返済中に死亡すると住宅ローンは免除される! ただし、例外もあるので要注意
執筆者: 中野良唯 (ジョインコントラスト株式会社)
住宅ローンの返済は長期間にわたるため、「完済までに万一のことがあったら……」と不安に感じる人は多いでしょう。
確かに、病気や事故などで住宅ローン返済中に契約者が無くなってしまう可能性は、完全にないとは言い切れません。
しかし、住宅ローンでは契約者が団体信用生命保険に加入している場合、死亡時などには住宅ローンの返済が免除され、ローンの残高が0円になります。
少しでも家計の負担を減らしたい大変なときに、住宅ローンの返済が無くなるのはありがたいですよね。
ただし、この返済の免除はすべての人が対象となるわけではありません。
この記事では、住宅ローン返済中に契約者が亡くなってしまっても保障を受けられないケースやその場合の対処法、契約者が無くなった際の手続きなどについて解説します。
- 団信に加入していれば、契約者が死亡した場合には住宅ローンの返済が無くなる
- 返済が滞っていたり、手続きをしなかったりすると保障が受けられなくなるので注意
- 夫婦や親子で一緒にローンを組んでいた場合は、全額保障されないこともある
- 相続したローンが返済ができない場合は、「相続放棄」と「限定承認」を検討する
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
- 団信に加入していれば、死亡時に住宅ローンが無くなる
- 団信の死亡保険金が支払われるのは1~2か月後
- 住宅ローンの返済が免除されないケース
- ケース① 契約者が団信に加入していなかった
- ケース② 死亡後3年以内に保険金を請求しなかった
- ケース③ 住宅ローンの支払いを延滞していた
- ケース④ 夫婦や親子で一緒に住宅ローンを組んでいた
- 契約者が死亡した際に必要となる手続き
- 団信に加入している場合
- 団信に加入していない場合
- 相続したローンが払えない場合の対処法
- 相続放棄:返済義務はなくなるが、家やそのほかの相続財産も失う
- 限定承認:プラスの財産でマイナスの財産を返済する
- 手続を行わなければ「単純承認」で全財産を相続することになる
- まとめ
団信に加入していれば、死亡時に住宅ローンが無くなる
住宅ローンでは多くの場合、契約と同時に団体信用生命保険(団信)への加入が義務付けられています。
団信とは、住宅ローンを利用する人のための保険のようなもので、基本的には以下のような場合に保障を受けられ、住宅ローンの支払いが免除されます。
- 契約者が死亡した場合
- 契約者が高度障害状態になった場合
また、金融機関によっては上記以外にも、以下のような場合に支払いの免除や減額を受けられる保障を用意していることがあります。
- 「がん保障」:(例)がんと診断されると住宅ローン返済が減額される など
- 「全疾病保障」:(例)すべてのケガ・病気で長期間にわたって入院すると住宅ローン残高が0円になる など
もし、これから住宅ローンに申し込もうと考えているのであれば、付帯する団信の保障内容を事前にしっかりチェックしておきましょう。
団信の死亡保険金が支払われるのは1~2か月後
団信の死亡保険金は、死亡後にすぐ支払われるわけではありません。
保険金請求の必要書類の提出後、約1か月~2か月の時間をかけて生命保険会社の審査が入ります。
審査結果が出るまでの間、状況などによっては住宅ローンを返済しなければならない場合もあるため、あらかじめ理解しておきましょう。
その間に支払った返済分は手続きを行えば後日全額返金されますが、住宅ローン契約者の収入がない中で住宅ローンの返済が発生する可能性がある点に注意してください。
住宅ローンの返済が免除されないケース
契約者の死亡時には団信の保障で住宅ローンの返済が無くなるとお伝えしましたが、例外として返済が免除されないケースもあります。
具体的には、以下の4つのパターンにあてはまってしまった場合、返済が無くならないことが想定されるでしょう。
住宅ローン返済が続くケース
- 住宅ローン契約者が団体信用生命保険に加入していなかった
- 住宅ローン契約者が亡くなってから3年以内に保険金を請求しなかった
- 住宅ローンの返済を延滞していた
- 夫婦や親子で一緒に住宅ローンを組んでいた
それぞれのケースについて、詳しく見ていきます。
なお、返済が免除されず、返済が難しい場合には、相続したローンが払えない場合の対処法の章を参考に、相続開始を知ってから3ヶ月以内に対策を検討するようにしましょう。
ケース① 契約者が団信に加入していなかった
ここまでで開設した通り、住宅ローンの契約者が死亡した場合に住宅ローンが免除されるのは、団信の保障があるためです。
つまり、契約者が団信に加入していない場合には、住宅ローンの返済はなくなりません。
基本的にほとんどの金融機関では、住宅ローン利用時の団信加入が必須となっています。
