マイナス金利の今、住宅ローンは借り換えるべき?金利引き下げへの影響を分かりやすく解説
監修者: 中野良唯 (ジョインコントラスト株式会社)
- マイナス金利政策によって住宅ローン金利は大きく引き下げられた
- フラット35金利は10年前の3分の1
- 2016年以前に住宅を購入した人は借り換えのチャンス
「マイナス金利で住宅ローン金利が下がっている今こそ、借り換えのチャンス!」という話は、よく耳にしますよね。
しかし、「どうして借り換えチャンスなのか」「そもそもマイナス金利とは何なのか」を、自信をもって理解されている方は少ないのではないでしょうか。
2016年に実施されたマイナス金利政策によって、各金融機関の住宅ローン金利は大きく引き下げられました。
そのため、2016年以前に住宅ローンを借りた方は、借り換えで100万円以上もお得になるケースもあります。
当記事ではマイナス金利政策と住宅ローン金利の関係性をお伝えしながら、マイナス金利の間に借り換えする具体的なメリットについて解説します。
住宅ローンの借り換えに悩んでいる方は、今借り換えすべきかどうかを判断できるようになりますよ。
この記事を執筆・監修している専門家
中野良唯
ジョインコントラスト株式会社
保有資格・検定
AFP、宅地建物取引士
大手ハウスメーカーでの営業所長を経て、生命保険会社へFPとして転職。 その後、独立系FPとしてコンサルティングの幅を広げるためジョインコントラスト株式会社へ移籍。 現在は「家計教師.com」に所属するFPとして、家計の個別コンサルティングや各種セミナー、企業や学校などで講演会なども行なっています。
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
マイナス金利政策とは
マイナス金利政策は、2016年1月より導入されている日本銀行(以下、日銀)の金融政策です。
正式名称で「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」と言い、主に3つの政策で成り立っています。
マイナス金利付き量的・質的金融緩和の内容
- マイナス金利の導入
- 金融市場の調節
- 長期国債やETFなどの資産の買い入れ
このうち住宅ローン金利の引き下げに大きな影響を及ぼしたのは、上記1の「マイナス金利の導入」です。
マイナス金利の導入とは
マイナス金利の導入では、「民間金融機関が利用している日銀当座預金に対し、一定金額を超える部分にマイナス0.1%の金利を課す」ようになりました。
もう少し噛み砕いて解説すると、民間の金融機関が日銀に対して必要以上にお金を預けると、預金金利がマイナスになる仕組みのことです。
預金金利がマイナスになれば、お金を預けている側が利息を支払わなければならなくなります。そのため、金融機関は損をしてしまわないように、企業や個人に対してどんどん融資を行うようになりました。
市場にできる限りお金を放出して経済を刺激することこそ、マイナス金利政策の狙いと言えるでしょう。
そして、このマイナス金利の導入こそが、住宅ローンの金利へ大きく影響を与えています。
マイナス金利による住宅ローン金利への影響
マイナス金利政策の導入に影響を受け、各金融機関は住宅ローン金利を軒並み引き下げました。
例えばフラット35の金利であれば、マイナス金利導入前の平成21年は「年2.760%」でしたが、平成27年には「年1.690%」まで下がり、そして令和2年現在も「年1.5%以下」の金利水準となっています。
1%と聞くと大きな影響はないように聞こえるかも知れませんが、住宅ローンの総支払額では数百万円以上も変わることがあります。
そう考えると、マイナス金利の導入が、住宅ローンへの変化がどれほど大きな影響をもたらしたのか理解しやすいですよね。
住宅ローン金利が引き下げられた背景
マイナス金利政策で日銀が行ったのはあくまでも市場の融資開放であり、住宅ローン金利を直接引き下げたわけではありません。
そのため、「マイナス金利で融資が活発になったのはわかるけど、なんで住宅ローン金利が大幅に引き下げられたの?」と感じた方も居るかと思います。
住宅ローン金利が引き下げられた理由は、おもに下記の2つです。
マイナス金利導入の影響で住宅ローン金利を引き下げた理由
【固定金利】長期金利が低下した
『長期金利』とは、フラット35などの長期固定金利に影響を与える重要な指標のことです。
国内の代表的な長期金利は10年物国債の利回りですが、日銀はマイナス金利導入を始めとする金融政策により、国債を大量に買い入れしました。つまり日銀は国債の買い入れにより、長期金利を抑えるようコントロールしているわけです。
その結果、長期金利は低下し、フラット35を始めとする長期固定金利も引き下げられることになったのです。
【変動金利】金融機関の競争が激化した
マイナス金利政策により、金融機関は今まで以上の融資顧客を確保しなければならない状況になりました。
そこで多くの顧客を取り込むための手っ取り早い施策が、住宅ローン金利の引き下げだったわけです。
変動金利の適用金利が驚くほど低いのは、変動金利を目玉商品とする金利優遇策によって顧客拡大を狙っている金融機関が増えたからなのです。
金利引き下げのまとめ
ここまでをまとめると、金融機関が住宅ローン金利を引き下げたのには下記のような背景があったからです。
