賃貸併用住宅は住宅ローンで購入できる!メリット・デメリットと注意点は
執筆者: 政所温也 (株式会社Choices 代表取締役)
家賃収入を得ながら住宅ローンで購入できる「賃貸併用住宅」が注目を浴びていますよね。賃貸併用住宅は自宅の一部を賃貸物件として活用しつつ、低金利な住宅ローンで購入できる点が大きな魅力ですよ。
しかしその一方で、
・初期費用やランニングコストなど、収益構造はどうなるのか?
・賃貸併用住宅で住宅ローンを利用する条件は?
といった疑問も出てきます。
当記事では、賃貸併用住宅の基本知識をご説明した上で、条件やメリット・デメリット、注意点について詳しく解説していきます。
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
- 賃貸併用住宅とは
- 賃貸併用住宅でも住宅ローンを利用できる
- 住宅ローン利用条件は50%以上が自宅用スペースであること
- 50%に満たない自宅用スペースの賃貸併用住宅を住宅ローンにする方法
- 賃貸併用住宅の収益モデル
- 賃貸併用住宅で得られる収入
- 初期費用
- ランニングコスト
- 賃貸併用住宅で得られる収益モデル
- 賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するメリット
- 1.不動産投資ローンよりも金利が低い
- 2.税制上の優遇を受けられる
- 3.家賃収入を住宅ローン返済に充当できる
- 4.不動産投資ローンより審査に通りやすい
- 賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するデメリット
- 1.一般の戸建て住宅よりもローンが高額になる
- 2.賃貸スペースによって、不動産投資ローンに融資を組みなおす必要がある
- 3.住宅ローンを使って、複数の賃貸併用住宅を購入することはできない
- 4.空室リスクや家賃滞納リスクが住宅ローン返済に影響する
- 5.年収のハードルが高くなる
- 賃貸併用住宅を建てるまでの流れ
- 賃貸併用住宅について抑えておきたいポイント
- 賃貸併用住宅の良いポイント
- 賃貸併用住宅の注意点
- まとめ
賃貸併用住宅とは
賃貸併用住宅とは、自宅建物の一部を賃貸物件として活用し、家賃収入を得られる住宅のことです。つまりわかりやすくいえば、賃貸物件と個人の住居の機能を一体化させたものだということですね。
賃貸併用住宅にはさまざまな種類があり、住居スペースと賃貸物件を完全に切り分けたタイプの物件もあれば、賃貸物件の最上階を住居スペースにしているタイプもあります。住宅の間取りによっては、将来的に二世帯住宅として親子で住むこともできますよ。
土地を有効活用して資産を増やしながら相続も視野に入れて住宅を持てるので、新しい相続対策や資産運用方法として注目が高まっているのです。
賃貸併用住宅でも住宅ローンを利用できる
賃貸併用住宅は賃貸収入を得られる物件ですが、場合によっては物件の購入に住宅ローンを利用することも可能です。
ただし、住宅ローンを利用するための条件として「住宅の50%以上を自宅用スペースにしなければならない」という点があります。したがって条件を満たすための工夫が必要になるわけですね。
住宅ローンの詳細な利用条件と、50%に満たない自宅用スペースを住宅ローンに組み入れる方法について、詳しく解説していきますね。
住宅ローン利用条件は50%以上が自宅用スペースであること
先ほどもお伝えしたように、賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するためには、物件の50%以上を自宅用スペースにしないといけません。具体的には、建物の延床面積のうち最低51%は大家の住宅でないといけないということです。
賃貸併用住宅を検討している人は、住宅ローンを利用できるかどうかでローンの負担額は大きく異なります。上記の利用条件は、必ず覚えておいてくださいね。
50%に満たない自宅用スペースの賃貸併用住宅を住宅ローンにする方法
