50代からの住宅ローン!審査に通るポイントと失敗しない返済プランの立て方を解説
執筆者: 政所温也 (株式会社Choices 代表取締役)
役職が付いて収入も安定し、家計に余裕が出てくる50代。
転勤等の懸念が無くなることから、そろそろマイホームを持ちたいと考える方も少なくありません。
ただ50代で住宅ローンを組む場合
- 「審査に通るのか」
- 「無理なく返済していけるのか」
といった悩みが気になるところですよね。
もちろん50代でも住宅ローンの借入れは可能です。
加えて審査面も厳しくなりやすいため、全ての方が住宅ローンを組めるわけではありません。
つまり審査の通りやすさと老後生活を踏まえた返済計画の両方が大切なのです。
そこで今回は、
をご紹介します。
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
住宅ローンは50代でも組める
冒頭でもお伝えしたとおり、住宅ローンは50代でも組むことができます。
実際、フラット35では2019年度の利用者に占める50代の割合は約11%でした(※)。
※利用者年齢の出典:「2019年度 フラット35利用者調査」より「2-2 年齢(融資区分別)」(住宅金融支援機構)を参照
50代で住宅ローンを借りている方も多数いらっしゃいます。
ただ、住宅ローンを組むためには金融機関の申込要件を満たした上で審査に通らなければなりません。
住宅ローンの年齢制限
金融機関は、住宅ローンの利用条件の一つに年齢制限を設けています。
年齢制限は金融機関によって異なるものの、おおむね「完済時の年齢が80歳未満、借り入れ時の年齢が65歳未満」です。
たとえば現在55歳の場合、80歳になる前に完済しなければならないので、借り入れ可能な期間は24年ということになります。
55歳で住宅ローンを組む際に金融機関の年齢制限を満たす借入条件
- 借り入れ時の年齢:55歳
- 返済期間:24年
- 完済時年齢:79歳
しかし実際に上記の条件で申し込みをして、審査に通るかどうかはわかりません。
金融機関の年齢制限以内であっても、利用者の年齢が高ければ審査は厳しくなりやすいからです。
年齢が高いと審査も厳しくなる
金融機関の年齢制限以内でも、住宅ローン利用者の年齢が高ければ審査は厳しくなります。
厚生労働省の調査によると、企業の約79.3%は60歳を定年にしています(※)。
※定年年齢の出典:「平成29年度就労条件総合調査」より「2 定年制等」 (厚生労働省)を参照
再雇用制度を利用すれば65歳まで働けますが、収入はがくんと下がるケースがほとんど。
つまり50代で同等レベルの収入を維持できる期間は、あと10年~15年程度しかないのです。
このような点から見れば、定年が迫っている50代に対し、審査が厳しくなるのは当然と言えるでしょう。
また年齢だけでなく健康状態も審査に影響します。
この点についてもわかりやすく解説していきましょう。
団体信用生命保険への加入が必須
民間の金融機関では、住宅ローンの契約者に「所定の団体信用生命保険(以下:団信)へ加入すること」を義務付けています。
団信とは
加入のためには審査が必要となり、持病や大きな手術歴があると、加入審査は厳しくなりやすい。
したがって50代で住宅ローンを借りるためには、大前提として「団信に加入できる健康状態でなければならない」ということですね。
団信なしでローンを借りる方法もありますが、残された家族の負担を考えると、審査に不安があるからといって団信を付けない選択肢はあまりおすすめしません。
50代が住宅ローン審査を通すためのポイント
50代で住宅ローンを検討するケースにおいて、やはり大きな障害になるのが審査です。
50代で住宅ローン審査に通るためのポイントは以下の3つです。
それぞれのポイントをわかりやすく解説していきましょう。
返済期間を短くする
50代でローンを借りて65歳までに完済するためには、返済期間を短くする必要があります。
国土交通省の調査(※)でも、民間金融機関のうち99%が完済時年齢を考慮していることがわかりました。
先述したように、金融機関が設ける完済時年齢の制限は80歳以下です。
しかし実際には80歳ぎりぎりで長期の住宅ローンを組もうとすると審査に通りにくくなります。
頭金を増やす
住宅ローンの頭金を増やして、借入金額を少なくすることも大切です。
先ほど審査に通るためには返済期間を短くするようお伝えしましたが、単純に返済期間を短くすると、そのぶん毎月の返済額が増え、返済負担率も高くなります。
返済負担率とは
審査に通るためには返済期間を短くした上で、返済額の負担も抑える必要があります。