しかし、中にはフラット35のように、団信への加入が任意になっている住宅ローンもあります。
その場合、住宅ローンの返済に充てられる生命保険などに別途加入していなければ、配偶者や子どもが返済を引き継がなければなりません。
ケース② 死亡後3年以内に保険金を請求しなかった
団信に加入していても、所定の手続きを行わずに放置していた場合には、保険金が受け取れなくなってしまう可能性があります。
しっかり手続きを行い、返済の負担を減らすようにしましょう。
契約者が死亡した時の手続きに関しては、契約者が死亡した際に必要となる手続きの章でチェックしてくださいね。
ケース③ 住宅ローンの支払いを延滞していた
住宅ローンの返済を延滞してしまうと、団信の保障を受けられなくなってしまう可能性があります。
なぜなら、一般的な金融機関では住宅ローンの利息の一部を団信の保険料に充てているため、長期間支払いを延滞すると団信の契約が失効してしまうからです。
返済に困った場合には、何も言わずに延滞をするのではなく、まず金融機関に相談するようにしましょう。
ケース④ 夫婦や親子で一緒に住宅ローンを組んでいた
夫婦や親子で一緒に住宅ローンを組んでいた場合、どちらかが死亡しても保障を受けられなかったり、住宅ローンの残債が0円にならなかったりする可能性があります。
夫婦や親子で住宅ローンを借りる方法としては、「収入合算(連帯保証型・連帯債務型)」「ペアローン」「親子リレーローン」などがありますが、それぞれが受けられる団信の保障は以下のようになっています。
団信の保障 | ||
---|---|---|
収入合算(連帯保証型) | 夫 | 〇 |
妻 | × | |
収入合算(連帯債務型) | 夫 | 〇 |
妻 | △(金融機関による) | |
ペアローン | 夫 | 〇※ |
妻 | 〇※ | |
親子リレーローン | 親 | △(金融機関による) |
子 | 〇 |
※収入合算(連帯保証型・連帯債務型)の場合は主たる契約者を夫と仮定
※ペアローンではそれぞれが契約している住宅ローンの残債のみ保障
連帯保証型の収入合算の場合、連帯保証人となる妻が死亡しても、団信の保障を受けることができません。
また、連帯債務型の収入合算も、金融機関によってはパートナーが団信に加入できない可能性があります。
なお、ペアローンは夫婦2人で2本の住宅ローンを組むため、2人とも団信に加入することができます。
ただし、一方が死亡して住宅ローンの残債が無くなっても、もう一方の住宅ローンの返済は続くので、返済が完全になくなるわけではありません。
また、金融機関によっても異なりますが、親子リレーローンの場合には、親は団信に加入できないケースが多いようです。
2人で住宅ローンを組む場合は、生命保険と併用を
ここまで、夫婦や親子で住宅ローンを組む場合、どちらかが死亡しても保障を受けられなかったり、住宅ローンの残債が残ってしまったりする可能性があると解説しました。
とはいえ、共働き夫婦のどちらかが亡くなれば、家計に大きな影響が出るでしょう。
そのため、夫や妻が亡くなったときを考えて備えておきたい人は、一般の生命保険を併用することをおすすめします。
パートナーが団信に加入できない場合には、もしもの時に返済の負担が増えないだけの生命保険を検討するといいですよ。
契約者が死亡した際に必要となる手続き
住宅ローン返済中に住宅ローンの契約者が死亡した場合は、団信に加入しているかどうかにかかわらず、所定の手続きを行わなければなりません。
ここからは以下の二つのケースに分けて、住宅ローン契約者の死亡時に必要な手続きと書類について紹介します。
団信に加入している場合
亡くなった住宅ローン契約者が団信に加入していた場合、下記の流れで手続きを行いましょう。
もし住宅ローン契約者が団信に加入していたかどうかわからないときは、住宅ローンを借りた金融機関に一度問い合わせてみてください。
金融機関に連絡
融資を申し込んだ金融機関に、住宅ローンの契約者が死亡した旨を連絡する
書類準備
金融機関からの案内に従って必要書類を準備し、その書類を金融機関に提出する
審査
提出された書類をもとに、生命保険会社が支払可否を審査する
保険金の給付
審査の結果、支払い可能と判断されれば、住宅ローンの残債務は全額完済する
保険金の請求手続きに必要な書類
保険金を請求する際の必要書類は、下記のとおりです。
書類 | 通数 | 説明 |
---|---|---|
団信弁済届【死亡用】 | 原本1通 | 金融機関から渡される用紙に必要事項を記入 |
死亡診断書または死亡検案書 (死亡日が保障開始日から2年以上経過している場合) |
写し1通 | 市区町村役場へ死亡届を提出した際の死亡診断書または死亡検案書の写し |
生命保険会社所定の死亡証明書 (死亡日が保障開始日から2年以内の場合) |
原本1通 | 医師に金融機関から渡される用紙の記入を依頼 |
住宅ローン契約者の住民票 | 原本1通 | 死亡した住宅ローン契約者本人の死亡事実記載のある住民票 |