賃貸併用住宅を検討するとき、住宅や土地の状況から、自宅用スペースが50%に満たないケースもあると思います。
もし50%に満たない場合でも、住宅として住んでいる部分だけは住宅ローンを使いたいというのが本音ですよね。
登記を分けることで、それぞれが独立した不動産という扱いになるということですね。これはすごく重要なポイントなので、賃貸併用住宅の購入を検討している方は、必ず覚えておきましょう。
賃貸併用住宅の収益モデル
賃貸併用住宅は個人の住宅と賃貸物件が一緒になっているため、毎月住宅ローンの支払いと賃貸収入が発生します。そのため、「収益構造がわかりにくい」というデメリットがあるのも事実ですよね。
そこで、賃貸併用住宅で得られる収入と初期費用、毎月のランニングコストについて、簡単な収益モデルを挙げつつ解説していきましょう。
賃貸併用住宅で得られる収入
賃貸併用住宅で得られる収入は、賃貸物件部分の家賃収入がメインです。
例えば賃貸併用住宅のうち、賃貸物件として貸し出す部屋が3戸あるとします。1戸あたりの賃料が月8万円なら、
8万円×3戸=24万円が毎月の家賃収入になるということです。
初期費用
賃貸併用住宅でかかるおもな初期費用を挙げると、
- 物件そのものを購入・建築する際に組むローンの頭金(※)
- 諸費用
- 家具購入費
- 引っ越し代
などですね。
※金融機関やローンによっては頭金なしのフルローンを組むこともできます。ただしフルローンを組むには一定の条件がある点に加え、優遇金利も得られにくく、さらにリスクも高くなるのでおすすめしません。
初期費用の目安は物件の規模によっても異なりますが、物件購入・建築費用のおよそ3割~4割程度はかかると思っておきましょう。物件購入費が6,000万円の場合、1,800万円~2,400万円程度必要だということですね。
ランニングコスト
賃貸併用住宅では、
- 賃貸物件部分の維持・管理にかかるコスト
- 物件そのものにかかるローンの返済費用
という2つのランニングコストがかかります。
賃貸物件部分の維持・管理には、
- 物件の固定資産税
- 入居者の募集費用
- 管理会社の費用
- 部屋の修繕費用
などのさまざまな費用がかかります。
賃貸物件部分の維持管理費用の目安としては、家賃収入の1割~2割程度でしょう。家賃収入が24万円だとすれば、4万8,000円程度が維持・管理コストになるという計算です。
物件そのものにかかるローン返済費用も、大きなランニングコストです。
仮に物件建築費用が6,000万円、頭金1,200万円でローンが4,800万円の場合、月々のローン返済額は約17万円(※)以上になるということです。
※金利1.5%、返済期間30年で計算
このように賃貸併用住宅は、ランニングコストも高額になりやすいという点に注意しておきましょう。
賃貸併用住宅で得られる収益モデル
賃貸併用住宅で得られる収入や、初期費用、ランニングコストをまとめた収益モデルは下記のとおりになります。
収益モデル:3戸の賃貸スペースがある賃貸併用住宅の場合 |
|
この収益例では、毎月の住宅ローンを3戸の家賃収入で賄い、わずかですが収益も出すことに成功しています。
すべての賃貸併用住宅でこのような利益を得られるとは限りませんが、うまくいけば「住宅ローンを家賃収入で支払うこと」も十分可能ですよ。
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するメリット
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するメリットは、
の4つです。
賃貸併用住宅を検討する上でそれぞれ非常に大切なポイントなので、詳しく解説していきますね。
1.不動産投資ローンよりも金利が低い
一般的に、家賃収入を目的とした収益用物件の購入には、「不動産投資ローン」が適用されます。不動産投資ローンと住宅ローンとの簡単な違いは下記表のとおりですが、もっとも大きな違いは「適用金利」です。
<不動産投資ローンと住宅ローンの違い>
