住宅ローン借り換え時の3つの注意点!大切なのは目的を明確にすること
執筆者: 政所温也 (株式会社Choices 代表取締役)
注意点がないか調べておこう…
住宅ローンは借り換えるとお得になると言われていますが、注意点も気になりますよね。
結論からいうと、借り換えの失敗を防ぐには、「借り換えの目的を明確にしたうえで、注意点を押さえておくこと」が大切です。
当記事では、借り換えの目的を明確にする方法から注意点まで、わかりやすく解説しています。
記載されている注意点と対策を読めば、借り換えに伴うあらゆる不安を解消できます。
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
住宅ローンを借り換える「目的」を明確にしよう
住宅ローンの借り換えを検討する際は、まずご自身の目的を明確にする必要があります。
なぜなら目的に応じて「選ぶべき商品」が違ってくるからです。
住宅ローンを借り換える目的は、大きくは下記の3つに分けられます。
住宅ローンを借り換える目的
- 金利の引き下げにより、住宅ローン返済額を軽減したい
- 固定金利への変更により、毎月の返済計画を安定させたい
- 金融機関の変更により、充実した団信や契約者サービスを得たい
借り換えを検討する方の多くは、経済的なメリットが大きい①を目的にしていますよね。
①住宅ローンの返済額を減らしたい場合
①の場合は、「借り換えによって、返済額をどれだけ軽減できるか」がポイントになります。
返済額にもっとも大きく影響するのは住宅ローンの金利なので、まずは金利の低い銀行をいくつかピックアップして、借り換え効果のシミュレーションをしてみましょう。
また借り換えの際には、住宅ローン契約時と同様にまとまった諸費用が必要です。
借り換え先の銀行を選ぶ際は、諸費用も含めたトータルの削減額を中心にチェックしていくことで、より借り換えのメリットを得られる銀行を見つけられるでしょう。
②金利上昇の不安をなくしたい
②を目的にしている場合、「将来的な金利上昇による不安に備えたい」という意図が大きいはずです。
そのため①とは異なり、経済的なメリットよりも精神的なメリットを重視して、借り換え先を検討する必要が出てきます。
金利上昇に備える方法としては、「全期間固定金利に借り換える」「固定期間選択型に借り換える」という2つの方法がありますが、借り換え前の住宅ローン状況によって、どちらの方がお得になるかは異なります。
「何年間、どの程度安定した返済を続けたいのか」をよく検討したうえで、金利の固定期間を選ぶようにしましょう。
③違う銀行の団信や付帯サービスを受けたい
最後の③は、「現状の返済額や金利タイプに不満はないけれど、最近の住宅ローンは団信や各種サービスが充実しているので気になっている」というようなケースです。
団信や各種サービスの内容は金融機関によって大きく異なりますし、契約者の立場や状況によっても適切なサービスは変わります。
このように、目的によって最適なサービスは異なります。
住宅ローンの借り換え先を検討する際の3つの注意点
借り換えで失敗しないためには、下記3つの注意点を認識しておきましょう。
住宅ローンの借り換えを検討する際の注意点
それぞれ非常に重要なポイントなので、対処法とあわせてわかりやすく解説していきましょう。
諸費用を考慮する
金利にばかり注目してしまいがちですが、住宅ローンの借り換えでは、数十万円以上の「諸費用」がかかることを考慮する必要があります。
- 諸費用の支払いが高くて、自己資金が足りなくなってしまった
- 毎月の返済額は安くなったけど、諸費用を含めた総支払額は高くなってしまった
というような失敗を避けるためにも、借り換え時には余裕をもって資金を用意しておきましょう。
また一部の金融機関は、借り換え時の諸費用が低く設定されています。
対策:諸費用を含めてシミュレーションを行う
諸費用を含めた総支払額は、借り換え用の比較シミュレーションツールを使えば簡単に計算することができます。
このツールでは金融機関ごとに
- 月々の住宅ローン返済額がいくらになるのか
- 今の住宅ローンとの差額はいくらか
- 諸費用を含めた総支払額はいくらか
- 借り換えによる総支払額の差額はいくらか
などの具体的な数字を、簡単に計算することができます。
金利の上昇により住宅ローン返済額が高くなることもある
借り換えで選択する金利タイプによっては、毎月の住宅ローン返済額が高くなる可能性もあるので、注意しておかなければなりません。
住宅ローン返済額が高くなるケースとしては、
- 変動金利から固定金利への借り換え(返済計画の安定性を目的にした借り換え)
- 固定金利から変動金利への借り換え(金利の安さによる経済的メリットを得るための借り換え)
という2つが考えられます。
①の固定金利へ借り換えする場合では、借り換え後に住宅ローンの適用金利が上がり、返済額も高くなる可能性があります。
②の変動金利への借り換えでは、借り換え後返済額は下がるでしょう。しかし将来的に金利が上昇すれば、住宅ローン返済額は高くなる可能性があります。
いずれにしても住宅ローン返済額が高くなると、家計にとっては大きな打撃ですよね。
対策:繰り上げ返済を行う
毎月返済額の増加を防ぐには、繰り上げ返済をうまく活用しましょう。
変動金利から固定金利へ借り換えした方は、返済計画が安定する分、長期的な貯蓄目標を立てやすくなるはずです。
毎月少額でも貯蓄をしてこまめに繰り上げ返済すれば、返済額の負担も軽減できるでしょう。
反対に固定金利から変動金利へ借り換えした方は、借り換えによって毎月の返済額を大きく引き下げられたはずです。
借り換えで軽減できた返済額の差額分を、そのまま貯蓄に回しておきましょう。
