どれを選ぶのが正解? 住宅ローンの種類とメリット・デメリットを徹底解説
執筆者: 白坂大介 (ジョインコントラスト株式会社 代表取締役)
マイホームの購入にあたって、ほとんどの人が利用する住宅ローン。
しかし、住宅ローンには借入先や金利タイプなどによってさまざまな種類があるため、
「自分はどの金融機関でどんな種類の住宅ローンを選べばいいの?」と混乱してしまう人も少なくありません。
複雑な商品やわかりづらい広告ページをみていると、「よくわからないから不動産屋にすすめられた住宅ローンでいいかも……」と思えてきますよね。
しかし、このように安易に住宅ローンを選ぶと、結果的に総返済額が数百万円も変わってしまうということにもなりかねません。
そこでこの記事では、住宅ローンの種類を2つのポイントからわかりやすく解説しています。
のちのち後悔しないためにも、申し込む前に住宅ローンの種類をしっかり理解し、自分に合った住宅ローンを選んでくださいね。
- 住宅ローンの種類は、「どのように借りるか」「どこから借りるか」の2つのポイントで考える
- どのように借りるか:3つの金利タイプのどれを選ぶかで、金利や返済の方法が変わる
- どこから借りるか:民間の金融機関以外にも、フラット35や財形融資などの借入先がある
- 夫婦で借りる場合や、リフォーム目的で借りる場合などに利用できる住宅ローンもある
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この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
住宅ローンの種類
結論から言うと、住宅ローンの種類は、主に以下の2つのポイントで考えることができます。
住宅ローンの種類
まず、住宅ローンを借りる際には金融機関に対して「金利」を支払う必要がありますが、この金利はどのように借りるのかによって、複数の金利タイプから選ぶことができます。
金利タイプは、大きく以下の3つに分けられます。
どのように借りるのか:金利タイプ
また、どこから借りるのかという点でいうと、借入先は主に以下の3つに分けられます。
どこから借りるのか:借入先
- 銀行などの民間の金融機関から借りる「民間融資(民間ローン)」
- 自治体などの公的機関から借りる「公的融資」
- その中間に位置する「フラット35(協調融資)」
それぞれの種類と特徴について、より詳しく見ていきましょう。
どのように借りるか:金利タイプで見る住宅ローンの種類
住宅ローンの返済額は、金利が1%異なるだけで数百万円近く変わることも少なくありません。
そのため、住宅ローンを選ぶ際にはこの「金利」が非常に重要になります。
ただし、ただ金利が低い住宅ローンを選ぶのがいいのかといえば、それは間違いです。
なぜなら、住宅ローンには大きく分けて3つの金利タイプがあり、どの金利タイプを選ぶかによってメリット・デメリットが異なるからです。
ここでは、それぞれの金利タイプの特徴と、どの種類を選べばいいのかを詳しく解説します。
全期間固定金利
全期間固定金利型は、借入期間中を通して常に金利が固定されている金利タイプです。
後述する「フラット35」が全期間固定金利型の代表的な例となります。
将来の金利上昇による返済額の変動に不安を感じる人や、収入の変動が大きい人は、支払額が一定である全期間固定金利型を選ぶのがおすすめです。
世帯の収入が減っても、全期間固定金利型であれば返済額が一定なので、家計の収支計画も収支計画を立てやすくなるでしょう。
ただし、他の金利タイプと比較して金利が高い傾向があるため、将来的に金利が上昇しなかった場合には、他の金利タイプよりも総返済額が多くなってしまいます。
変動金利
変動金利は、金利が変動する可能性がある金利タイプです。
金利は半年に一度変動する可能性があり、実際の返済額はその金利の変動をもとに、5年ごとに見直されます。
なお、変動金利には、以下のような「125%ルール」が設けられています。
125%ルール
「金利が上昇した場合でも、見直し後の月々の返済額は、それまでの返済額の125%を超えない」というルール。
(例)返済額が10万円/月であった場合:金利が大きく上昇しても、返済額は最大12.5万円までしか上がらない