具体的には、頭金を多く入れて借入金額を減らし、返済負担率を手取り年収の20~25%程度に抑えましょう。
返済負担率の考え方については下記の記事を参考になさってください。
返済期間の短縮で返済額の負担が重くなる場合は、借りすぎになっていると想定されます。
他のローンは完済しておく
審査に通過するためには、他のローンを完済しておきましょう。
先ほど説明した返済負担率には、住宅ローン以外の借り入れも含まれるからです。
住宅ローン以外に借り入れがあると、審査面で不利になりやすいです。
「他のローン」とみなされるもの
- 自動車ローン
- ショッピングローン
- クレジットカードのリボ払い
- スマホの分割払い
これらのローンは可能な限り完済しておき、万全の状態で住宅ローンの審査に臨みましょう。
老後破産を防ぐ!失敗しない返済計画の立て方
50代は家計に余裕が出てくるため、ついつい大きな借入れをしてしまいがちです。
しかし50代で住宅ローンを組む際に考慮しておくべきなのは、今と同条件で働ける期間がせいぜい10年~15年程度だということです。
老後破産で子どもに迷惑をかける、という事態を防ぐためにも、返済計画はより慎重に立てなければなりません。
ここでは失敗しない返済計画の立て方として、以下3つのポイントをご案内します。
失敗しない返済計画の立て方のポイント
それぞれ具体的にどうすれば良いのか、ご説明していきますね。
退職金をあてにしない
50代に限らず、退職金をあてにして住宅ローンを組むのはおすすめしません。
なぜなら退職金は老後の生活を支える貴重な資金源だからです。
総務省の2019年度家計調査(※)によれば、公的年金だけで暮らす無職の高齢夫婦(夫65歳・妻60歳)の家計は、毎月3万3,000円赤字となっています。
つまり仮に毎月3万3,000円の赤字が25年続けば、約1,000万円もの資金が公的年金とは別に必要ということになります。
退職金は老後資金にあて、住宅ローンの返済はできる限り労働による収入や他の貯蓄で補うこと。
そうすれば老後破綻を防ぎ、マイホームでのんびりとした老後を楽しむことができますよ。
定年後の家計を具体的にイメージしよう
定年後の家計における、収入と支出を具体的にイメージしておくことも大切です。
60歳を超えると収入が大きく下がる場合が多い(※)ため、60歳までに返済できれば理想的でしょう。
※定年年齢・再雇用制度の出典:「平成29年度就労条件総合調査」より「2 定年制等」を参照 (厚生労働省)
しかし実際には、50代で住宅ローンを組んで60歳の定年年齢までに完済できる方は少ないですよね。
そのため50代で住宅ローンを組む場合は、定年後の収入がどの程度の金額なのかをしっかり確認しておかなければなりません。
収入の減少が確定している場合は、副業や転職・独立なども視野に入れて、今から収入を補填する方法を考えておきましょう。
親子リレーローンを安易に利用しない
親が50代で子どもが20代~30代の場合は、「二世帯住宅を親子で返済しよう」と考える家庭もあるのではないでしょうか。
親子リレーローンとは
親から子どもへ住宅ローンの返済を引き継ぐ方法。
二世代に渡って住宅ローンを返済していけるため、親が高齢でも返済期間を長く設定できる。
しかし親子リレーローンは返済が長期にわたるため、親子とも身動きが取りにくくなるというデメリットがあります。
特に子どもが20代~30代の場合は、結婚や出産、離婚といったライフイベントが発生しやすいです。
ライフスタイルが変わりやすい20代~30代と、ある程度ライフスタイルが確立されている50代では、返済期間中に揉める可能性もゼロではありません。
また、親子リレーローンで団信に入れるのは一人であることが多いです。
子どものみが団信に加入している状態で親が亡くなれば、親の返済分まで子どもが背負わなければなりません。
まとめ
50代で住宅ローンを組む場合、あと10年~15年で収入の下がる方が大半です。
そのため50代で住宅ローンを組むためには、審査の通りやすさと定年以降の返済の両方に気をつける必要があります。
50代で住宅ローンを検討する際の重要ポイントは、以下の5つです。
50代で住宅ローンを検討する際の重要ポイント
- できる限り65歳完済を目指し、返済期間を短くする
- 頭金を多めに入れつつ他のローンを完済し、返済負担率を抑える
- 退職金は老後資金に回し、なるべく住宅ローンの繰り上げ返済に使わない
- 定年後の収支を明確にしておき、定年後に収入が減る場合は副業なども視野に入れて備えておく
- 親子リレーローンはトラブルが発生しやすいため慎重に検討する
上記のポイントを押さえておけば、50代でも無理なく安定した返済をしていけるはずです。