フラット35Sを分かりやすく解説!利用条件や知っておくべき注意点
執筆者: 中野良唯 (ジョインコントラスト株式会社)
フラット35Sって何?
所定の要件を満たした物件を購入する際に、フラット35の金利から5年間もしくは10年間の金利が引き下げられる制度です。
耐震性や省エネルギー性に優れた住宅を購入する場合に、住宅ローンの金利引き下げを受けられるため、上手に活用することで返済負担を軽減できます。
一定の条件を満たせば、借り入れ後5年間もしくは10年間の金利が年0.25%引き下げられるので、フラット35Sのことをしっかり理解してお得に申し込みたいですね。
この記事では、フラット35Sに関する以下のポイントを解説します。
当ページで解説していること
フラット35Sには複雑な内容も多く登場しますが、分かりやすく解説していますので、ぜひ参考になさってください。
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
フラット35Sとは
フラット35Sは特定の条件を満たしている住宅を購入する場合に、フラット35の金利から一定の利率が引き下げられる制度です。
物件の技術基準レベルによってAプランとBプランという2種類のプランに分かれていて、それぞれ金利の引き下げを受けられる期間の長さが異なります。
フラット35Sの金利引下げプラン
-
Aプラン
借入当初10年間の金利が年0.25%引き下げられる -
Bプラン
借入当初5年間の金利が年0.25%引き下げられる
住宅ローンの借入金額が3,000万円、返済期間が35年、引き下げ前の金利を年1.300%とすると、通常のフラット35とフラット35SのAプランでは最終的な返済金額では約70万円ほどの差が生まれます。
適用金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 (諸費用は含めない) |
|
---|---|---|---|
フラット35S Aプラン |
当初10年…1.050% 11年目以降…1.300% |
当初10年…8万5,386円 11年目以降…8万7,969円 |
3,663万6,926円 |
通常の フラット35 |
1.300% | 8万8,944円 | 3,735万6,564円 |
差額 | ー | ー | ▲71万9,638円 |
※借り入れ金額3000万円/返済期間35年/元利均等返済の場合。
※住宅保証機構株式会社の住宅ローンシミュレーションを使用して算出。
通常のフラット35と比べると毎月の返済額も1,000円~3,000円ほど安くなるため、フラット35の固定金利の安心感を得ながら、コストも抑えられることがフラット35Sの大きな特徴です。
フラット35Sの利用条件・技術基準
フラット35Sを利用するためには、購入する住宅が一定の技術基準レベルを満たしている必要があります。
技術基準レベルには以下4つの項目があり、どれか1つ以上の基準を満たしていればフラット35Sを利用できます。
フラット35Sの技術基準項目
-
省エネルギー性
高水準の断熱性などを実現した住宅 -
耐震性
高齢者が日常生活を過ごしやすい住宅 -
バリアフリー性
強い揺れによる倒壊・崩壊を防ぐほどの性能を確保した住宅 -
耐久性・可変性
長期にわたり良好な状態で使用できる措置が講じられた住宅
また、それぞれの項目における具体的な基準は、フラット35SのAプランかBプランかによって違っていて、金利引き下げ期間の長いAプランを利用するためには、より高い技術基準レベルを満たさなければなりません。

AプランとBプランの技術基準レベルについて、それぞれ詳しく見てみましょう。
フラット35S Aプラン(10年間金利引き下げ)の基準
『フラット35 Aプラン』を利用するためには、以下の項目のうちどれか1つ以上を満たしている必要があります。
省エネルギー性 | ・認定低炭素住宅 ・ 一次エネルギー消費量等級5の住宅 ・性能向上計画認定住宅(建築物省エネ法) |
---|---|
バリアフリー性 | ・高齢者等配慮対策等級4以上の住宅 (共同建て住宅の専用部分は等級3でも可) |
耐震性 | ・耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)3の住宅 |
耐久性・可変性 | ・長期優良住宅 |
(出典:住宅金融支援機構【フラット35】「【フラット35】Sの対象となる住宅」)
エコまち法によって定められている以下3つの条件を、すべて満たしている住宅のことです。
認定低炭素住宅の基準
- 省エネルギー基準を超える省エネルギー性能を持つこと、かつ低炭素化に資する措置を講じていること
- 都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること
- 資金計画が適切なものであること
①については、太陽光発電パネルを設置する、住宅の断熱性能を高めるなどによってエネルギー消費量を抑えることで満たされ、②については節水対策やヒートアイランド対策など8項目のうち2つ以上に該当している必要があります。
