フラット35への借り換えは同じ銀行でも可能!メリット・デメリットや注意点
執筆者: 政所温也 (株式会社Choices 代表取締役)
と疑問に思いませんか?
簡単に結論から言ってしまうと、同じ銀行間でフラット35からフラット35に借り換え可能かどうかは、金融機関によって取り扱いが異なります。
同じフラット35でも契約時期によって適用金利は大きく変わりますし、「今よりも低金利になるから借り換えしたい」と感じるのも当然ですよね。
ちなみにフラット35から、他行のフラット35へ借り換えるのは一切問題ありません。
当記事では、フラット35からフラット35への借り換えについて、メリット・デメリットや借り換えのベストタイミング等を解説していきます。
さらに、5年前 or 10年前に借入した方が、2021年現在に借り換えするとどれほどコスト削減に繋がるのか、シミュレーションでご説明しています。
この記事の目次
- 銀行によっては、同銀行内でフラット35の借り換えを利用できる
- 金融機関によって対応可否が違う
- 同じ銀行で同じ住宅ローンへの借り換えは基本的にできない
- フラット35からフラット35に借り換えするメリット
- 金利が下がり続けているので、いつ借り換え替えてもコスト削減になる可能性がある
- 借り換え前と同じで金利上昇の影響を受けない
- 昔に比べて団信内容が充実している
- フラット20なら適用金利が低くなる
- 違う銀行に変えることで、異なる契約者サービスを付帯できる
- フラット35からフラット35に借り換えするデメリット
- 住宅ローン審査と団信の加入審査を再度実施する必要がある
- 借り換えに時間がかかる
- 諸費用がかかる
- フラット35から借り換えをする場合のベストタイミング
- 借り換えの利用条件を満たしているかどうか
- 健康状態に問題がないかどうか
- フラット35に借り換えを行った場合のシミュレーション
- まとめ
銀行によっては、同銀行内でフラット35の借り換えを利用できる
一般的には、同じ銀行内で同一の住宅ローンへの借り換えはできません。
しかし冒頭でご説明したとおり、フラット35の場合であれば同じ銀行内での借り換えができる金融機関もあります。
フラット35に関してだけ、少し取扱いが異なるということですね。
重要なポイントなので、理由を簡単にご説明していきますね。
金融機関によって対応可否が違う
金融機関によっては、同じ銀行内でそのまま最新のフラット35に借り換えできる可能性があります。
一般の住宅ローン商品では対応していないにもかかわらず、フラット35だけ対応できる理由は、商品構造そのものが異なるからです。
公的ローンの性質を持つフラット35は、一般の住宅ローンとは提供の目的が異なります。
フラット35は、住宅金融支援機構という公的機関が民間の金融機関をバックアップし、質の高い住宅の取得を推進するという目的で提供されています。
つまりわかりやすくいえば、フラット35を提供しているのは住宅金融支援機構なので、借り換えで銀行側がデメリットを被ることもないということですね(※)。
したがって一般の銀行では嫌煙される同一銀行内の借り換えも、フラット35なら対応している銀行が多いのです。
「今の銀行を気に入っているので、銀行は変えずに金利を引き下げたい」という方も利用できるのはうれしいですよね。
ただし注意点として、フラット35を同一銀行内で借り換えできるかどうかは、銀行によって取扱いが異なります。
同一銀行間で借り換えの取扱いをしている代表的な銀行と金融機関を下記表にまとめました。
<自社内でフラット35からフラット35の借り換えに対応している銀行・金融機関の例>
ARUHI | フラット35取扱金融機関(モーゲージバンク)最大手 |
---|---|
住信SBIネット銀行 | SBIグループのネット銀行。関東中心に対面店舗も展開。 数少ないフラット35(保証型)も取り扱う |
楽天銀行 | 旧楽天モーゲージバンク。ネット通販大手、楽天グループのネット銀行。 |
イオン銀行 | イオングループの銀行。全国のイオン内に相談店舗を持つ |
注意点として、同じ銀行だからといって手数料が安くなったり、審査が緩和されたりといった優遇はありません。
同銀行内でフラット35に借り換える場合は、
- 融資事務手数料が別途必要
- 審査は再度行われる
という2点に注意しましょう。
※買取型の場合。保証型の場合、住宅ローンの貸し手は各金融機関になるため、借り換えの取扱いが異なる可能性がある
同じ銀行で同じ住宅ローンへの借り換えは基本的にできない
フラット35では借り換えられる金融機関もあることをお伝えしましたが、一般的な住宅ローン商品は同じ金融機関内での借り換えは基本的にできません。
民間の住宅ローン商品の借り換え条件を見ると、「当行住宅ローンからの借り換えにはご利用いただけません」という注意書きが原則入っています(※)。