ローンの種類 | 不動産投資ローン | 住宅ローン |
---|---|---|
ローンの目的 | 投資として収益を得るための住居購入資金 | 個人として住むための住居購入資金 |
金利の相場 | 3%~5%程度 | 0.5%~1.5%程度 |
金利タイプ | 変動金利と固定金利がある | 変動金利と固定金利がある |
審査基準 | 物件の収益性を重視 | 個人の信用力を重視 |
上記表のとおり、不動産投資ローンの金利は住宅ローンの3~5倍程度高い水準になっています。金利差による利息負担を考えると、圧倒的に住宅ローンのほうが有利だということですね。
ちなみに金利タイプに関しては、2021年現在住宅ローン相場が固定金利も変動金利も超低金利水準で推移しているため、どちらも利息軽減効果を得ることができますよ。
賃貸併用住宅での金利タイプの選び方は、次の項目をそれぞれ参考にしてくださいね。
固定金利を選べば金利上昇リスクに備えられる
固定金利のメリットは、将来的な金利上昇リスクに備えられることです。賃貸併用住宅の管理・維持には火事や地震などの災害リスクのほか、入居者が見つからない「空室リスク」も付きまといます。
つまり、万が一入居者が見つからず家賃収入が低下しているときに金利も上昇すれば、収益性が一気に悪くなってしまうということです。
固定金利は変動金利より金利が高いため、ランニングコストが高くなるデメリットはあります。
しかしながら先々のリスクをできるだけ抑えたいのであれば、金利上昇リスクに備えられる固定金利がおすすめですよ。
変動金利を選んだ場合毎月の負担金利上昇を緩和する措置がある
変動金利のメリットは、圧倒的な低金利による利息軽減効果です。ただ、変動金利には金利上昇時の負担増加というデメリットがありますよね。
金利上昇というデメリットを抑えるための緩和措置として、変動金利には「125%ルール」と「5年ルール」という特殊な取り扱いが存在しています。詳細は下記のとおりです。
変動金利かつ元利均等返済方式を選択した場合の特殊ルール
125%ルール
毎月の返済額が元の返済額の125%以上にならないように抑えるもの5年ルール
毎月の返済額が5年間変わらないように抑えるもの
ただし注意点として、これらのルールで急激な負担増は抑えられたとしても、実際の適用金利が変わったわけではありません。どちらのルールも金利上昇によるローン返済者の負担を緩和する効果があります。したがって、仮に金利が上昇しても毎月の返済額が一気に上昇することはありません。
変動金利で急激な金利上昇あった場合は、毎月の返済で支払いきれない「未払い利息」が発生する可能性があるので、注意してくださいね。
2.税制上の優遇を受けられる
賃貸併用住宅は税制上の優遇を受けられるため、節税対策としても非常に有効です。
おもな節税効果は、
(1)住宅ローン減税利用による所得税・住民税の節税効果
(2)固定資産税の節税効果
(3)相続税の節税効果
の3つです。それぞれ項目別にご説明していきますね。
(1)住宅ローン減税が利用できる
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用する場合、一般の住宅ローンと同様「住宅借入金等特別控除(住宅ローン減税)」が活用できます。
住宅借入金等特別控除とは、毎年の住宅ローン残高の1%を10年間、所得税と住民税から控除できる節税制度です。
例えば住宅ローン残高が4,000万円ある場合、1年で約40万円もの節税効果を得られることになりますよ。
加えて、2019年10月~2021年12月31日までの間に住宅を購入・入居した場合は、控除期間が13年間に延長される措置があります。
延長措置を受けられるとより節税効果が高くなるので、購入時期に気をつけておきたいところです。
(2)固定資産税の節税効果
賃貸併用住宅は住宅とみなされるため、一般的な住宅の購入と同様に、固定資産税の軽減措置を受けることができます。固定資産税の軽減措置とは、住宅用地と新築住宅の建物に対して認められるものになっています。
詳細は下記のとおりです。
