住宅ローンの金利引き下げ交渉の進め方 | デメリットもあるため注意
執筆者: 中野良唯 (ジョインコントラスト株式会社)
- 住宅ローンの金利引下げ交渉が認められるケースはある
- ただし、交渉の難易度は高め
- 借り換えと比べてメリットの大きいほうを選ぼう
交渉をすれば住宅ローンの金利が引き下げられることがあるーー。
住宅ローンを返済していくなかで、このように耳にする機会があるかと思います。
しかしその一方で、
- 金利の引き下げ交渉はどうやって進めれば良いのか
- そもそも本当に金利が下がることがあるのか
- 引下げ交渉をして不利になることはないのか
などの疑問があると、なかなか行動に移しづらいですよね。
結論をお伝えすると、住宅ローンの金利引き下げ交渉が認められる場合はありますが、交渉を通すための難易度は高めです。
また、住宅ローンの借り換えと比べるとコストメリットが少なくなる可能性もあるため、借り換えも視野に入れながらお得な方を選びましょう。
このページでは住宅ローンの金利引き下げ交渉について、以下を具体的に解説していきます。
この記事で解説していること
ご自身の状況でシミュレーションした上で、どちらのほうがお得になるのかを判断してくださいね。
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
住宅ローンの金利引下げ交渉をするメリット
具体的な交渉の手順をお伝えする前に、住宅ローンの金利引き下げ交渉をするメリットとデメリットについて触れておきましょう。
実際に金利交渉を始めてから後悔しないために、それぞれの大枠だけでも理解しておいてくださいね。
金利引き下げ交渉のメリット
まずは、住宅ローン金利の引き下げ交渉を行うメリットを解説していきます。
毎月の返済額を減らすことができる
金利は住宅ローンの利息に影響するため、金利が高くなると利息が増え、住宅ローンの返済額も増えます。
そのため、金利の引き下げ交渉がうまくいけば、毎月の住宅ローン返済額は少なくなります。
例えば「住宅ローンの借入金額3,000万円 / 返済期間25年 / 元利均等返済」という条件で住宅ローンを組む場合、金利年1.2%と0.8%での毎月返済額の違いは以下のようになります。
適用金利 | 毎月返済額 |
---|---|
年1.20%の場合 | 11万5,798円 |
年0.80%の場合 | 11万0,366円 |
差額 | 5,432円 |
※住宅保証機構株式会社のシミュレーションツールにて算出
※借入金額3,000万円 / 返済期間25年 / 元利均等返済の場合
※各返済額はあくまで概算値です。実際には融資実行日のズレによりわずかな差額が生じる場合があります。
毎月の固定費が5,000円以上安くなるということは、年間で考えれば6万円以上もの節約になります。
節約できた金額は貯蓄や投資など将来のために活用することで、よりゆとりのある生活を送りやすくなるでしょう。
「毎月の支出を減らしたい」「将来に備えて貯蓄をしておきたい」と考えている方にとって、金利の引下げ交渉は効果の大きい固定費削減の方法です。
住宅ローンの総返済額が少なくなる
毎月の返済額が少なくなるということは、当然ながら住宅ローンの総返済額も少なくなります。
先ほどと同じ条件での総返済額の違いを見てみましょう。
適用金利 | 総返済額 |
---|---|
年1.20%の場合 | 3,473万9,401円 |
年0.80%の場合 | 3,310万9,733円 |
差額 | 162万9,668円 |
※住宅保証機構株式会社のシミュレーションツールにて算出
※借入金額3,000万円 / 返済期間25年 / 元利均等返済の場合
※各返済額はあくまで概算値です。実際には融資実行日のズレによりわずかな差額が生じる場合があります。
毎月の返済額は5,000円の違いでしたが、25年間の総返済額ではなんと162万円もの差が生まれます。