固定金利に借り換えた方は長期視点でコツコツ貯蓄、変動金利に借り換えた方は金利が低い間に集中的に貯蓄し、繰り上げ返済に備えておきましょう。
借り換え後の条件によっては住宅ローン控除を受けられなくなる
借り換えの条件によっては、住宅ローン控除を受けられなくなってしまうケースがあります。
対策:住宅ローン控除を受けるための要件を満たす
住宅ローンの借り換え後も引き続き住宅ローン控除を受けるには、下記の一定要件を満たす必要があります。
借り換え後も住宅ローン控除が適用される要件
- 新しい住宅ローン等が「当初の住宅ローン等の返済のためのものであること」が明らかであること。
- 新しい住宅ローン等が「10年以上の償還期間であることなど住宅借入金等特別控除の対象となる要件」に当てはまること。
「No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき」国税庁ホームページより引用
借り換え後の住宅ローン控除では、
- 控除金額が増える
- 控除期間が延びる
といったことはありません。
諸費用を上乗せして当初の住宅ローン残高よりも借入金額が増えた場合は、控除金額の調整をする必要があります。
また、借り換え時点で残りの住宅ローン控除適用期間が5年の場合に、借り換えで返済期間が10年になったとしても、残りの控除対象期間は5年のままです。
借り換えで条件が変わったとしても住宅ローン控除対象額と適用期間は変わらないので、注意してくださいね。
住宅ローンの借り換え審査を申し込むときの注意点
住宅ローンの借り換え先を検討して絞り込んだら、次は借り換え審査に進みます。
ここでは住宅ローンの借り換え審査時の注意点と対策について、具体的にご案内していきますね。
借り換え審査時の注意点はおもに2つです。
借り換え審査時の注意点
住宅ローンを一度借りているからといって、借り換えでも同じように審査通過できるとは限りません。
借り換え審査は新規の借入れ審査よりも厳しくなる傾向があるため、勢いで審査を受けるのは危険ですよ。
健康状態の悪化
住宅ローンの借り換え審査時、特に気をつけたいのが「健康状態の悪化」です。
ほとんどの金融機関では借り換えの条件として、指定する団体信用生命保険(以下「団信」)の加入を義務付けています。
団信の加入条件や審査の内容は金融機関指定の保険会社によって異なりますが、過去3年以内の傷病歴や、直近の通院投薬歴などを聞かれるケースがほとんどです。
したがって過去3年以内に大きな病気やケガ、通院歴のある方は注意が必要です。
現在の住宅ローンを借りたときは健康だった方も、年齢を重ねれば健康状態も変わっているはずです。
もし健康状態に不安が出てきている場合は、ワイド団信を利用することも検討しましょう。
対策:ワイド団信を利用しよう
借り換え時に団信加入が難しい場合は、引受基準緩和型と呼ばれる「ワイド団信」を利用して借り換えをするという方法があります。
ワイド団信は通常の団信よりも加入条件が緩和されているため、健康状態や傷病歴に不安がある方でも加入しやすくなっています。
ただし、ワイド団信を利用するには、借り換え後の住宅ローン金利に年0.3%程度の金利が上乗せされる点には注意しましょう。
ソニー銀行など、ワイド団信の上乗せ金利を低めに設定している金融機関もあるため、ワイド団信を利用する際は検討してみてください。
返済負担率が上昇すると審査に通りにくくなる
住宅ローンの借り換え審査では、返済負担率の上昇に気をつけておく必要があります。
返済負担率とは
年収に対する年間の返済額の割合のこと。住宅ローン以外にも、マイカーローンやクレジットカードの支払いも含まれる。
>返済負担率についての詳細
返済負担率に気をつけるべき理由は、借り換え時には物件の担保価値が低くなってしまっていることが原因です。
購入した時は新築だった物件も、借り換えの際には中古物件です。
そのため、住宅ローンの残存年数に見合わない価値になってしまっているケースが少なくありません。
返済負担率を抑えて借り換え審査に通過するためには、下記のような対策が必要です。
対策
対策:他のローンを完済しておく
返済負担率を下げるためには、住宅ローン以外の借り入れを出来る限り完済しておきましょう。
下記の借り入れは返済負担率を上昇させやすいため、借り換え審査においてマイナスの影響を与えてしまう可能性があります。
返済負担率に影響する借り入れの例
- クレジットカードのリボ払いや分割払い
- ショッピングローン
- 自動車ローン
- カードローン、キャッシング
マイカーローンやクレジットカードのリボ払いもしくは分割払い、その他各種ローンの残高がある方は、できる限り審査前に完済させておきましょう。
それでも返済負担率が気になる場合は、借り換えの際に頭金を多めに入れるという方法もあります。
頭金を用意すれば、借り換え先銀行での借入金額が少なくなるため、返済負担率を抑えることができます。
まとめ
住宅ローンの借り換え目的は人それぞれ違います。
借り換えで毎月の返済額を軽減したいのか、あるいは固定金利で返済を安定させたいのか、まずはご自身の目的を明確にしてください。
目的を明確にした後は、以下の4点に注意して借り換えを実行していきましょう。
借り換え時の注意点
- 借り換え前後で諸費用を含めた総支払額を比較検討し、借り換えすべきかどうかを判断する
- 借り換えに伴って返済額が高くなる可能性もあるため、貯蓄をして繰り上げ返済に備えておく
- 健康状態に不安があるときは、ワイド団信の利用も検討する
- 借り換え審査では返済負担率を厳しく見られるため、他の借入れの完済や頭金の増額などで対処する
ご紹介したポイントに注意しておけば、失敗することなくスムーズに借り換えすることができますよ。
ぜひ参考になさってくださいね。