※必要書類の詳細は、金融機関からの案内をよく確認してください。
なお、団信に保険金を請求できるのは、住宅ローン契約者が死亡してから3年以内です。
3年以内に保険金の請求手続きを行わなかった場合、保険金請求権が時効となるため、住宅ローン契約者が死亡したら可能な限り速やかに手続きしましょう。
団信に加入していない場合
団信に加入していない場合は、住宅ローン契約者の死亡による保険金の給付はなく、住宅ローンの返済は免除されません。
その場合、住宅ローンは相続財産となるため、住宅ローンの債務を相続する必要があります。
なお、相続人が複数人いる場合には、住宅ローンを引き継ぐのは法定相続人のうち、返済能力のある人となります。
住宅ローンの返済義務を引き継ぎたくない人は、後述の「返済が免除されなかった場合の対処法」を参考にしてください。
相続を行う場合の手順は以下の通りです。
相続届の用意
融資を申し込んだ金融機関また住宅金融支援機構の支店で、相続届を入手する
書類準備
必要書類を用意し、相続届とともに金融機関へ提出する。提出した書類で、申請の機構債務の相続が確認される
登記事項証明書の提出
相続人となる人は、相続登記後の建物・土地の登記事項証明書を金融機関へ提出する
債務相続の手続きに必要な書類
債務相続の手続きにあたり、下記の添付書類が必要となります。
<債務相続の必要書類>
書類 | 通数・説明 |
---|---|
法定相続人全員が分かる戸(除)籍謄本または抄本 | 写し1通ずつ |
申請者が機構債務を相続したことを証明できる書類 | 遺産分割協議書の写し、家庭裁判所の調停書の写しなど |
その他 | 金融機関から依頼される書類 |
相続したローンが払えない場合の対処法
ここまでお伝えしてきたように、住宅ローン契約者が亡くなっても返済が免除されないケースもあります。
しかし「住宅ローン契約者の死亡で世帯収入が大幅に減った」「住宅ローンを返済することが金銭的に難しい」などの理由から、住宅ローンを相続したくないときはどうすればよいのでしょうか。
住宅ローンの返済が難しい場合の対処法としては、以下の二つがあります。
相続した住宅ローンが支払えない場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続放棄:返済義務はなくなるが、家やそのほかの相続財産も失う
相続放棄とは、相続人が被相続人の財産を相続せずに放棄することを言います。
この「財産」には資産などのプラスの財産はもちろん、住宅ローンのような負債も含まれるため、住宅ローンの返済をしなくてもよくなるのです。
相続放棄するには、相続開始を知ったときから3か月以内に、生前の住宅ローン契約者の住所地を管轄する家庭裁判所に申請する必要があります。
なお、相続放棄の場合、すべての相続を放棄するため、住宅そのものや他の相続財産も失うことになるので注意が必要です。
限定承認:プラスの財産でマイナスの財産を返済する
限定承認は、プラスの財産とマイナスの財産を相続し、プラスの財産で払える範囲で住宅ローンを返済する方法です。
財産を清算した結果、住宅ローンの残債が発生しても返済は不要となり、また余ったプラスの財産は相続することができます。
相続放棄と同様、相続開始を知ったときから3か月以内に手続きが必要です。
なお、限定承認はプラスの財産で住宅ローンを返済するため、住宅を手放すことはありません。
住宅ローンの残高が多いからといって、即座に相続放棄することが適切とは限りません。プラスの財産で住宅ローンを返済できるようなら、限定承認を考えてもよいでしょう。
手続を行わなければ「単純承認」で全財産を相続することになる
相続開始を知ってから3か月以内に手続きを行わなければ「単純承認」となり、プラス・マイナスに関わらず全財産を相続することになります。
住宅ローンの契約者が死亡してしまった場合には、まず死亡した住宅ローン契約者の財産状況を把握してから、早めに手続きを行うようにしましょう。
まとめ
住宅ローン返済中に住宅ローンの契約者が死亡した場合、基本的には団信に加入しているはずなので、団信の死亡保険金で住宅ローンを完済できます。
しかし、下記のケースでは団信の死亡保険金は給付されず、住宅ローンの返済が免除されない可能性があります。
住宅ローン返済が続くケース
- 住宅ローン契約者が団体信用生命保険に加入していなかった
- 住宅ローン契約者が亡くなってから3年以内に保険金を請求しなかった
- 住宅ローンの返済を延滞していた
- 夫婦や親子で一緒に住宅ローンを組んでいた
契約者が死亡し、相続した住宅ローンの支払いができない場合の対処法としては、相続放棄や限定承認が挙げられます。
突然の訃報で悲しみに暮れている中、住宅ローンの返済や相続方法を考えることは容易ではありません。
いざというときに納得のいく方法を取れるよう、住宅ローン返済中に亡くなったときの対応を普段から話し合っておくことをおすすめします。