購入している住宅は同じなのに、162万円も多く支払うなんて絶対に避けたいですよね。
少しでも住宅ローンで支払う金額を減らしたいと考えているなら、金利交渉を検討する余地は十分にあります。
借り換えと比べて手間が少ない
住宅ローンの金利を下げる方法のひとつに、『借り換え』という選択肢があります。
借り換えでは別の金融機関で改めて住宅ローンを契約しなおすため、たくさんの書類記入や司法書士との面談が必要になり、時間も手間もかかります。
住宅ローン借り換えは手順が多い
- 借り換え先を選ぶ
- 事前審査の申し込み
- 本審査の申し込み
- 借入中の金融機関へ「全額繰り上げ返済」をしたい旨を伝える
- 借り換え先の金融機関と契約を結ぶ
- 司法書士に依頼して抵当権の設定を行う
- 融資実行
対して金利の引き下げ交渉は、すでに借りている金融機関で条件を見直すだけなので、借り換えと比べると必要な手間は少なくなります。
「面倒だから」というだけで借り換えを視野に入れないのはおすすめしませんが、書類記入や準備などを避けたい方にとってメリットとなるでしょう。
引き下げ交渉は諸費用がかからない
住宅ローンの借り換えでは30万円~100万円ほどの諸費用が必要になりますが、金利の引き下げ交渉に諸費用はかかりません。
まとまった資金がなくても金利を引き下げられる点も、借り換えと比較した際のメリットのひとつです。
ただし、借り換えほどの金利引き下げ効果を得られない場合もある点には注意が必要です。
次の章では、金利引き下げ交渉を行うデメリットについて解説していきます。
金利引き下げ交渉を行う3つのデメリット
住宅ローンの金利引き下げ交渉を行うデメリットは、以下の3つです。
金利引き下げ交渉のデメリット
それぞれ見ていきましょう。
借り換えのほうがお得になる場合がある
金利の引き下げ効果を比べると、借り換えのほうが効果が大きくなる可能性があります。
金利の引き下げ交渉は、あくまでも既に借りている金融機関が許容できる範囲内で行われるもの。
そのため地方銀行やメガバンクで金利引き下げ交渉を行うよりも、より低金利のネット銀行に借り換えるほうが金利は低くなりやすいでしょう。
金融機関 | 変動金利の目安 |
---|---|
ネット銀行 | 0.3%~0.5%台 |
メガバンク | 0.4%~0.5%台 |
地方銀行 | 0.5%~1.0%台 |
もちろん金利の引き下げ交渉を全くしないよりはお得になります。
しかし、住宅ローンの負担を少しでも減らしたいのであれば、借り換えと比べてどれくらいの利息軽減効果があるのかを必ず確認しておきましょう。
金融機関からの心証が悪くなる恐れがある
金利引き下げ交渉を行うことで、金融機関からの心証が悪くなってしまうこともあります。
金融機関が住宅ローンを貸すのは、きちんと返済できる人に限られます。
そのため「金利を値切るほど経済的な余裕がない」と判断されると、金利引き下げはおろか、他のローンの借入も難しくなる可能性が考えられます。
また、そもそも金利交渉は簡単に認めてもらえるものではないため、住宅ローンの借り換えも視野に入れながら進めていきましょう。
借り換えせざるを得ないこともある
住宅ローンの金利引き下げ交渉をする際には、改めて金融機関側で審査が行われます。
しかし、ここで注意が必要なのは再審査に落ちてしまうと現在の契約を継続できなくなるケースがあるということ。
既に借りている住宅ローンを継続して利用できないため、結果的に借り換えるしか選択肢がないという状況が起こり得るのです。
借り換えの注意点
- 借り換えでも金利は引き下げられますが、30万円~100万円ほどのまとまった諸費用が必要になります
金利の引き下げ交渉を行う際は、これらのリスクをしっかりと理解した上で実践しましょう。
住宅ローンの金利引き下げ交渉の手順
