2021年4月の住宅ローン金利動向を予想します
執筆者: 千日太郎 (オフィス千日合同会社 代表社員)
こんにちはブロガーの千日太郎です。
この記事では、執筆時点で公開されている「金融市場の動向」と、千日太郎が公認会計士として培ってきた金融ビジネスに対する知見をもって推理する「銀行の営業方針」から、2021年4月の住宅ローン金利動向を予想します。
今までのところ、ほぼ予想を的中しており、これまでの金利推移についても公開しています。
コロナによって実体経済は最悪の状態なのですが、政府による巨額の財政出動と金融緩和によって余った資金が株式市場へ流れ込み、世界的に株価は上昇しています。
そして株価の上昇に伴い、長期金利の上昇も顕著となってきました。
しかし、一方で米長期金利の上昇が株価に与える悪影響も意識されるようになり、各国中央銀行の発言や動向に対して市場が過剰に反応する局面が増えてきています。
金融機関は3月の金融市場の長期金利の動向から今後の予想を立てて4月の住宅ローンの金利を決めるため、市場がどのような判断を行うかが我々の住宅ローン金利に影響してきます。
今日は4月の住宅ローン金利を金利タイプごとに予想します。
※当記事の金利や情報は2021年3月10日時点のものを記載しております。
最新の金利情報は、必ず金融機関の公式サイトをご確認ください。
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
金融市場の動向:米長期金利の上昇がコロナバブルに与える影響とは?
世界的に株価が上昇しています。
コロナ対策として巨額の財政出動と金融緩和で多額のマネーが市場にあり、それが雪崩をうって株式に投入されたのですね。
いわゆるところのコロナ金融バブルです。
こちらは2020年12月15日~2021年3月8日までの米長期金利とダウ平均株価の推移をグラフにしたものです。
米ダウ平均株価と金利の上昇のきっかけは2021年1月6日米上院選挙でバイデン氏の率いる民主党が多数派を奪還したことで大規模な財政出動への期待が膨らんだためです。
株価は1月29日に大きく下落していますが、これは米ゲームストップ株をめぐってヘッジファンドVS個人投資家の投機取引が一時的に過熱したことによるものです。
その後は株価も金利も順調に上昇し続けていったのですが、2月末から3月にかけての米長期金利はほとんどよどみなく上昇し続けているのに対して、株価が激しく上下しています。
これは「米長期金利の上昇によって株価へ悪影響が出るのでは?」という市場の懸念がそうさせているのです。
長期金利の上昇=安全資産である国債の利回りが上がっているということです。
今の株高がバブルであるとするなら、いつか弾けます。
ならば「バブルが弾ける前に株を売りぬけて利益を確定させ、安全で高利回りになっている米国債を買っておこう」と思いませんか?
そうした動きになるのは米長期金利が何パーセントに上がったときなのか……?互いの顔色を見て市場に緊張が走っているのです。
そのため、2月末から3月にかけては米長期金利がほとんどよどみなく上昇している中で、株価が激しく上下しているのですね。
その変動のきっかけとなっているのは米国の経済統計数値の発表や米中央銀行の声明などです。
日本の長期金利も実体経済と乖離して乱高下
こちらは同じ期間の日本の長期金利と日経平均株価の動向をグラフにしたものです。
日本の長期金利が2月末かけて長期金利が0.15%まで上昇しているのは、日銀の金融政策決定会合で、現在0%程度に誘導している長期金利について、今後はある程度の変動を容認すべきとの発言が複数の委員から出たことが原因です。
これは日銀が長期金利に対して行っているコントロールの手綱を緩めるということです。
それまでは長期金利が0%となる債券価格で日銀が買い取ってくれることを信じていた投資家が「いよいよ日銀が国債を買ってくれなくなるかもしれない…」と警戒感を強めたわけです。
そこで「今のうちに持ちすぎている国債を売っておかないと!」ということになり、債券の売りが優勢となって債券価格が下がり、利回り(長期金利)が上がるという流れになっているのです。
その後3月に入ってから長期金利が下がっています。
これは3月5日に日銀の黒田総裁が長期金利の変動幅拡大に否定的な発言をしたことで、その反動で国債の買いが優勢となったことで債券価格が上がり、利回り(長期金利)が下がったためです。
いずれにしても、実体経済とは離れた投資家間のマネーゲームによって長期金利が動いているということですね。
銀行の営業方針:今後の金融情勢に対する銀行の見方が素直に表れる月
4月は決算月の翌月ということで、引き渡しが激減する月です。
年間で引っ越しが集中するのは3月と4月ですが、4月に引越しでも書類上の引き渡しは3月というケースが多いです。
4月は年度の最初の月ということもあり、それまでの営業成績の不達ノルマに追われる状況でもありません。
営業方針というファクターが金利決定に与える影響は比較的少ない月であると見ています。