参考:国土交通省「エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要」
住宅の「外皮性能」と「設備性能」それぞれに対して、省エネルギー性能を総合的に評価するための指標です。等級5を満たすと金利Aプランを、等級4を満たすと金利Bプランを利用できます。
参考:住宅金融支援機構「一次エネルギー消費量等級基準の概要」
建築物省エネ法の規定によって、一定のエネルギー消費性能向上計画が認定されている住宅のことを指します。
参考:フラット35「性能向上計画認定住宅」
「移動時の安全性」と「介助の容易性」という2つの観点から、高齢者等への配慮のために対策の度合いを評価するための指標です。
新築住宅の専用部分においては、以下表の5段階で評価されます。
等級 | 結果 |
---|---|
5 | 高齢者等が安全に移動することに特に配慮した措置が講じられており、介助用車いす使用者が基本的な生活行為を行うことを容易にすることに特に配慮した措置が講じられている |
4 | 高齢者等が安全に移動することに配慮した措置が講じられており、介助用車いす使用者が基本的な生活行為を行うことを容易にすることに配慮した措置が講じられている |
3 | 高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられており、介助用車いす使用者が基本的な生活行為を行うための基本的な措置が講じられている |
2 | 高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられている |
1 | 住戸内において、建築基準法に定める移動時の安全性を確保する措置が講じられている |
参考:国土交通省「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」
地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさを評価するための指標です。等級は3段階に分けられ、等級が上がるほど耐震性能も高くなります。
参考:住宅性能評価・表示協会「地震などに対する強さ(構造の安定)」
フラット35S Bプラン(5年間金利引き下げ)の基準
『フラット35 金利Bプラン』の利用基準は、「新築住宅と中古住宅共通の基準」と「中古住宅独自の基準」の2つが存在します。
新築住宅では共通基準のどれか1つを、中古住宅では共通基準もしくは中古住宅独自基準のどれか1つを満たしていることで、金利Bのプランを利用できます。
省エネルギー性 | ・断熱等性能等級4の住宅 ・一次エネルギー消費量等級4以上の住宅 |
---|---|
バリアフリー性 | 高齢者等配慮対策等級3以上の住宅 |
耐震性 | ・耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上の住宅 ・免震建築物 |
耐久性・可変性 | 劣化対策等級3の住宅で、かつ維持管理対策等級2以上の住宅 (共同建て住宅などは一定の更新対策が必要) |
省エネルギー性 (開口部断熱) |
二重サッシまたは複層ガラスを使用した住宅 |
---|---|
省エネルギー性 (外壁等断熱) |
建設住宅性能評価書の交付を受けた住宅(省エネルギー対策等級2以上または断熱等性能等級2以上)または、中古マンションらくらくフラット35のうちフラット35S (省エネルギー性(外壁等断熱)に適合するもの)として登録した住宅 |
バリアフリー性 (手すり設置) |
浴室および階段に手すりを設置した住宅 |
バリアフリー性 (段差解消) |
屋内の段差を解消した住宅 |
出典:住宅金融支援機構「【フラット35】Sの対象となる住宅」
フラット35Sの注意点
金利の引き下げが魅力のフラット35Sですが、知っておくべき注意点も存在します。
ここでは以下3つの注意点を解説します。
フラット35Sの注意点
フラット35Sは借り換えでは利用できない
フラット35Sは、住宅ローンの借り換えでは利用できません。
あくまでも住宅を新しく取得する場合にのみ使える制度なので、注意しましょう。
もし全期間固定金利に借り換えたいのであれば、通常のフラット35を利用するか、民間金融機関が提供している全期間固定金利タイプの住宅ローンを検討しましょう。
フラット35Sは受付終了になる場合がある
フラット35Sは、いつ申し込んでも必ず利用できるわけではありません。
フラット35Sには住宅金融支援機構が割り当てた予算があり、所定の予算金額に達する見込みになればフラット35Sの受付は終了します。
受付が終わる約3週間前までには、住宅金融支援機構が運営するフラット35のホームページで発表されるため、フラット35Sの利用を考えている方は受付状況を確認しておきましょう。
5年もしくは10年後に返済額が上がる
フラット35Sでは借入当初の5年もしくは10年間の金利が引き下げられることが大きなメリットですが、言い換えれば5年後もしくは10年後には金利が上がるということでもあります。
