住宅ローンの連帯保証人は原則不要!ただし必要なケースとリスクもあるので要注意
執筆者: 白坂大介 (ジョインコントラスト株式会社 代表取締役)
金融機関で借り入れをする場合、基本的には連帯保証人を立てる必要があります。
しかし住宅ローンでは、借り入れ時に連帯保証人は不要となっている銀行がほとんどです。
その理由として、以下の二つがあります。
- 住宅ローンでは、購入する住宅が担保となるため
- 保証人の代わりに「保証会社」を利用することが多いため
ただし住宅ローンの借り方によっては、連帯保証人が必要となるケースもあるため注意が必要です。
そこで今回は、住宅ローンの連帯保証人について、必要になるケースや注意点、もしもの時に連帯保証人から外れる方法などについて解説します。
- 基本的に、住宅ローンでは連帯保証人は必要ない
- ペアローンや収入合算で住宅ローンを借りる場合など、連帯保証人が必要になるケースもある
- 離婚をした場合でも、連帯保証人を外れることは難しい
- 連帯保証人から外れたい場合には、住宅ローンの借り換えなどを検討しよう
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
連帯保証人が不要!理由は保証会社を利用するから
賃貸住宅を借りる時や消費者金融でお金を借りる時は、基本的に連帯保証人を立てなければなりません。
しかし住宅ローンを借りる際は、連帯保証人は原則不要となっています。
以前は、住宅ローンの契約でも連帯保証人が必要なケースが多くありました。
ですが、住宅ローンという多額のローンの場合、連帯保証人を見つけることは容易ではありません。
というのも、借入者がローンを返済できなくなった場合は連帯保証人が代わりに返済の義務を負うため、保証人になるには大きなリスクがあるからです。
連帯保証人を見つけられず住宅ローンの契約ができなかったという人も多かったため、銀行は連帯保証人ではなく、保証会社を利用して貸し倒れリスクを防ぐようになりました。
保証会社とは、住宅ローン契約時に債務者から「保証料」をもらう代わりに、借入者が返済できなくなった時には借入者に代わって金融機関に返済をしてくれる会社です。
保証会社を間に置くことで金融機関はローンを回収できないリスクを避けられるため、住宅ローンでは基本的に連帯保証人を立てなくてもいいのです。
しかし、場合によっては連帯保証人が必要になるケースもあります。
住宅ローンの契約において連帯保証人が必要となるケースは、住宅ローンを借りるときに連帯保証人が必要になるケースの章でご紹介します。
保証会社が残債を支払っても、契約者の支払い債務がなくなるわけではない
保証会社を利用して住宅ローンを契約した場合、万が一住宅ローンの返済が滞った際には、ローン契約者に代わって保証会社が金融機関に住宅ローンの残債を支払います。
ですが保証会社が残債を支払ったからといって、住宅ローンの契約者がその後、支払いをしなくてもよくなるわけではありません。
保証会社が残債を支払ったあと、ローン契約者は保証会社に対して返済をしていく必要があります。
連帯保証人・連帯債務者・保証人の違いを解説
連帯保証人と似た言葉に、「連帯債務者」と「保証人」があります。
どれも似たような言葉ですが、実はそれぞれの意味は大きく異なります。
連帯保証人・連帯債務者・保証人それぞれの概要を、以下に説明します。
連帯保証人 | 住宅ローンの契約者がローンを返済できなくなった時、契約者の代わりにローンを返済する義務を負う。 「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」が認められていないため、保証人よりも重い責任を課せられることとなる。 |
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連帯債務者 | 債務者として、住宅ローンの契約者と同等の責任を負う。 連帯債務者は、購入した住宅の所有権をローン契約者と共有することができる。 |
保証人 | 住宅ローンの契約者がローンを返済できなくなった時、契約者の代わりにローンを返済する義務を負う。 「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」が認められているため、連帯保証人よりも課せられる責任は軽い。 |
※催告の抗弁権:請求を行う業者に対して、まずは債務者に請求をするよう求める権利
※検索の抗弁権:債務者には返済能力があるとして、債務者に返済を求めるか、それがかなわない場合は債務者の財産を差し押さえるよう求める権利
※分別の利益 :保証人が複数いる場合などに、保証人の人数で分配して債務を負担するよう求める権利
連帯債務については、以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方は参考にしてくださいね。
住宅ローンで連帯保証人が必要になるケース2つ
住宅ローンを借りる際、基本的には連帯保証人は不要ですが、ケースによっては必要となることもあります。
ここからは、住宅ローンの契約において連帯保証人が必要となる2つのケースを詳しく紹介します。
連帯保証人が必要になるケース
ケース1.ペアローンや収入合算で借り入れる場合
住宅ローンの契約において、連帯保証人が必要となるケースとして、まずペアローンや収入合算で住宅ローンを借りる場合があります。
ペアローンと収入合算は、いずれも夫婦や親子で一緒に住宅ローンを組む方法です。
近年は夫婦共働きの家庭が増加していることもあり、夫婦が共同で住宅ローンを借りようと考える人も少なくありません。
しかし夫婦や親子が共同で借りる住宅ローンには、それぞれが連帯保証人とならなければならないケースも多くあります。