例えば決算月の3月は引き渡しが最も集中するかき入れ時なので、できれば金利を上げたいという誘因が働くと考えられるのですが、4月はそうしたインセンティブが3月に比べると希薄になるのです。
そのため3月の金利から横ばいとするか、又は今後の金融情勢に対する銀行の見方が素直に住宅ローンの融資金利に現れてくるのが4月の特徴であろうと見ています。
金利タイプ別2021年4月の金利予想
では、金利タイプ別に2021年4月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
3月10日までの公開情報を前提とした予想になります。
30年超の超長期固定金利は長期金利の上昇に伴い上がる
こちらは、30年超の超長期固定金利の代表であるフラット35(買取型)の金利と長期金利の推移を2020年12月から2021年3月までとったものです。
フラット35の金利は前月の20日前後に決まりますので、その時点に青い棒グラフのフラット35(買取型)金利を立てています。
これは直近4か月の機構債の表面利率が発表される日が16日~18日となっていて、ちょうどその時の長期金利によって決まっている部分が大きいことを示しています。
例えば2021年3月の機構債の表面利率が決まるタイミングは2月16日で0.08%となっており、前月から0.04ポイント上昇しています。
そして3月のフラット35の金利は2月から0.03ポイント上昇で1.35%ということです。
特に2月から3月にかけては長期金利が急上昇しており、住宅金融支援機構が損を被ってフラット35の金利上昇を0.01ポイント抑えています。
住宅金融支援機構が非営利団体であるが所以の動きといえます。
今月の機構債発表のタイミングに長期金利がどのあたりになるのか?ピタリと予想することは難しいですが、このまま長期金利が前月より0.02~0.03ポイントほど高い水準を維持していくならば、フラット35の金利も0.02~0.03ポイント程度の上昇となるでしょう。
なお、民間住宅ローンの30年超の超長期固定金利については、フラット35と似た動きになる傾向がありますが、主要銀行で2月から3月にかけて既に便乗値上げ的に金利を上げています。
民間住宅ローンの30年以上の超長期固定金利については、フラット35同様に上昇させる銀行と既に3月に金利を上げたので横ばいにする銀行に分かれると予想しています。
20年前後の長期固定金利は横ばい又は上昇
主要銀行の2020年3月の20年固定は金利を横ばいとした銀行と上げた銀行に分かれましたが、2月に最低金利の0.945%を付けていたりそな銀行が0.05ポイント金利を上げて0.995%としました。
2月から3月にかけても金利を上げる可能性が高いという前月の予想は的中しました。
引き続き長期金利は上昇傾向にあるならば、4月にあえて金利を下げる営業上のインセンティブはありませんので、横ばいか上げる可能性が高いと思います。
10年前後の中期固定金利は横ばい
主要銀行の2021年3月の10年固定金利は上がるという予想でしたが、横ばいとした銀行と上げた銀行に分かれました。
2月に最低金利の0.499%を付けていたジャパンネット銀行が横ばいなので、概ね横ばいという結果になったと言えそうです。
3月に金利を上げようと思えば上げられる局面であえて横ばいとしているので、金利を上げるインセンティブの低い4月に上げてくる可能性は低いように思います。
2021年4月は金利を横ばいとする銀行が多いと予想しています。
変動金利は横ばい
変動金利は、長期金利ではなく中央銀行の政策金利に影響を受けます。
政策金利とは、中央銀行が民間銀行に融資するときの金利です。
景気後退時には政策金利を下げ、好景気時には政策金利を上げます。
今のところ日銀が政策金利を上げる可能性は皆無ですので、4月に変動金利が上がることは無いと予想しています。
2021年4月の変動金利は横ばいで推移するでしょう。
まとめ~変動金利かフラット35でも審査を通しておく
3月の予想については民間銀行の固定金利について、上がるという予想が的中しました。
4月の民間銀行の固定金利は横ばいか大きな上昇は無いと予想していますが、それが的中する保証はありません。
あまりにも大きく上がってしまった場合は別の金利タイプへ変更することも想定しておいた方が良いです。
同じ銀行で別の金利タイプに変更することは、直前になると不可能です。
別の金融機関で変動金利がフラット35で審査を通しておき、今決めている民間銀行が想定以上に金利を上げてきたときにはキャンセルして別の金融機関で借りる準備をしておくことをお勧めします。
わたしのご相談者にはそのような方法をお勧めしており、これまで多くの方がそれを実践されています。
これはあくまでこの記事の執筆時点で千日太郎個人が予想していることにすぎません。
実際の金利動向はその通りにならない可能性は大いにあり得ます。
引き続き、日々の金利動向に目を配っておくことをお勧めします。