理由は簡単で、同銀行内で常に最新の住宅ローンに借り換えることができてしまったら、銀行側にとって何の得も無いからなのです。
融資額は変わらず金利だけ下がる借り換えは、顧客にとってはメリットでも、銀行側にとってはデメリットだということですね。
※同じ銀行内でも、金利タイプが異なる住宅ローン商品であれば、借り換えが可能なケースもあります。
フラット35からフラット35に借り換えするメリット
フラット35からフラット35に借り換える際のメリットは、金利が低くなるだけではありません。
おもなメリットをまとめると、以下の5つがあります。
フラット35からフラット35に借り換えるメリット
- いつ借り換えてもコスト削減になる可能性がある
- 借り換え後も金利上昇の影響を受けない
- 昔に比べて団信内容が充実している
- フラット20なら適用金利が低くなる
- 違う銀行に変えれば、異なる契約者サービスを付帯できる
各メリットについて、詳しく解説していきますね。
金利が下がり続けているので、いつ借り換え替えてもコスト削減になる可能性がある
フラット35の金利は長期的に見れば下がり続けています。
そのため、現在利用しているフラット35を契約してからある程度の年数が立っていれば、いつ借り換えてもコスト削減に繋がる可能性があります。
参考までに、5年前&10年前の金利と現在の金利を比較してみましょう。
<フラット35(返済期間21年―35年) 金利推移>
【現在】 | 1.370% 2021年04月適用金利 自己資金10%以上 借入期間21年~35年の場合 機構団信加入 |
---|---|
【5年前】 | 年1.480% (2021年4月との金利差▲0.11%) |
【10年前】 | 年2.55% (2021年4月との金利差▲1.18%) |
※過去の金利出典:「フラット35 借入金利の推移」(住宅金融支援機構)
10年前、5年前と比較しても、段階的に金利が下がってきているのがよくわかりますね。
10年前と比較すると、1%以上の金利差があるのです。
金利差が大きければ、諸費用を含めてもトータルコストを削減でき、借り換えメリットを受けられる可能性は十分にあります。
つまり、ローン借入時から年数が経っている方ほど金利差があり、利息削減効果も高くなるということです。
注意点として、借り換えは「現契約の返済開始から1年以上が経過していること」が条件です。
借り換え前と同じで金利上昇の影響を受けない
フラット35からフラット35への借り換えでは、金利タイプは変わらず全期間固定金利のままです。したがって、継続して金利上昇の影響を受けることなく、安心して返済することができます。
フラット35への借り換えでは金利上昇を気にする必要もないので、先を見据えた返済計画を立てられますよ。
教育資金や老後資金など、住宅以外にかかってくる資金の準備もしやすくなるのが大きな魅力ですね。
昔に比べて団信内容が充実している
2021年現在、フラット35(買取型)に任意で付帯できる団体信用生命保険(通称「団信」)は、2017年10月以前のフラット35より内容が充実しています。
フラット35の団信は、2017年10月申込受付分より「新機構団信」としてリニューアルし、内容が一新されました。
新機構団信では、<死亡・高度障害保障>から<死亡・身体障害保障>に変わり、以前より充実した内容になっています。
要は、以前の団信より保障の範囲が広くなったということですね。
また、以前の団信では支払いが別途必要だった団信保険料も、新機構団信では金利に含まれているため、保険料を別に支払う必要はありません。
したがって現契約の団信が2017年10月以前のものであれば、借り換えることで団信保障をパワーアップさせることが可能です。
ただし注意点として、新機構団信は「買取型」のフラット35のみに適用されます。
「保証型」のフラット35の場合は、販売する金融機関が取り扱う団信に加入することになるので、注意してくださいね。
フラット20なら適用金利が低くなる
フラット35からフラット20へ借り換える場合は、さらに適用金利を引き下げることができます。
フラット20とは、その名のとおり返済期間が15年以上20年以下の契約に適用されるプランです。
フラット35よりも低金利になっているのが大きな特徴ですね。
<フラット35とフラット20の金利比較>
フラット35 | 1.370% 2021年04月適用金利 自己資金10%以上 借入期間21年~35年の場合 機構団信加入 |
---|---|
フラット20 | 1.240% 2021年04月適用金利 自己資金10%以上 借入期間15年~20年の場合 機構団信加入 |
フラット35の借り換えで契約できる返済期間は、35年から今までの返済年数を差し引いた期間です。
