住宅ローンで貧乏になるケースを紹介!苦しい生活にならないための対処法も徹底解説
執筆者: 中野良唯 (ジョインコントラスト株式会社)
住宅ローンを借り入れる際にしっかりと返済計画を立てていないと、いわゆる「住宅ローン貧乏」になってしまうことがあります。
特に多いのは、そもそも年収に対する返済負担率ギリギリの金額で住宅ローンを組んでしまっているケース。
上限いっぱいまで住宅ローンを借りていると、住宅ローンの返済だけで収入のほとんどを使ってしまい、住宅ローン貧乏になってしまうのです。
当ページでは住宅ローン貧乏になりやすいケースや、すでに住宅ローン貧乏になっている状態から抜け出す方法を解説しています。
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
住宅ローン貧乏になりやすい3つのケース
いわゆる「住宅ローン貧乏」になってしまう人は、そもそもリスクの高い住宅ローンを組んでしまっているケースがほとんど。
具体的には、以下3つが住宅ローン貧乏に陥りやすいケースです。
住宅ローン貧乏になりやすいケース
それぞれ解説していきます。
返済負担率の上限ギリギリのケース
年収に対して返済額が占める「返済負担率」が、審査上限ギリギリの方は住宅ローン貧乏になりやすいと言えます。
住宅ローン審査を通すには返済負担率は30%~35%以下である必要がありますが、これらはあくまでも審査に通るためのギリギリの割合です。
実際に返済負担率35%の住宅ローンを組んでしまうと、手取り収入に対する返済負担が重たくなり、想定外の出費があった際に家計を切り詰める必要が出てきてしまうのです。
返済負担率は上限ギリギリで組むのではなく、手取り収入の20%以下を目安にすることをおすすめします。
収入が減るとさらに負担は大きくなる
さらに転職などの理由から収入が減ってしまった場合には、住宅ローンの返済はさらに苦しいものとなります。
手元に残るお金が大幅に減ると、現在の生活だけでなく、将来のための貯蓄をすることもできません。
住宅ローンを返済しながら子どもの教育費や老後の貯蓄ができるよう、余裕を持って住宅ローンの借入金額を設定することが大切です。
定年後も住宅ローンの返済が続くケース
高齢から住宅ローンを借りた方など、定年後も返済が続くことによって住宅ローン貧乏になってしまうケースもあります。
定年後は収入が年金のみになるため、貯蓄と年金だけでやりくりをしなければなりません。なかには定年後に再就職をする方もいますが、現役時代と比べて大きく収入が減少してしまう方がほとんどでしょう。
現役時代と比て家計の収支バランスが大きく崩れるため、住宅ローンを返すことでいっぱいいっぱいになり、結果的に住宅ローン貧乏になりやすいのです。
退職金での一括返済はおすすめできない
退職金で住宅ローンを一括返済すればよいのではないか、と考えている人もいるでしょう。
しかし、退職金での一括返済はおすすめできる方法ではありません。
退職するまでに充分な貯蓄ができていない場合には、その後の生活が苦しくなってしまうからです。
そのため、住宅ローンを借り入れる際は、定年で退職した後にも住宅ローンが残らないように返済年数を設定しましょう。
また、定年後にも返済が残る場合は、貯蓄計画や働き方を十分検討して、住宅ローンを借りるようにすることが重要です。
夫婦で収入合算しているケース
住宅ローンの借入金額を大きくする方法として、「夫婦の収入合算」が挙げられます。
収入合算には購入物件の幅が広がるメリットがありますが、将来どちらかが休職した際に生活が苦しくなるリスクが存在します。
育児休暇で収入が減少してしまうことはもちろん、将来に妻が出産を機に仕事を辞めることも想定して、片方の収入でも返済できる金額で住宅ローンを借り入れることが重要です。
収入合算で住宅ローンを借りたい場合は、出産後や介護の際の対策を家族で十分に話し合い、親族の協力や保険での対応などしっかりと検討しておきましょう。
既に住宅ローン貧乏になっている場合の対処法
この記事をお読みの方の中には、すでに住宅ローンの返済が苦しいと感じている方もいるかと思います。
そこでここでは、住宅ローン返済が苦しい場合に取るべき対処法を4つ紹介していきます。
住宅ローン貧乏の対処法
住宅ローンの返済で悩んでいる人は、ぜひ当項目をチェックしてください。
固定費など家計全般を見直す
もっとも簡単な方法は、固定費などを含めた家計全般の見直しです。
収入を増やすことは簡単にはできないですが、すでに使っている費用の見直しは今すぐにでも始められます。
以下表は3人世帯における1ヶ月あたりの平均支出を一覧にしたものなので、ご自身の家庭での支出と見比べてみてください。
項目 | 3人世帯 |
---|---|
食費 | 7万4,790円 |
住居費(持ち家や社宅含む) | 2万1,027円 |
水道光熱費 | 2万1,583円 |
家具・家事用品 | 1万2,010円 |
被服及び履物 | 1万2,676円 |
保健医療費 | 1万3,012円 |
交通費 | 7,824円 |
自動車等関係費 | 2万8,235円 |
通信費 | 1万6,237円 |
教育費 | 1万5,073円 |
教養娯楽費 | 2万9,291円 |
その他の消費支出 | 6万6,205円 |
消費支出合計 | 31万7,962円 |
項目 | 4人世帯 |
---|---|
食費 | 8万2,980円 |
住居費(持ち家や社宅含む) | 1万7,114円 |
水道光熱費 | 2万3,155円 |
家具・家事用品 | 1万2,576円 |
被服及び履物 | 1万4,486円 |
保健医療費 | 1万2,108円 |
交通費 | 7,946円 |
自動車等関係費 | 3万7,368円 |
通信費 | 1万7,528円 |
教育費 | 3万1,473円 |
教養娯楽費 | 3万5,360円 |
その他の消費支出 | 5万4,680円 |
消費支出合計 | 34万6,773円 |