固定資産税の軽減措置詳細
住宅用地の軽減措置:住宅用地の200m2まで「課税標準 × 1/6」、200㎡を超える部分については「課税標準 × 1/3」で計算される
新築住宅の軽減措置(2020年3月31日までに新築された場合の特例):120㎡までの部分について、3年間もしくは5年間にわたり、固定資産税が1/2になる
こちらも大きな節税効果があるので、やはり賃貸併用住宅を住宅ローンで購入するメリットは大きいといえますね。
(3)相続税の評価額を減らすことが可能
土地や住宅を子どもに相続するには、一定の相続税がかかります。賃貸併用住宅の場合、賃貸部分は居住用物件より相続税の評価額が小さくなっているため、わずかながら節税効果があります。
もし「小規模宅地等の特例」を受けることができれば、節税効果はさらに高まるので、積極的に活用しましょうね。
小規模宅地等の特例を受ける場合の取り扱い |
賃貸物件用宅地は最大50%(200㎡限度)まで、居住用の宅地については最大80%(330㎡限度)まで評価額を減額することができる。 |
3.家賃収入を住宅ローン返済に充当できる
賃貸併用住宅では、住宅ローンの返済を家賃収入で充当することができます。一般的な住宅ローンを組む場合、ローンの返済原資はローン利用者の給与収入のみです。つまり、給与収入が変動すれば返済を維持できなくなるというリスクが出てきます。
しかしながら賃貸併用住宅であれば、給与の他に家賃収入という大きな返済原資が得られます。収入の柱が複数あることで、収入変動リスクを抑える効果がありますよ。
4.不動産投資ローンより審査に通りやすい
賃貸併用住宅は住宅ローンの審査になるため、不動産投資ローンより審査に通りやすいと言われています。なぜかというと、不動産投資ローンは住宅ローンより審査項目が多く、物件の収益性も重視されるからです。
つまり、審査がより厳しくなる傾向があるということですね。
審査が厳しくなると求められる書類も増えるため、ローン手続きもより大変で複雑です。手続きの面を考えても、住宅ローンのほうが有利に審査をすすめやすいと言えるでしょう。
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するデメリット
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用する場合、デメリットも複数存在します。
それは下記の5つです。
- 一般の戸建て住宅よりもローンが高額になること
- 賃貸スペースによっては、不動産投資ローンに融資を組みなおす必要がある
- 住宅ローンを使って、複数の賃貸併用住宅を購入することはできない
- 空室リスクや家賃滞納リスクが住宅ローン返済に影響する
- 年収のハードルが高い
これらも賃貸併用住宅を検討する上で非常に重要なポイントなので、一つずつ解説していきますね。
1.一般の戸建て住宅よりもローンが高額になる
賃貸併用住宅は、住宅と賃貸物件を一つの建物内に同居させるため、必然的に建築費と購入費が高額になります。
高額な住宅ローン支払いは賃貸収入で賄えるとはわかっていても、高額な借入額に心理的な抵抗がある人も多いでしょう。ローンが高額になると発生する利息も高くなるので、この点はデメリットだといえますね。
2.賃貸スペースによって、不動産投資ローンに融資を組みなおす必要がある
賃貸併用住宅では、賃貸スペースが50%を超えた場合、「不動産投資ローン」で融資を組みなおす必要があります。
よくあるケースは、オーナー夫婦とその子ども夫婦が住居スペースを占有している場合です。転勤などの事情で子ども夫婦が出ていき、残った住居スペースを賃貸として活用するには、不動産投資ローンで融資を組まなければいけません。
不動産投資ローンは適用金利が高く、賃貸収入とローン返済費用のバランスが崩れる可能性もあるので、要注意です。
3.住宅ローンを使って、複数の賃貸併用住宅を購入することはできない