つまり、現契約のフラット35を10年支払っている場合、借り換えで契約できる返済期間は25年ということになりますね。
借り換えの際に、残りの返済期間を25年から20年に短縮すれば、フラット20の金利を適用することができます。
返済期間を短縮すれば月々の返済額は上がる可能性もありますが、利息軽減効果で総返済額を少なくすることが可能です。
少しでもトータルコストを抑えたい方は、フラット20の利用も検討してみましょう。
違う銀行に変えることで、異なる契約者サービスを付帯できる
フラット35からフラット35へ借り換える場合、違う金融機関へ借り換えることで、各金融機関が用意している独自の契約者サービスを付帯することもできます。
各金融機関の契約者サービスを以下表にまとめました。
<各金融機関 契約者サービスの例>
ARUHI | 引っ越し代や新生活用の家具代など、各種優待が受けられる「ARUHI 暮らしのサービス」 |
---|---|
住信SBIネット銀行 | 住信SBIネット銀行の手数料ステージがランクアップし、振込手数料等の無料回数が増える |
イオン銀行 | イオングループの買い物が毎日5%オフになる「イオンセレクトクラブ」 |
※2019年9月時点の情報を記載
このように同じフラット35でも、金融機関によって受けられる契約者サービスは違います。
同じ銀行内で借り換えても、違う銀行で借り換えてもかかる手数料は同じです。
フラット35からフラット35に借り換えするデメリット
一方で、フラット35からフラット35への借り換えではデメリットも発生します。
おもなデメリットは以下の3つです。
フラット35からフラット35に借り換えるデメリット
上記のデメリットを理解しておけば、借り換えによるメリットを最大限に発揮することができますよ。
重要なポイントなので、各デメリットについてわかりやすくご説明していきますね。
住宅ローン審査と団信の加入審査を再度実施する必要がある
フラット35へ借り換える際は、新規借入のときと同様に、再度住宅ローンの審査と団信の加入審査を受けることになります。
したがって借り換えの際も、健康状態や住宅ローン以外の借入れ状況などを改めて審査で判断されるわけですね。
借り換え時の状況によっては、審査で落ちてしまう可能性もあるので、注意が必要です。
フラット35の団信は任意加入のため、付加せずに申し込めば、健康状態を考慮する必要はありません。
しかしながら長期のローン契約をカバーできる団信は、できる限り付けておきたい保障ですよね。
借り換えの検討は、できる限り健康状態に不安が無い状態で行うことをおすすめします。
借り換えに時間がかかる
フラット35に関わらず、借り換えの手続きはある程度時間がかかります。
新規借入時は不動産会社のサポートなどもあり、スムーズに手続きできたという方もいるでしょう。
しかし、借り換えではこのようなサポートは期待できません。
加えて、現在の住宅ローンと借り換え後の住宅ローンに対する手続きが両方必要なので、手間と時間がかかりやすいのです。
借り換え手続きは時間がかかるものと思っておき、スケジュール管理をしっかり行った上で進めていくようにしましょう。
諸費用がかかる
フラット35からフラット35へ借り換える場合、たとえ同銀行内での借り換えでも、諸費用は必要です。
フラット35の借り換えでは、融資事務手数料や抵当権の抹消および設定費用、印紙代などの諸費用がかかります。
諸費用のうちもっとも大きな費用を占めるのが「融資事務手数料」です。
融資事務手数料は金融機関によって手数料率が異なるため、できる限り手数料が安い金融機関を探しましょう。
また、融資事務手数料を少なくするために、頭金を多く入れて借入金額を少なくするという方法もありますよ。
フラット35から借り換えをする場合のベストタイミング
フラット35からフラット35へ借り換えをする場合、少しでも良い条件で借り換えしたいものですよね。
とはいえ、これから先金利が一番下がる時期を予想してタイミングをはかるのは、現実的ではありません。
金利動向でタイミングをはかるのではなく、今借り換えできる状況にあるかどうかで判断することが大切ですよ。
あなたの今の状況が、下記の4つを満たしているのなら、今こそ借り換えのベストタイミングです。
借り換えのベストタイミングにあるかどうかを判断する条件
- 借り換えでコスト削減や団信保障のメリットを受けられるのか
- 諸費用を支払える余裕があるか
(諸費用はローンに含めることもできるが、返済額が上がってしまうためおすすめしない) - 借り換えの利用条件を満たしているか
- 健康状態に問題はないか
上記の中で特に重要なのが、「借り換えの利用条件」と「健康状態」です。
借り換えは審査に通らなければ話になりませんので、非常に重要なポイントですよ。
それぞれ軽視しがちな重要ポイントなので、詳しく解説していきますね。
借り換えの利用条件を満たしているかどうか