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「1世帯当たり1か月間の収入と支出:表4」を基に作成
POINT
家計は「固定費」から見直そう
家計を見直す際のコツは、毎月同じ金額を支出している「固定費」から手を付けていくこと。
先ほどの一覧の中で言うと、「保険医療費」「通信費」「水道光熱費」などは簡単に見直しができて、特に節約効果も大きい項目です。
優先して見直すべき固定費
-
保険(月1万円~)
本当に必要な内容だけにする -
通信費(月5,000円~)
格安SIMに乗り換える -
光熱費(月1,000円~)
電力会社を乗り換える
※カッコ内は節約効果の目安
すべて見直せば月に1万円以上の節約になることも珍しくないため、まずは上記3つの中から平均を超えてしまっていないかを確認してみてください。
住宅ローンの借り換えをする
2016年のマイナス金利政策以降、住宅ローンの金利は大きく引き下げられています。
そのため、住宅ローンの借り換えで月々の返済額が1万円以上安くなることも珍しくありません。
例えば、15年前に「借入金額4,000万円 / 返済期間35年 / 金利年2.0% / 元利均等返済」で借りていた人が、金利年1.3%へ借り換えた場合では毎月返済額は約9,000円ほど安くなります。
毎月の返済額 | 残り20年間の総返済額 | |
---|---|---|
借り換え前(金利年2.0%) | 13万2,505円 | 3,168万8,412円 |
借り換え後(金利年1.3%) | 12万3,558円 | 2,965万3,777円 |
差額 | 8,947円 | 203万4635円 |
さらに、残り20年間の総返済額では200万円以上もの金額差が生まれます。
借り換え効果があるかどうかは借り換えシミュレーションツールで簡単に調べられるので、まずは気軽にシミュレーションしてみてください。





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借り入れ先の金融機関に金利交渉する
住宅ローンを借り換える以外にも、金融機関に金利交渉をするという方法もあります。
金利交渉は簡単に認められないため難易度は高くなりますが、うまくいけば低金利の住宅ローンに変更することが可能です。
ただし、住宅ローンの金利プランを変更するためには、会社の倒産による解雇や給与・ボーナスカットの他、健康上の理由で働くことができなくなった場合など、規定の条件に当てはまっている必要があります。
借り入れ先に金利交渉をする場合は、借り入れ先のホームページなどに記載されている金利プランの変更条件を確認した上で交渉しましょう。
金融機関に相談する
金融機関には、住宅ローンの支払いや返済について相談できる窓口が設けられています。
金融機関に相談することで、一時的に返済額を軽減してもらえるケースもあるため、住宅ローンの返済が困難な場合は、相談窓口を利用しましょう。
早めに相談することで、住宅ローンの返済を猶予してもらえることもあります。
会社の倒産やリストラ、病気にかかったなどで収入が大幅に減少し、住宅ローンの返済が難しい場合は、延滞が発生する前に必ず金融機関に相談しましょう。
住み替えも検討する
これまでに紹介した対処法を実施しても住宅ローンの返済が厳しい場合は、住宅を売却して住み替えるという方法もあります。
せっかく購入した住宅を手放すことは非常に惜しい選択です。
しかし、今までのローン返済よりも低価格な家賃の賃貸物件に引っ越すことにより月々の住宅費を減らすことができ、さらに固定資産税の納税負担からも解放されます。
住宅を売却する際は、複数の不動産会社に査定依頼をすることがポイントです。
また、担当者の知識や対応もしっかりと見ておきましょう。
査定額が高くても住宅が売れなければ、住宅ローン貧乏から抜け出すことができません。
住宅の査定額が住宅ローンの残債よりも安い場合、差額は自身で用意する必要がある点に注意してください。
住宅ローン貧乏を避けるためにライフプランを見直そう
住宅ローン貧乏になるのは、そもそも資金計画の立て方に問題があることが多いです。
実際に、教育費や老後の生活費を含めた資金計画を見直すことで、住宅ローン貧乏から抜け出せた人も多くいます。
資金計画を見直す際は、ライフプランニングシートを活用することがおすすめです。
ライフプランニングシートとは
年単位の収入・支出を一覧にする。
これから先に起こり得るライフイベントと、イベント時に必要となるお金をシートにまとめることで、いつ、どのくらいのお金が必要となるのかが分かります。
ライフプランニングシートを作成して、将来自身が住宅ローン貧乏にならないかを確認しておくことで、住宅ローン貧乏を回避できるでしょう。
給料が入ったら貯蓄を先にする
貯蓄の仕方には2種類あります。給料が入ったら使えるだけ使って残りを貯蓄にまわすパターンと、給料が入ったら先に貯蓄をして残った分で生活するというパターンです。
あったらあるだけ使ってしまう人は、給料から貯蓄分を天引きしておくようにしましょう。
さらに、ライフイベントごとに必要な費用を算出し、目的ごとに貯蓄をすると、将来お金が足りなくなるといったリスクを軽減することができます。
まとめ
せっかく住宅を購入しても、住宅ローンを年収の上限いっぱいまで借りてしまっては、毎月の返済額が負担となり、住宅ローン貧乏となります。
また、高齢で住宅ローンを借りたり、夫婦で収入合算して住宅ローンを借りたりした場合も、返済計画や貯蓄額によっては住宅ローンの返済が厳しくなることがあります。
住宅ローン貧乏を回避するためには、住宅購入前のライフプランニングが大切です。
また、住宅ローン貧乏になってしまった場合は、まずは固定費や住宅ローン金利の見直しをましょう。





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