• 2021.03.01

住宅ローンの繰り上げ返済で失敗しないための知識 | メリット・デメリットを知って賢く利用しよう

執筆者: 政所温也 (株式会社Choices 代表取締役)
住宅ローンの繰り上げ返済に失敗しない方法
  1. 住宅ローンの繰り上げ返済は「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類がある
  2. 返済期間短縮型は利息軽減効果が高い
  3. 返済額軽減型は毎月の返済額を少なくできる
  4. 住宅ローン控除や借り換えにも経済的なメリットはあるので必ず比較すること
  • 繰り上げ返済の注意点を知りたい
  • できる限りお得な方法で返済したい

このような思いから、住宅ローンの繰り上げ返済を検討している方もいるかと思います。

繰り上げ返済は上手に活用することで、本来支払うはずだった利息を100万円以上も削減できるケースもあります

しかしその一方で、子どもの教育費など家庭の資金全体で考えた場合、繰り上げ返済が必ずしも最善の方法にならないケースも存在するため注意が必要です

当ページでは住宅ローンの繰り上げ返済について、メリットや注意点などを分かりやすく解説していきます。

この記事を執筆・監修している専門家

執筆者

政所温也

株式会社Choices 代表取締役

保有資格・検定

2級ファイナンシャル・プランニング(FP)技能士、損害保険募集人、損保自動車専門試験合格

2010年にファイナンシャルプランナー(FP)として独立し活動中。過去に大手金融ニュースメディアや損保公式サイトでも執筆活動を行った実績があり、「読みやすく理解しやすいライティング」を得意としている。2020年9月現在で、1,700記事以上の執筆実績がある。

編集者

ナビナビ住宅ローン編集部

住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。

住宅ローンの繰り上げ返済とは

毎月の返済額とは別で、まとまった金額で住宅ローンを返済することを『繰り上げ返済』といいます。

例えば毎月の返済額が7万円だとすると、その7万円とは別に、貯金から100万円や200万円などのまとまった資金を返済に充てることを指します。

繰り上げ返済には2つの種類があり、残高の一部を返済する方法を「一部繰り上げ返済」といい、全額を完済する方法を「全額繰り上げ返済」といいます。

住宅ローン繰り上げ返済の種類

  • 一部繰り上げ返済
    住宅ローン残高の一部を返済する
  • 全額繰り上げ返済
    住宅ローン残高を全額返済する

特に一部繰り上げ返済は、住宅ローンの返済をスムーズに進めるために重要な方法です。

ここではそれぞれの繰り上げ返済の種類について解説していきましょう。

一部繰り上げ返済とは

一部繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別にまとまった金額を返済にあて、住宅ローン残高を減らす方法です。

繰り上げた返済分はすべて住宅ローンの元金に充てられるため、その分発生するはずだった利息をなくすことが大きなメリットです。

一部繰り上げ返済には『返済期間短縮型』と『返済額軽減型』の2種類があり、それぞれ利用することで得られる効果に違いがあります。

「期間短縮型」と「返済額軽減型」
「期間短縮型」と「返済額軽減型」

全額繰り上げ返済とは

全額繰り上げ返済は名前のとおり、住宅ローンの残高すべてをまとめて返済する方法です。

全額繰り上げ返済以降は住宅ローンが完済されるため、毎月の返済がなくなります。

一般的には住宅ローンの借り入れから年月が過ぎ、残高が少なくなったタイミングで実施しますが、住宅ローンの借り換えを行う際に、借り換え前の住宅ローンを完済するためにも全額繰り上げ返済は利用されます。