金融機関の信頼を損なわずに金利引き下げ交渉を行うためには、住宅ローンの借り換えを本格的に検討している旨を金融機関に伝える方法が有効です。
金利引き下げ交渉に入る前に、まずは借り換えを検討している金融機関の仮審査を通過しましょう。
ここからは、金利引き下げ交渉の手順を説明します。
ステップ1:借り換え候補の金融機関で事前審査を申し込む
引き下げ交渉を円滑に進めるには、住宅ローンの借り換えを本格的に検討している旨を金融機関に伝える方法が有効です。
そのため、まずは借り換え候補となる金融機関で事前審査に申し込みましょう。
事前審査に申し込むときのポイント
- 複数の金融機関に事前審査を申し込む
- 今よりも金利が低い住宅ローンを選ぶ
- 実際に借り換えることを前提にする
事前審査の結果が分かるまでに1週間ほど必要になるケースもあるため、金利引下げ交渉を思い立ったら早めに申し込んでおくことをおすすめします。
借り換え候補選びでは一括シミュレーションが便利
住宅ローンの借り換え候補を決めるときは、借り換えの一括シミュレーションを使うと簡単にお得な金融機関を見つけられます。
一つひとつの金融機関で借り換えメリットを調べていく作業は、面倒ですし時間もかかります。
一方で、借り換えの一括シミュレーションなら「メリットが大きい借り換え先」「借り換えによるメリット額」「諸費用の金額」などをたった1分で調べることが可能です。
「もっとお得な銀行があるなんて知らなかった……」という後悔をしないためにも、まずは借り換えシミュレーションで気軽にメリットを調べてみてくださいね。
諸費用を含めた金額で比較することが大切
ステップ2:借り入れ先の金融機関への金利引下げ交渉
事前審査に通過したら、いよいよ現在住宅ローンを借りている金融機関に対して金利引下げ交渉を行います。
借り換え候補の金融機関で事前審査に通過していることを説明した上で、「借り換えで必要となる諸費用を踏まえてコストメリットのある金利に引き下げてくれるのなら、このまま借り入れを継続する」と伝えましょう。
ただし、金利を引き下げるということは銀行が得られる収益を減らすということなので、簡単に金利引下げ交渉に応じてくれる金融機関は多くありません。
そのため金利引き下げの交渉時は、今後も借り続ける意思があるからこそ事前に借り換えの相談に来た旨を好意的な姿勢で伝えることが大切です。
POINT
借り換え候補のシミュレーション結果は、重要な交渉材料です。
金利交渉の際には、必ずシミュレーション結果を持参しましょう。
ステップ3:交渉結果を踏まえて判断する
金利交渉の結果を踏まえて、今の金融機関で継続するのか、違う金融機関へ借り換えるのかを判断しましょう。
ただし金利引下げ交渉が成功したからと言って、必ずしも借り換えよりも低い金利が適用されるとは限りません。
下記の特徴も参考にしながら、金利や手続きの手間なども含めた上でご自身のニーズに合う方法を検討しましょう。
借り換えが向いている人
- 金利を最大限低くしたい
- 違う金利タイプや団信に変更したい
- 諸費用を支払う余裕がある
金利交渉が向いている人
- 借り換えの手間や諸費用を省きたい
- 同じ金融機関を使い続けたい
借り換えを検討する場合は、「借り換えにおすすめのローン」も参考にしてみてください。
まとめ
現在借りている住宅ローンの金利は、交渉次第で引き下げられることがあります。
引き下げ交渉を行う手順は、以下の通りです。
金利引き下げ交渉の手順
- 借り換え候補の金融機関で事前審査を申し込む
- 借り入れ先の金融機関への金利引下げ交渉
- 交渉結果を踏まえて判断する
ただし、引き下げ交渉に成功したとしても、金利が限界まで引き下げられるとは限りません。
住宅ローンの借り換えを行うほうがコストメリットが大きくなる可能性もあるため、どちらの方がご自身にとってメリットが大きいのかを確認した上で、今の金融機関を利用し続けるのか、借り換えるのかを判断なさってくださいね。