通常のフラット35と比べれば、もちろんフラット35Sのほうが毎月返済額は安くなりますが、11年目以降の返済負担は少しだけ大きくなることは認識しておきましょう。
適用金利 | 毎月の返済額 | |
---|---|---|
当初10年間 | 1.050% | 8万5,386円 |
11年目以降 | 1.300% | 8万7,969円 |
差額 | ー | ▲2,583円 |
※借り入れ金額3000万円/返済期間35年/元利均等返済の場合。
※住宅保証機構株式会社の住宅ローンシミュレーションを使用して算出。
フラット35Sは「子育て支援型」や「地方活性化型」と併用できる
フラット35には、「子育て支援型」や「地域活性化型」という名前の金利引き下げ制度が存在します。
どちらも借入から当初5年間の金利が年0.25%引き下げられますが、それぞれの制度はフラット35Sとの併用が可能です。
併用すれば返済負担を大きく減らせるため、ご自身が適用条件に該当しているかを必ずチェックしておきましょう。
フラット35の金利引き下げ制度
【フラット35】子育て支援型とは
子育て支援型は、地方公共団体の子育てに関する財政的支援と、フラット35の借入金利の引き下げがセットになった住宅ローンです。
利用すれば、借り入れ当初の5年間は金利が年0.25%引き下げられます。
具体的な利用条件は地方公共団体によって異なるため、ここでは例として大阪市の利用条件をご紹介します。
大阪市で利用できる【フラット35】子育て支援型の要件
- 大阪市新婚・子育て世帯向け分譲住宅購入融資利子補給制度の対象者であること。
- 取得する住宅が中古住宅(竣工から2年超、又は既に人が住んだことがある住宅*)であること。
- 申込者又はその配偶者の年齢が40歳未満*であること。
- 申込者又はその配偶者に小学校6年生以下の子ども*がいる世帯であること。
*大阪市新婚・子育て世帯向け分譲住宅購入融資利子補給制度申込時点
出典:大阪市で利用できる【フラット35】子育て支援型・地域活性化型
ただし【フラット35】子育て支援型は、すべての地域で使えるわけではないので、詳しくは自治体のホームページもしくはフラット35のホームページでご確認ください。
【フラット35】地域活性化型とは
【フラット35】地域活性化型は、UIJターンなどで住宅を購入する方が利用できる制度で、借り入れ当初5年間の金利が年0.25%引き下げられます。
子育て支援型と同様に具体的な要件は地方公共団体に異なるため、例として大阪市の利用条件をご紹介します。
大阪市で利用できる【フラット35】地域活性化型の要件
-
以下の補助制度の利用者であること
- 大阪市民間老朽住宅建替支援事業建替建設費補助制度
(隣接する土地を取得した戸建住宅への建替えに限る) - 大阪市主要生活道路不燃化促進整備事業建設費補助制度*
- 大阪市民間老朽住宅建替支援事業狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度
- 大阪市密集住宅市街地重点整備事業
(防災空地活用型除却費補助制度)
- 大阪市民間老朽住宅建替支援事業建替建設費補助制度
- 利用対象証明書の発行を申請する日が、①~④の補助制度にて規定する文書の保存期限を超過していないこと
- ①~④の補助制度の補助金申請者が個人であること
*道路整備のみ行う場合は、【フラット35】地域活性化型の対象外
出典:大阪市で利用できる【フラット35】子育て支援型・地域活性化型
また、子育て支援型と同様にすべての地域で使えるわけではないため、自治体のホームページやフラット35のホームページ上で対応の可否を確認しておきましょう。
住宅がフラット35Sに対応しているかを調べる方法
フラット35Sの利用対象となる住宅かどうかを知りたいときは、売主・工事請負業者・販売代理業者などに一度確認してみましょう。
フラット35Sを借りるには規定の住宅性能を満たさなければなりませんが、住宅性能の良し悪しは構造躯体が関わることが多く、自分の目で確かめることはできません。
そのため、専門家に尋ねるのが賢明でしょう。
なお、フラット35Sの申し込み時は技術基準に関する証明書類の提出は不要ですが、フラット35Sの融資実行前に適合証明書を金融機関に提出する必要があります。
フラット35とフラット35Sの技術基準を満たしていると確認できる書類を用意しておきましょう。
まとめ
フラット35Sでは、通常のフラット35から当初5年間もしくは10年間の金利が引き下げられる制度です。
利用するためには「省エネルギー性」「バリアフリー性」「耐震性」「耐久性・可変性」という4つの分野のうち、いずれか1つの技術基準レベルを満たす必要があります。
Aプラン・Bプランという種類に応じて、求められる技術基準レベルは異なるため、詳細は住宅金融支援機構のホームページや住宅の売主・工事請負業者・販売代理業者などに確認してみましょう。





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