「返済期間短縮型」のメリット・デメリット

繰り上げ返済の返済期間短縮型では、毎月の返済額はそのままで完済までの返済期間が短くなります

返済期間短縮型という名前ですが、もっとも大きなメリットは利息軽減効果が大きいことです

返済期間短縮型のメリット

  • 返済期間を短くして、完済時期を早められる
  • 利息軽減効果が大きい
  • 保証料を一括前払いしている場合、一部返金されることがある

返済期間短縮型のデメリット

  • 毎月の返済額負担は変わらない

返済期間短縮型は「早く返したい」人向け

返済期間短縮型の繰り上げ返済は、コストを重視して早く完済したい人に向いています

特にコスト削減効果が高いのは、以下のような借り入れをしている人です。

  • 金利が高い…年1.5%以上
  • 返済期間が長い…残りの返済期間が15-20年以上
  • 借入金額が大きい…1,500万円以上

借り入れている金利が高ければ高いほど、返済期間が長いほど、さらに借入金額が大きければ大きいほど、返済期間短縮型で得られるコストメリットは大きくなります。

また、利息負担を少なくする方法のひとつに「住宅ローンの借り換え」もありますが、借り換えでは審査や手続きの手間がかかります。

対して、返済額軽減型の繰り上げ返済であれば審査や手続きの手間もかからないので、取り組みやすさも特徴のひとつです。

返済期間短縮型のシミュレーション

当初の借入金額3,000万円・借入期間30年・固定金利2.0%の状態から、10年後に150万円の繰り上げ返済を行った例を紹介します。

今回の例では返済期間短縮型と返済額軽減型では、利息軽減効果に約22万円の差があります

繰り上げ返済シミュレーション
  繰り上げ返済後
の返済期間
減少する利息額
返済期間短縮型 18年5ヶ月 69万8,424円
返済額軽減型 20年0ヶ月 31万9,830円
差額 ▲22万3,376円

※当初借入金額3,000万円/当初借入期間30年/固定金利年2.0%/元利均等返済/ボーナス払いなし
※返済が完了している期間10年/繰り上げ返済金額150万円

シミュレーション利用サイト:「資金プランしっかりシミュレーション」(「知るぽると」ホームページ:金融広報中央委員会)

返済期間短縮型はコストを重視する方にとっては、魅力の大きい返済方法と言えるでしょう。

ただし、返済期間短縮型では毎月の返済額は変わらない点には注意してください。

「返済額軽減型」のメリット・デメリット

繰り上げ返済の返済額軽減型では、返済期間はそのままで、毎月の返済額が少なくなります

返済額軽減型のメリットは、今すぐに毎月の返済額を減らせる点にあります

返済額軽減型のメリット

  • 毎月の返済額を減らせるので、直接的に家計を改善しやすい
  • 団信の保険期間を長く持てる
  • 保証料を一括前払い(外枠方式)で払っている場合、保証料の一部が返金されることもある

返済額軽減型のデメリット

  • 返済期間短縮型に比べると、利息軽減効果は小さめ
  • 返済期間は変わらない

例えば子育て世帯の場合に、子どもの成長に合わせて「塾の支払いなど教育費の負担が重くなってきた……」という事態も考えられます。

このような家計の負担を軽くする際には、毎月の固定費をすぐに軽減できる返済額軽減型が有利です

ただし、返済期間短縮型に比べると利息軽減効果は小さくなる点に注意しなければなりません

住宅ローンの契約内容によってはどちらの方法でも大きな差がない場合もあるため、まずは一度繰り上げ返済シミュレーションを行ってみると良いでしょう。

返済額軽減型は「当面の家計を楽にして返したい」人向け

返済額軽減型は、当面の家計を今すぐ楽にしたい人に向いています

住宅ローンの返済は固定費のなかでも大きな割合を占めていますが、子育てでお金がかかる時期であれば、特に負担に感じるかと思います。

返済額軽減型の繰り上げ返済では毎月の返済額を少なくできるため、余裕ができたお金を貯蓄に回したり、子どもの教育費に回したりといった利用が可能です

ただし先述したように、コストメリットでは返済期間短縮型のほうが上です

現在の住宅ローンや家計の状況と照らし合わせて、どちらのほうがご自身にとってメリットが大きいかを判断した上で、検討なさってくださいね。

返済額軽減型のシミュレーション

返済額軽減型の繰り上げ返済について、簡単なシミュレーションを見てみましょう。

以下のシミュレーションでは借入金額が少なく、さらに金利も低いため、利息軽減効果は10万円ほどしか変わりません

繰り上げ返済シミュレーション
  繰り上げ返済後
の返済期間
減少する利息額
返済期間短縮型 13年2ヶ月 22万5,339円
返済額軽減型 15年0ヶ月 11万5,276円
差額 ▲11万63円

※当初借入金額2,000万円/当初借入期間25年/固定金利年1.0%/元利均等返済/ボーナス払いなし
※返済が完了している期間10年/繰り上げ返済金額150万円

シミュレーション利用サイト:「資金プランしっかりシミュレーション」(「知るぽると」ホームページ:金融広報中央委員会)