フラット35の借り換えは、まず利用条件を満たしているかどうかを確認しておくことが大切です。
フラット35の借り換え条件で、おもなものを以下に記載します。
フラット35 借り換え利用条件
- 現契約フラット35の借入日(契約締結日)から、借り換え申込日前日までに1年経過していること
- 借り換え申込日前日までの1年間、フラット35の返済を滞りなくできていること
- 申込時の年齢は満70歳未満
- 年収400万円の方は返済負担率30%以下、年収400万円以上の方は返済負担率35%以下
- ▼他詳しい条件はこちらをご覧ください▼
「借換融資のご利用条件」(住宅金融支援機構)
健康状態に問題がないかどうか
借り換えするときは、健康状態の確認も重要になります。
借り換えで新機構団信に加入する際、健康状態の告知内容によっては団信を付加できない可能性もあるからです。
新機構団信の健康告知で聞かれるおもな質問項目は、以下の2つです。
新機構団信の健康告知で聞かれる質問項目
(1)告知日より3か月以内に医師の治療・投薬を受けたことがあるか
(2)告知日より3年以内に該当の病気手術や2週間以上にわたる治療・投薬歴があるか
→該当の病気:心臓・血圧性疾患、脳・精神・神経系疾患、新生物疾患など
- ▼詳しい告知内容はこちらをご覧ください▼
「新機構団信 申込書兼告知書 記入例」(住宅金融支援機構))
直近で治療歴がある方や、3年以内に手術歴・治療歴がある方は告知内容に該当し、審査が通らなくなる可能性があります。
「金利がもっと下がるまで」と待っていたら、予期せぬ病気やケガで団信に加入できなくなるかもしれませんよ。
フラット35に借り換えを行った場合のシミュレーション
フラット35への借り換えタイミングを理解できたところで、実際に返済シミュレーションをしてみましょう。
下記の方が、2021年現在に借り換えすればどうなるのか、シミュレーションをしました。
- ~過去に3000万円を、35年返済(元利均等返済・ボーナス払いなし)で借入~
5年前(2016年)に借り入れた場合
※各シミュレーションは住宅金融支援機構の「借換えシミュレーション」を利用し、計算結果の端数を切り捨てた概算値を記載
5年前に借り入れたフラット35をそのまま継続して支払った場合と、継続せずに借り換えした場合のローン返済総額を比較しました。
<前提条件>
|
ケース | ①5年前のフラット35を継続返済 | ②新しいフラット35に借り換え |
---|---|---|
金利 | 年1.480% | 年1.370% |
月々のローン返済額 | 1年~35年目:8万9,481円 | 借り換え前:8万9,481円 借り換え後:8万8,118円 |
ローン返済総額 | 約3,370万円 | 約3,249万円 |
借り換えによるコスト削減効果 | ▲約121万円 |
5年前にフラット35を金利1.48%で借りていて、5年後の2021年に年1.370%で借り換えした場合、コスト削減効果が約130万円あるという結果になりました
諸費用を差し引いても、大きな削減効果があることがわかりますね。
なお、このシミュレーションでは頭金なし、融資事務手数料を2.20%(税込)という前提で計算しています。
したがって、頭金を多めに入れたり、融資事務手数料が2.20%以下の金融機関で借り換えしたりすれば、トータルコストをさらに削減することができますよ。
諸費用の多くを占める融資事務手数料は、金融機関によって費用設定が異なります。
借り換えの際は、できる限り手数料率の低い金融機関を探して借り換えるようにしましょう。
頭金や融資事務手数料をもっと改善するとどうなるのか、様々なパターンで計算しつつ、もっとも削減できる借り換えパターンを探してくださいね。
まとめ
当記事を読むことで、同じフラット35の借り換えでもコスト削減につながる可能性があるとお分かりいただけたと思います。
当記事の重要なポイントを、改めておさらいしましょう。
重要なポイント
- フラット35からフラット35へ借り換えるとき、同金融機関内で取り扱い可能な場合もある。
ただし、同銀行間でも手数料は別途必要なので注意が必要 - 同じフラット35でも借り換えで金利を低くしたり団信を新しい内容に更新できたりといったメリットがある
- コスト削減効果があり、利用条件や健康状態に問題がなければ、その時が借り換えのベストタイミング
- コスト削減効果を高めるためには、
「頭金を多めに入れる」
「融資事務手数料が低い金融機関を探す」
「返済期間を短縮してフラット20を利用する」といった対策がおすすめ
実は、住宅ローンの借り換え回数に制限はありません。
したがって、全期間固定金利で安心感のあるフラット35を借りている方でも、定期的に借り換えを考えることが大切です。
フラット35なら同銀行内で借り換えすることもできるので、選択肢は豊富にありますよ。