-
長期固定金利の引き下げ
…日銀の長期金利誘導による国債の利回り低下によるもの -
変動金利の引き下げ
…金融機関の競争が激化して金利優遇が拡大したことによるもの
どちらもマイナス金利政策が要因ですが、金利低下の背景が少し異なります。
特に固定金利に影響を与える国債の利回りは日銀のコントロール下にあるとはいえ、日々揺れ動く指標です。
固定金利は融資実行月によっても微妙に変動するため、その点もふまえたスムーズな借り換えが重要になってきます。
マイナス金利導入後は住宅ローン借り換えのチャンス
マイナス金利導入で金利が引き下げられている今、住宅ローン借り換えによるメリットは非常に大きくなっています。
借り換えによるメリットを得られるかどうかを簡易的に判断する場合、下記のポイントをチェックしてみてください。
借り換えによるメリットを判断する目安
- 借り換え前と借り換え後の金利差:年0.3%以上
- 住宅ローン残存期間:10年以上
- 住宅ローン残高:1,000万円以上
一般的には「住宅ローンの借り換えは金利差が1%以上あると良い」といわれることが多いのですが、実際には年0.3%の金利差でも総支払額を軽減できるケースもあります。
「金利差が年1%もない」と借り換えを断念していた方は、一度借り換えシミュレーションをして具体的なメリットを確認してみてください。
諸費用を含めた金額で比較することが大切
マイナス金利によって借り換えた人は約2倍に増加
マイナス金利導入によって住宅ローン金利が大幅に引き下げられたため、住宅ローンを借り換える方が急増しました。
国土交通省の調査によると民間金融機関での借り換え割合は、2015年では「15.2%」に対して、2016年では「25.3%」まで増加しています。
出典:「平成29年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」よりP25「(2)新規貸出額の使途別実績」(国土交通省)
また、取扱件数を見ても平成27年度(2015年)で約7万件に対して、マイナス金利政策導入直後の平成28年度(2016年)には、およそ2倍の約15万件になったのです。
借り換え件数が倍増したのは、マイナス金利政策の影響が相当大きかったからだと想定されます。
マイナス金利政策の目標は景気向上や物価上昇ですが、これらの実現にはまだ時間がかかりそうですよね。
そのため2020年以降も、低金利による借り換えブームは続く可能性が非常に高いでしょう。
マイナス金利時代の住宅ローン借り換えの注意点
マイナス金利政策が継続中の今、住宅ローンの借換えは絶好のタイミングと言えます。
ただし借り換えにはいくつか注意点もあるので、以下のポイントに気をつけてください。
住宅ローンを借り換える際の注意点
借り換えの目的を明確にしておく
「マイナス金利だから借り換えた方が良い」と安易に考えるのではなく、ご自身の借り換えの目的を明確にしておきましょう。
住宅ローンの借り換えの目的は、以下3つのうちのどれかが一般的です。
- 金利引き下げによる利息負担の軽減
- 固定金利への借り換えによる金利上昇リスクの回避
- 異なる団信やサービスの付帯
上記のうち、マイナス金利による住宅ローン金利の引き下げの恩恵を受けられるのは、①と②です。
マイナス金利導入後の金利情勢であれば、変動金利への借り換えはもちろん、固定金利への借り換えでもメリットを受けられる方は多くいます。
固定金利から固定金利への借り換えでお得になるケースもあるため、まずは借り換えシミュレーションで試算してみてください。
金利だけではなく諸費用も含めて試算する
住宅ローンの新規借り入れ時と同様、借り換えの際にも数十万円の諸費用がかかります。
そのため、金利だけで見ればお得になりそうでも、諸費用を加味するとマイナスになってしまうこともあるのです。
「手間をかけて借り換えたのに、あまりお得にならなかった……」なんて事になるのは、誰だって避けたいはず。
借り換え先を検討する際は、金利差による利息削減と、諸費用の金額を合算した上で、借り換えのメリットを受けられるのかを必ず確認しておきましょう。
借り換え審査は厳しい傾向にある
新規借り入れ時と比べると、借り換えの審査は厳しくなる傾向があります。
理由としては、経年劣化による物件の担保評価の下降や、住宅ローン申込者の健康状態の悪化などが挙げられます。
特に住宅ローン残高に対して物件の担保評価が下回ってしまうことは、貸し付ける金融機関としては大きなリスクのため、借り換え時の審査は厳しくなりやすい傾向があるのです。
実際に国土交通省の調べによると、「木造戸建て住宅の場合は、物件の市場価値は20年後に20%以下に下がる」という調査データも存在します*。
借り換え時の審査対策については、下記の記事で詳しく解説しているので不安な方はぜひ参考になさってください。
* 国土交通省:「中古住宅流通、リフォーム市場の現状(平成22年)」
まとめ
マイナス金利政策の影響により、住宅ローンは歴史的な低金利が続いています。
借り換えを検討するなら、金利が低い今こそ絶好のタイミングではないでしょうか。
借り換えでは金利差が年0.3%以上あれば、借り換えメリットを得られる可能性があるため、まずは気軽に借り換えシミュレーションを行ってみてくださいね。