どちらの方法で繰り上げ返済をするのか検討する場合には、ご自身の場合にどれくらい利息軽減額が変わるのか、返済方法による差額をよく確認するようにしましょう

どちらにも一概の正解はないので、ご自身の状況で使いやすい方法を選択してくださいね。

繰り上げ返済の注意点を知って賢く返済しよう

繰り上げ返済する際は、以下3つの注意点を理解しておく必要があります。

繰り上げ返済の注意点

  1. 住宅ローン控除との比較が必要
  2. 借り換えのほうがお得な可能性がある
  3. 繰り上げ返済のしすぎで手元資金を減らさないこと

それぞれ具体的なポイントを解説していきましょう。 

注意点①住宅ローン控除との比較が必要

住宅ローン控除は、契約者の所得税および住民税を軽減する制度です。

住宅ローンの借り入れから最長13年間にわたって、毎年の年末時点の住宅ローン残高の1%分の税金が控除されるため、節税効果の大きさが特徴です。

ここで注意が必要なのが、繰り上げ返済をすると年末時点の住宅ローン残高が少なくなるため、住宅ローン控除を受けられる額も少なくなるということ

そのため、借入状況や繰り上げ返済の金額によっては、繰り上げ返済を行わずに住宅ローン控除を受け続けたほうがお得になるケースも起こり得るのです

住宅ローン控除の期間が残っている状態で繰り上げ返済を行うのであれば、必ず繰り上げ返済を行っても全額の控除を受けられるのかを確認しておきましょう。

※控除期間が13年になるのは、2020年12月31日までに入居した場合に限る。それ以降の入居の場合控除期間は10年となります。ただし新型コロナウイルス感染症等の影響により、控除の対象となる住宅の取得等をした後、その住宅への入居が入居の期限(令和2年12月31日)までにできなかった場合でも、次の要件を満たすときには、その特例の適用を受けることができます(新型コロナ税特法6条、新型コロナ税特令4条)。 ・一定の期日(注)までに、住宅の取得等に係る契約を締結していること
・令和3年12月31日までに住宅に入居していること

注意点②借り換えのほうがお得な場合がある

住宅ローンの借り入れ状況によっては、繰り上げ返済よりも借り換えのほうが利息を軽減できる場合があります。

一般的に住宅ローンの借り換えで利息軽減メリットが大きくなるのは、以下のような条件で住宅ローンを利用しているケースです。

  • 金利が高い(最新の住宅ローン金利水準より1%以上高い)
  • 残りの返済期間が10年以上ある
  • 残りの返済額が1,000万円以上ある

ただし、近年では住宅ローンの金利は過去にない低水準になっており、上記の条件に満たない場合でも借り換えメリットを得られることもあります

まずは住宅ローンの借り換えシミュレーションを行った上で、繰り上げ返済とどちらのほうがお得になるのか調べてみましょう。

借り換えと繰り上げ返済の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

注意点③繰り上げ返済のし過ぎに注意

繰り上げ返済は、あくまでも資金に余裕ができた時に行うようにしましょう。

「住宅ローンを早く返さなければ」と焦り、手元の貯金をすべて繰り上げ返済に充てると、家庭の資金バランスが崩れてしまいます

子どもの教育費などある程度の見通しが立つ費用はもちろん、万が一ケガで働けなくなった場合や、失業した場合の生活費など、もしもの際の貯蓄は必要不可欠ですよね。

そもそも住宅ローンは他のローンと比べて非常に金利が低く、住宅ローン控除や団信による保障など、複数のメリットがあります。

急いで返したくなる気持ちも分かりますが、家計全体を考慮した上で、繰り上げ返済をするべきか他にお金を回すべきなのかを考えてみてくださいね

まとめ

住宅ローンの繰り上げ返済には「一部繰り上げ返済」と「全額繰り上げ返済」があり、さらに一部繰り上げ返済には「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類が存在します。

それぞれ得られるメリット・デメリットが異なるため、家計のバランスやライフプランを考慮した上で、最適な選択肢を選びましょう。

また、住宅ローンの借入状況によっては借り換えのほうがお得になるケースもあります。

住宅ローンの借り換えメリットはシミュレーションツールでかんたんに計算できるので、ぜひ一度試してみてくださいね。

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