ペアローンと収入合算の違いに関しては、以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方は参考にしてくださいね。
ケース2.審査によって保証人が必要と判断された場合
住宅ローンを借りる前には、必ず仮審査・本審査の合計2回の審査があります。
この審査では主に、「契約者に返済能力があるかどうか」をチェックしています。
住宅ローンの借入額に対して、ローン契約者の返済能力が認められなければ審査に落ちてしまいます。
仮に返済能力はある程度認められた場合でも、保証人を付けることを住宅ローンの融資条件とした上で融資が承認されるケースがあります。
保証人が必要だと判断されやすいケース
- 住宅ローンの借入額に対して、ローン申込者の年収がやや低い
- ローン申込者の年収は問題ないが、勤続年数が短い
まずは一度、希望のローン借入額に対して自身の年収が適切なのかを確認してみましょう。
連帯保証人をたてて住宅ローンを組む際の注意点
もし連帯保証人をたてて住宅ローンを組むのであれば、以下のような点に注意が必要です。
連帯保証人に関する注意点
- 主債務者が返済できなくなった場合は連帯保証人が返済する必要がある
- 離婚をした場合でも連帯保証人から外れるのは難しい
ここからは、それぞれの詳細と、対策について解説します。
主債務者がローンを返済できない場合は連帯保証人が返済する
もし住宅ローンの契約者が自己破産すれば、銀行もしくは保証会社は連帯保証人に返済を求めます。
連帯保証人は一括での住宅ローン返済を求められることも多く、いきなり言われても返済できないことがほとんどでしょう。
どうしても返済が難しい場合は連帯保証人も「自己破産しなければいけないのでは」と不安になりますよね。
このような場合は、まず住宅の「任意売却」を検討しましょう。
対策:任意売却により自己破産を回避する
任意売却とは、金融機関に相談し、住宅ローン返済が残っている物件を売却すること。
住宅ローンの返済が苦しくなったからといってすぐに自己破産するのではなく、少しでも早く金融機関に相談して任意売却という手段をとることで、自己破産を逃れることができる可能性もあります。
ただし、その物件の売却額でも住宅ローンを完済できなかった場合、連帯保証人が残債を返済する必要があります。
返済できなければ、連帯保証人自身も自己破産に追い込まれる可能性がありますので、注意してください。
離婚をした場合でも連帯保証人を外れることは難しい
夫婦の一方が連帯保証人になっている場合、もし離婚するとなると「連帯保証人を外れたい」と考える人も多いでしょう。
ですが、実は離婚した場合でも、借りている住宅ローンの連帯保証人から外れることはほぼ不可能です。
まれに、金融機関に別の連帯保証人を立てるなどの相談をすれば認められるケースもありますが、基本的に返済中のローンの連帯保証人を外したり、他の人に変更したりすることはできないと考えた方がいいでしょう。
ただし、連帯保証人を外す方法が全くないわけではありません。
連帯保証人を外す方法に関しては、次章で詳しく解説します。
住宅ローンの借り換えなどで連帯保証人を外せる可能性もある
住宅ローンの連帯保証人を外すことができる可能性があるのは、以下の3つのパターンです。
住宅ローンを借り換える
連帯保証人を外すためにおすすめの方法が、住宅ローンの「借り換え」です。
現在住宅ローンを借りている銀行とは別の金融機関で住宅ローンを借り換えることで、連帯保証人を外せる場合があります。
住宅ローンの借り換えは、新たな銀行でローンの残高に相当する住宅ローン契約を結び、現在の住宅ローンを一括して完済する方法です。
その際に、新たに借りる先の金融機関で連帯保証人を必要としない住宅ローン契約を結べれば、借り換えをすることで連帯保証人を外れることが可能になります。
一括繰り上げ返済をする
連帯保証人を外すためのもう1つの方法が、「一括繰り上げ返済」です。
住宅ローンの一括繰り上げ返済をすれば、ローン残高はなくなるため、連帯保証人から外れることができます。
しかし、一括繰り上げ返済をすることで手元の預貯金などの資金が大きく減ってしまう場合には、慎重に検討する必要があります。
あまり多くないケースではあるものの、資金的に余裕がある場合で、一刻も早く連帯保証人としての責務を解消したいのであれば、手っ取り早い方法だと言えるでしょう。
家を売却する
連帯保証人を外すための最終手段と言える方法が、「売却」です。
住宅を売却し、売却価格で住宅ローンを完済することで、連帯保証人としての責務を解消できます。
ですが、住宅の売却価格がローン残高を下回ってしまうことも考えられます。
この場合、ローン残高と住宅の売却価格の差額分を預貯金や他の借り入れなどで補填できるのであれば、売却して住宅ローンを完済できるため、連帯保証人からも外れることができます。
しかし、残代金をできなければ売却すらできない可能性もあり、充分なお金の余裕がないのであれば、安易に選択することはできません。
次の住まいへの準備資金なども必要になるため、まずは借り換えによって連帯保証人を外れることができないか検討してみましょう。
まとめ
ここまで、住宅ローンの連帯保証人について解説してきました。
- 基本的に、住宅ローンでは連帯保証人は必要ない
- ペアローンや収入合算で住宅ローンを借りる場合など、連帯保証人が必要になるケースもある
- 離婚をした場合でも、連帯保証人を外れることは難しい
- 連帯保証人から外れたい場合には、住宅ローンの借り換えなどを検討しよう
住宅ローンの契約において連帯保証人は基本的に不要ですが、住宅ローンの借り方や契約形態によっては連帯保証人や連帯債務者が必要となる場合もあります。
そして、住宅ローンの契約時に一度立てた連帯保証人は、簡単に外すことはできません。
もし連帯保証人を立てて住宅ローンを組むことを検討している場合には、リスクもしっかり理解したうえで選択するようにしてくださいね。