住宅ローンは、「個人の住居購入」を目的としたローンです。したがって、住宅ローンを利用できる物件は一つだけです。当然、賃貸併用住宅の経営が順調になってきたからといっても、もう一つ賃貸併用住宅を住宅ローンで購入することはできません。
賃貸併用住宅を住宅ローンで借入れしている場合にもう一つ賃貸収入を増やそうと思ったら、必然的に不動産投資ローンでの借入れになりますよ。この点は注意が必要ですね。
4.空室リスクや家賃滞納リスクが住宅ローン返済に影響する
賃貸併用住宅での収益の柱は賃貸収入です。したがって、空室リスクや家賃滞納リスクが住宅ローン返済に大きく影響することになります。
空室や家賃滞納を防ぐためには、需要のある地域で信用力の高い借り手を募集するなど、不動産投資の知識と経営力が必須です。安定的な家賃収入を得るためには学習と経験が必要であり、簡単ではないということを覚えておきましょう。
5.年収のハードルが高くなる
賃貸併用住宅を住宅ローンで借りる場合、審査で重視されるのは個人の信用力です。つまりわかりやすくいえば、年収や勤務先ですね。
賃貸併用住宅は借入額が高額になるため、収入が不安定な個人事業主や、低収入の人は審査が通りにくくなります。不動産投資ローンほど審査が厳しくないと言っても、年収のハードルは高くなるので注意してください。
賃貸併用住宅を建てるまでの流れ
賃貸併用住宅を建築する場合、住宅を建てるまでの流れは以下のとおりです。
賃貸併用住宅を建築する流れ
- 土地の購入
- 住宅の建築
- 融資の実行
- 入居者の募集
この中で特に重要なのが①と②です。何故なら、賃貸併用住宅は便利な立地で、かつ賃貸で住みやすい間取りでなければ入居者が集まらないからです。
自分も住むのだからといって個人の好みを強く反映させた住宅を建ててしまうと、入居者が集まりにくくなります。注意してくださいね。
空室リスクは賃貸収入を阻む最大の障壁です。賃貸併用住宅を建てるときは一定の人口需要があり、かつ万人受けする間取りの住宅を建てるようにしてください。
賃貸併用住宅について抑えておきたいポイント
賃貸併用住宅の購入を考えている場合は、注意点と良いポイントを理解しておく必要があります。先ほどご説明したとおり、賃貸併用住宅を建てるときは土地の購入と建築が収益を左右します。
先走って建築や購入をしてしまう前に、各ポイントをしっかり理解しておきましょう。
賃貸併用住宅の良いポイント
賃貸併用住宅の良いポイントは、
の4つです。
それぞれ詳しく解説していきますね。
1.個別に建てるよりも支出を抑えられる
賃貸併用住宅の場合、賃貸収入が収入の柱に加わるため、個別で住宅を建てるよりも支出を抑えやすくなります。将来のローン返済に不安がある人にとっては、収入の柱が2本になるのは心強いですよね。
2.居住スペースを自由に変更できる
賃貸併用住宅では、居住スペースの設定に決まりはありません。物件のオーナーは自分なので、家族のライフスタイルにあわせて居住スペースを自由に変更できるのも魅力ですよね。
3.自身で管理が容易なため、収益率が高くなる
賃貸併用住宅は物件の管理が自身でできるため、運用コストがかからず、収益率を高くすることができます。もちろん、物件の購入や建築にかかる費用、日々の管理という手間はかかりますが、賃貸経営の努力が収益に直結するのは、大きな醍醐味だといえますよ。
4.入居者との関係性が構築できる
一般的に賃貸併用住宅は、入居者とオーナーの距離が近いという点がデメリットとして挙げられやすいです。
しかし裏を返せば、それだけ密な関係性が構築できるということでもあります。
周りに住んでいる人のことを全く知らないよりも、知っておくほうが安心できるという人もいるでしょう。
オーナーとして入居者の人柄を把握し、豊かな住環境を築きたいという人には最適ですよ。
賃貸併用住宅の注意点
ここまで賃貸併用住宅の良い点について触れてきましたが、当然、賃貸併用住宅ならではの注意点も存在しています。注意点を簡単にまとめると、
- 将来の売却は難しい
- 家族以外の人(入居者)が同じ建物に住むことになる
- トラブルが発生しても管理会社を通さず直接クレームがくる
- 入居者募集が不利になる