返済額の上昇が家計に大きく影響しないくらいに十分な収入を得ている人や、今後、金利上昇のリスク以上に世帯年収の増加が見込める人は、変動金利型を選択肢に入れてもいいでしょう。
当初固定金利
当初固定金利(固定金利選択型金利)は変動金利型と固定金利型の中間のような金利タイプです。
借入時に10年、20年といった固定金利期間を選択し、その期間中は金利が一定となります。
固定金利期間の終了後は、固定金利型と変動金利型のどちらかを選びます。
ライフプランに合わせて一定期間金利を固定できる当初固定金利は一見便利に見えますが、利用にあたっては以下の点に注意が必要です。
固定期間選択型の注意点
- 当初固定期間が終わるタイミングで金利が上昇していると、住宅ローンの返済額が大きく跳ね上がってしまう可能性がある
- 1の際に変動金利の125%ルールが適用されない
- 多くの金融機関では固定期間終了後は金利の優遇幅が小さくなるため、金利上昇がなかった場合でも返済額が増える
上記の点を踏まえて、固定期間終了までに繰り上げ返済をして住宅ローンの負担を減らせる人や、返済額が大きく増えてしまっても余裕をもって返済できる人は、当初固定金利を検討するといいでしょう。
どこから借りるか:借入先で見る住宅ローンの種類
ここまで、住宅ローンの金利タイプの種類について解説しました。
住宅ローンの種類を理解する上でもう一つ重要なのが、住宅ローンの「借入先」です。
なぜなら、同じ金利タイプでも、扱っている金融機関によって金利や特徴が異なったり、金融機関によっては扱っていない金利タイプがあったりするからです。
住宅ローンの借入先は、以下の3つに分けられますので、ここからはそれぞれの特徴をご紹介します。
どこから借りるのか:借入先
- 銀行などの民間の金融機関から借りる「民間融資(民間ローン)」
- 自治体などの公的機関から借りる「公的融資」
- その中間に位置する「フラット35(協調融資)」
民間融資(民間ローン)
民間融資の特徴
- メガバンク・地方銀行・ネット銀行、生命保険会社、農協など、さまざまな金融機関が扱う住宅ローン
- 各金融機関が独自の住宅ローンを用意しているため、金利タイプやサービスが幅広い
- 住宅ローンを借りる際には、金融機関や保証会社の審査に通過する必要がある
銀行などの民間の金融機関が取り扱っている民間融資は、もっともイメージしやすい住宅ローンの種類ではないでしょうか。
民間ローンではそれぞれが独自の住宅ローンを用意しており、金利引き下げキャンペーンなどのサービスも提供しています。
また、取り扱っている金利タイプが多いことも民間ローンの特徴です。
詳しくは各金融機関のホームページや窓口で確認しましょう。
なお、住宅ローンを借りる際は、金融機関から融資審査を受けたり、金融機関が提携している保証会社から保証審査を受けたりする必要があります。
審査結果によってはローンを借りられないこともあるため、注意が必要です。
フラット35
フラット35の特徴
- 住宅金融支援機構が民間の金融機関を通して貸し出している住宅ローン
- 扱っている金利タイプは全期間固定金利のみで、保証料がかからない
- 提供する金融機関によって、金利やサービスの内容に違いがあることも
フラット35は住宅金融支援機構が民間金融機関を通して貸し出している住宅ローンです。
フラット35で取り扱っている金利タイプは全期間固定金利のみで、変動金利や当初期間固定金利などの取り扱いはありません。
また、保証会社を利用しないため、多くの金融機関で発生する「保証料」がかかりません。
なお、一般的な銀行(メガバンク・地方銀行)以外にも、ネット銀行や住宅ローン専門会社などからも申し込むことができ、提供する金融機関によって金利やサービスの内容に違いがあることも。
フラット35を検討する際は、複数の借入先候補を比較し、どのような違いがあるのかチェックするのがおすすめです。
公的融資
公的融資には、財形貯蓄などを行っている会社員や公務員を対象とした「財形融資」や、都道府県や市区町村などの自治体が行う「自治体融資」などの種類があります。
それぞれの特徴を見てみましょう。
財形融資
財形融資の特徴
- 企業の福利厚生として利用できる住宅ローンで、一定の条件を満たした人のみ申し込める
- 金利は借入から5年ごとに見直される
