - |
ソニー銀行 | 〇 (CA) |
金利 +年0.2% |
楽天銀行 | × | - |
みずほ銀行 | 〇 (SOMPO) |
金利 +年0.3% |
三菱UFJ銀行 | 〇 (CA) |
金利 +年0.3% |
三井住友銀行 | × | - |
りそな銀行 | 〇 (CA) |
金利 +年0.3% |
※()内は引受保険会社(「SOMPO」=損保ジャパン日本興亜ひまわり生命/「CA」=クレディ・アグリコル生命)
上記を見て分かるように、ネット銀行である住信SBIネット銀行や新生銀行、さらに都市銀行である三井住友銀行はワイド団信を取り扱っていません。
また、みずほ銀行以外は、「クレディ・アグリコル生命」が引受保険会社となっています。
クレディ・アグリコル生命は、フランスに本拠を置いている総合金融機関です。
日本では、バンカシュアランス専門の保険会社として、東京に支店が開設されています。
クレディ・アグリコル生命が引受保険会社となっている銀行においては、どこも引受基準は同様で、大きな差はないと考えられます。
上乗せされる金利もほとんどが0.3%ですが、ソニー銀行の上乗せ金利は0.2%と、他の銀行よりも-0.1%の差があります。
上記で紹介した銀行の他にも、ワイド団信を取り扱っている銀行は多数あります。
一般団信に加入できるか不安な人は、ワイド団信の取り扱いがある銀行を選ぶようにしましょう。
ワイド団信に加入できるおすすめ住宅ローン
ワイド団信を取り扱っている銀行は多数あり、上乗せされる金利も0.3%が平均であるため、「ワイド団信を取り扱っているかどうか」ではなく、住宅ローン商品や金利などその他の要素もきちんと確認した上で、銀行を選ぶことが重要です。
ワイド団信に加入できる住宅ローンを借りたいのであれば、以下の銀行がおすすめです。
ネット銀行 |
|
---|---|
都市銀行 |
|
ここからは、上記3つの銀行がなぜおすすめなのかについて、詳しく説明します。
auじぶん銀行 | 金利が低い
金利タイプ | 変動金利 0.310%
2021年01月適用金利 全期間引下げプラン au回線とじぶんでんきのセット利用の場合(au金利優遇割の内、auモバイル優遇割は2021年3月1日開始) 当初固定10年 0.430%
2021年01月適用金利 当初期間引下げプラン au回線とじぶんでんきのセット利用の場合(au金利優遇割の内、auモバイル優遇割は2021年3月1日開始) |
---|---|
団信プラン | 一般団信:金利上乗せなし がん50%保証団信:金利上乗せなし がん100%保証団信:年0.2%上乗せ 11疾病保証団信:年0.3%上乗せ ワイド団信:年0.3%上乗せ |
(出典:auじぶん銀行「住宅ローン」)
ネット銀行であるauじぶん銀行の住宅ローンは、変動金利・固定金利ともに金利が低めとなっています。
そのため、ワイド団信の加入により0.3%の金利が上乗せされても、総支払額の負担が顕著にあらわれるということはないでしょう。
ソニー銀行 | ワイド団信の上乗せ金利が低い
金利タイプ | 変動金利 0.457%
2021年01月適用金利 変動セレクト 新規購入で自己資金10%以上 当初固定10年 0.550%
2021年01月適用金利 固定セレクト 新規購入で自己資金10%以上 |
---|---|
団信プラン | 一般団信:金利上乗せなし がん団信50(がん50%保障特約付き団信):金利上乗せなし がん団信100(がん100%保障特約付き団信):年0.1%上乗せ 3大疾病保証団信:年0.2%上乗せ 生活習慣病団信:年0.2%上乗せ ワイド団信:年0.2%上乗せ |
(出典:ソニー銀行「住宅ローン」)
ワイド団信への加入により上乗せされる金利は、0.3%が平均です。
しかしソニー銀行では、ワイド団信の上乗せ金利が年0.2%に設定されています。
という人におすすめです。
ワイド団信にも加入できなかった場合はフラット35を検討する
一般団信に加入できなかった人でも加入でき、住宅ローンを借りられる可能性が高まるという魅力的なワイド団信ですが、どんな持病があっても必ず加入できるというわけではありません。
いくら引受基準が緩和されていると言えど、引受保険会社による審査が通らず、ワイド団信に加入できなかったという人も少なからずいます。
もしワイド団信に加入できなかった場合でも、「フラット35」であれば借入可能です。
フラット35とは
民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して取り扱われている、長期固定金利の住宅ローンのこと。
住宅ローンを返済する全期間、金利が固定されている(※)ため、毎月の返済額が確定していることが特徴です。
(※)適用金利は銀行によって異なります。
通常、住宅ローンは団信の加入が必須です。
しかし、フラット35は団信の加入が任意とされており、かわりに年1回、住宅ローンとは別に「団信特約料」という保険料を支払う必要があります。
団信に加入しなくても住宅ローンを借りられるという点は、大きな魅力でもあります。
しかし団信に加入しなければ、「万が一に備えられる保証」がありません。
もしも、けがや病気などで住宅ローンを返済できなくなった際は、家族にも負担がかかってしまいます。
そのため、別途生命保険に加入するなどしてリスクに備えておくことが大切です。
団信加入が不必要な住宅ローンのおすすめはARUHI
団信への加入が任意の住宅ローンを借りたい人は、住宅ローンの専門金融機関である「ARUHI」のフラット35がおすすめです。
■ARUHIフラット35の金利
借入期間 | 団信加入 |
---|---|
15年~20年 | 1.200% 2021年01月適用金利 自己資金10%以上 借入期間15年~20年の場合 機構団信加入 |
21年~35年 | 1.290% 2021年01月適用金利 自己資金10%以上 借入期間21年~35年の場合 機構団信加入 |
(出典:ARUHI住宅ローン「ARUHIフラット35 概要」)
ARUHIフラット35の場合、団信なしの金利は団信加入金利の-年0.2%になります。
最長35年間、借入時の金利が適用されるため、長期の資金計画も立てやすいでしょう。
その他、ARUHIフラット35には以下のような特徴もあります。
ARUHIフラット35の特徴
- 通常契約の場合に比べて、割安の保険料で火災保険を契約できる
- 保証人が不要
- 繰上げ返済手数料が不要
- 仲介手数料・事務手数料など一部諸費用を借入金額に含めることができる
さらに、自己資金に余裕がある場合は、より低金利で住宅ローンを借りられるお得なプランの「ARUHIスーパーフラット」も選択できます。
- 一般団信に加入できるか不安な人
- ワイド団信に加入できなかった人
- 自己資金があり、毎月の住宅ローン返済額を確定させたい
上記のように考えている人は、ぜひARUHIのフラット35を検討してみてください。
まとめ
ここまで、ワイド団信の概要やメリットから加入する際の注意点、さらにワイド団信にも加入できなかった場合に代わりとなる住宅ローンまでを説明しました。
ワイド団信は一般的な団信よりも引受基準が緩和されており、持病がある人でも加入しやすい団信として人気ですが、上乗せされる金利が高くなることもあわせて覚えておきましょう。
さらに、ワイド団信は持病のある人すべてが加入できるわけではなく、引受保険会社による審査に受からなかった場合は加入できません。
ワイド団信でも加入できなかった場合は、団信への加入が必須ではない「フラット35」という選択肢があります。
とは言え団信は、いざという時の備えでもあります。まずは、ワイド団信やフラット35を提供している銀行に、一度相談してみましょう。