- オーナー(自分)の部屋は収益を生まない
- 賃貸経営の目線から立地を考慮する必要がある
- 賃貸併用住宅は中途半端な収益モデル
の7つですね。
とても大切なポイントですので、それぞれ分けてご説明していきますね。
1.将来の売却は難しい
賃貸併用住宅は居住スペースと賃貸スペースが一緒になっているため、一般的な戸建て住宅とは間取りが異なります。売却を将来的に考えても、普通の戸建て住宅のように需要が多くないため、なかなか買い手がつかない可能性もありますよ。
いくら便利な立地でも、簡単には売却できないということを覚えておきましょう。
2.家族以外の人(入居者)が同じ建物に住むことになる
賃貸併用住宅に住むのは自分と自分の家族、そしてまったくの他人です。賃貸の借り手は定期的に入れ替わることになるため、常に家族以外の他人が同じ建物内に住んでいるという状況に慣れなくてはいけません。
入居者との距離の近さを良いと考える人もいるでしょうが、その近さを足かせに感じる人もいます。
他人との距離の近さをどこまで許容できるかをよく考えたうえで、購入を検討しましょう。
3.トラブルが発生しても管理会社を通さず直接クレームがくる
入居者とオーナーの距離が近い場合の弊害として、トラブルによるクレームがきやすいという点があります。
しょっちゅうクレーム対応があると、肉体的にも精神的にも大変です。クレームの有無は入居者の質にもよりますが、このような可能性があることを覚えておきましょう。
4.入居者募集が不利になる
賃貸併用住宅の場合、入居者募集時に不利になることもあります。立地や間取りは気に入っていても、オーナーが同じ物件に住んでいることを嫌がる入居者もいるのです。
入居者の募集が不利になれば空室リスクにつながりますので、注意しながら入居者募集をしなければいけません。
5.オーナー(自分)の部屋は収益を生まない
オーナーである自分の部屋は居住用なので、収益を生みません。収益用不動産を持つ場合と賃貸併用住宅に住みつつ運営する場合を単純に比較すると、賃貸併用住宅のほうが収益性は悪くなるのが当然です。
賃貸併用住宅の利点は一つの物件で住宅と投資を実現できる利便性なので、ひたすら収益を追求するものではないのです。
6.賃貸経営の目線から立地を考慮する必要がある
賃貸併用住宅の場合、立地や間取りが非常に重要です。つまりわかりやすくいえば、ご自身の好きな場所に好みの住宅を建てるということができないのです。
個人の好みや価値観ではなく、賃貸経営の目線を最優先にして、立地を考慮しなければいけません。そのため、賃貸併用物件ではマイホームを建てる楽しみがないという人もいるかもしれません。
7.賃貸併用住宅は中途半端な収益モデル
ここまでお話してきたとおり、賃貸併用住宅は住宅ローンが使える点や、利便性が大きな魅力の住宅です。そのため、不動産投資として収益を追求する場合、どうしても中途半端な収益モデルになることは否めません。
ただ、賃貸併用住宅で住宅ローン減税をうまく活用すれば、期間中最大400万円の減税効果が得られる場合もあるので、一概に収益性が悪いとは言い切れませんよ。
ご自身の場合はどの程度の節税効果があるのか、賃貸収入だけでなく節税効果も考慮したうえで、収益性を計算することが大切ですね。
まとめ
賃貸併用住宅のメリットやデメリット、利用時の注意点について詳しくお伝えしてきました。
当記事で重要なポイントは
- 賃貸併用住宅の魅力は「低金利の住宅ローンを利用できる」「住宅と賃貸経営を両立できる」の2つ
- 利便性を求めるため収益性が悪くなりがちだが、節税制度の活用や住宅ローンの利息軽減効果により、投資用不動産より収益を挙げられる可能性もある
- 収益をあげるためには便利な立地と住みやすい間取り、賃貸経営に関する知識が重要
の3つですね。
マイホームと賃貸物件が共存する賃貸併用住宅には、さまざまなメリットとデメリットがあり、向き・不向きも人によって違います。
大切なのは、投資である以上絶対にリスクは付き物だということです。魅力的なリターンを得るためには、適切なリスク対策が必要不可欠ですよ。