- 保証料や融資手数料がかからない
財形融資は、勤務先にて財形貯蓄を1年以上行うなど、一定の条件を満たした人のみが利用できる住宅ローンです。
なお、金利は借入時から5年ごとに適用金利を見直す仕組みとなります。
また、財形融資は保証料や融資手数料がかからないことがメリットです。
ただし、財形融資は企業の福利厚生の1つであるため、検討される際は、まず勤務先の財形融資の制度があるかどうかを確認しましょう。
自治体融資
自治体融資の特徴
- 都道府県や市区町村が融資を行う住宅ローン
- 自治体によって申し込み条件や金利が異なる
- 実施していない自治体もあるので、要確認
自治体融資は都道府県や市区町村といった地方自治体が住宅ローンの補助や直接融資を行うものです。
そのため、自治体によって申し込みの条件や金利などが違います。
また、近年では自治体融資を行う自治体が減少傾向にあります。
そのため、昨年まで実施されていたものが今年はなくなっていたり、実施していても受付期間が過ぎりていたりと、常に申し込みができるわけではありません。
検討されている人は、まず自治体へ問い合わせしましょう。
その他の住宅ローンの種類
ここまで金利や借入先の種類について紹介しました。
ですが、金融機関によってはこれまで紹介した以外にも、「夫婦で借りる時に利用できる住宅ローン」や、「リフォーム用の住宅ローン」など、契約者や目的に応じてさまざまな住宅ローンを取り揃えていることがあります。
ここからは借入形態別、目的別に、以下の住宅ローンの種類について紹介します。
その他の住宅ローンの種類
返済方式の種類
住宅ローンの返済方法には、以下の2つの種類があります。
「元利均等返済」を選ぶと、返済期間の間、毎月の返済額は一定になります。
また、「元金均等返済」を選ぶと、返済当初は返済額が高く、返済を続けるうちに返済額が下がっていきます。
それぞれの特徴を理解し、どちらの返済方法が自分に適しているか把握しておきましょう。
(1)元利均等返済
元利均等返済は、借入金額(元金)と、利子の合計額である毎月の返済を均等に返済していく返済方法です。
毎月の返済額は常に一定となるため、返済計画だけでなくライフプランを立てやすいというメリットがあります。
しかし、元金均等返済と比べると、借入金額である元金の減り方が遅くなるため、総返済額は多くなってしまうデメリットもあります。
(2)元金均等返済
元金均等返済は、借入金額(元金)のみを均等に返済していく返済方法です。
元金が毎月均等になるため、借入残高に対する利子を加えると、借入当初の返済額が高くなり、借入残高が減っていくにつれて毎月の返済額も下がっていきます。
元利均等返済に比べて借入金額(元金)が早く減っていくため、総返済額も元利均等返済よりも少なく済むメリットがあります。
その一方で、借入当初は月々の返済額の負担が大きいというデメリットもあります。
夫婦で借りる住宅ローン
結婚を機にマイホームを購入する方は少なくありません。
夫婦でマイホームを購入する場合、夫が単独で住宅ローンを借りることもできますが、共働きであれば共同で借りることも可能です。
夫婦で住宅ローンを借りる方法として、以下の3つの種類がありますので、それぞれのメリット・デメリットを理解して状況に適した借入を行いましょう。
(1)ペアローン
ペアローンは夫婦それぞれ別の住宅ローンを借りることを指します。
1人で住宅ローンを組む場合は1契約ですが、ペアローンでは2つの契約を結ぶことになります。
メリット
-
夫と妻それぞれ住宅ローン控除を受けられる
控除枠を最大限に利用することが可能となり、節税につながる。 -
借入額を増やすことが可能となる
2人でローンを借りるため、1人で住宅ローンを借りるよりも、借入額を増やすことができる。
デメリット
-
事務手数料などの諸費用が2倍になる。
契約をそれぞれ行うため、印紙代も2人分かかってしまう。 -
出産などで仕事を辞めると、住宅ローン控除の恩恵は無くなる。
所得税にかかる控除となるため、住宅ローン控除は収入がなくなると適用されない。
(2)単独ローン
単独ローンは、1人で住宅ローンの契約をしますが、単独ローンにも「収入合算」という借入方法があります。
例えば、夫が単独借入の契約した場合でも、妻が連帯保証人になりますが、妻の収入を夫の収入に合算してローンを借りることができます。
そうすることで、夫の単独借入であっても、2人の収入を合算するため、夫1人の収入での借入上限額よりも多くの借り入れをすることができます。
ただし、契約者である夫が返済できなくなった場合、連帯保証人である妻に返済の義務が生じます。
メリット
-
借入額を増やせる。
非正規雇用でも収入合算できる。 -
契約自体は単独のため、諸費用などの負担は1契約分となる。
契約自体は1人となるため、ペアローンよりも諸費用の負担を減らすことが可能。
デメリット
-
連帯保証人には住宅ローン控除が適用されない。
連帯保証人は契約者ではないため、住宅ローン控除は適用されない。 -
連帯保証人は団体信用生命保険に加入ができない。
収入を合算していたとしても、連帯保証人は契約者ではないため、万が一の場合の保障は一切ない。
(3)連帯債務
連帯債務とは、主となる契約者1人と連帯債務者1人の連名で住宅ローンを契約することを指します。
例えば、夫が主となる契約者であれば、連帯債務者は妻となり、それぞれがすべての債務を連帯して負います。
メリット
-
諸費用の負担を抑えつつ、両名に住宅ローン控除を適用できる。
契約そのものは1つのため、諸費用は1契約分となりますが、連帯債務者も住宅ローン控除を受けることができる。 -
借入額を増やすことができる。
単独ローン(収入合算時)と同様に、連帯債務者である妻の収入を合算することが可能となる。
デメリット
-
取り扱い金融機関が少ない。
一部の金融機関か住宅金融支援機構のフラット35を利用することになるため、選択肢が少ない。 -
連帯債務者は団体信用生命保険に加入ができないことがある。
一般的な金融機関を利用する場合、団体信用生命保険に加入できない。フラット35を利用する場合は加入できるが、通常の1.56倍の団信特約料となる。
フローチャートでケース別にチェック
借り入れの状況などにもよりますが、それぞれどのような場合に選べばいいのか、上記のフローチャートでチェックしてみてください。
なお、以下の記事では夫婦で住宅ローンを組む場合に関して、より詳細に解説していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
リフォーム専用ローン
住宅用のローンには、一般的な住宅ローンとは別に、リフォーム専用ローンもあります。
中古住宅を購入した人や、住宅を相続した人はリフォームを行う機会が多いため、リフォーム専用ローンについても知っておくとよいでしょう。
リフォーム専用ローンは民間の金融機関から申し込むことができ、基本的には住宅に抵当権がつかない無担保のローンとなります。
住宅ローンと比べると以下のような特徴があります。
リフォーム専用ローン | 住宅ローン | |
---|---|---|
抵当権の設定 | 一般的になし | 必要 |
金利 | 変動金利となることが多く、住宅ローンと比べ割高となりやすい | 選択できる |
返済期間 | 半年~15年程度 | 最長で35年程度 |
借入上限額 | 住宅ローンと比べると少ない | 審査次第 |
審査 | 審査期間が短く、通りやすい | 審査期間は長め |
一般的に住宅ローンを利用したリフォームはできませんが、一部の金融機関では、リフォームの規模次第で住宅ローンを利用できます。
また、中古住宅の購入と併せてリフォームする場合は、取得費と一緒にリフォーム費用も住宅ローンで借りられることもあります。
リフォームを検討している方、リフォームローンと併せて住宅ローンについても調べてみるとよいでしょう。
まとめ
マイホームは、人生の中でも特に大きな買い物となるため、住宅ローンを借りて購入する人がほとんどです。
購入する家選びは慎重になるものの、住宅ローンは種類が多く、どのように選べばよいのかわからない人も多いでしょう。
どの種類を選択するかによって、同じ金額を借りても最終的に支払う総返済額や返済方法は大きく変わります。
無理のない返済計画、ライフプランを立てるためには、自分に合った住宅ローンを選ぶことが大切です。
自分で調べ、納得したうえで借入を行うようにしましょう。





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