緊迫するイラン情勢の影響は?2020年2月の住宅ローン金利動向を予想します
執筆者: 千日太郎 (オフィス千日合同会社 代表社員)
こんにちはブロガーの千日太郎です。
年明け早々から米国によるイラン司令官殺害、そしてイランからのミサイル攻撃による報復と立て続けに事態が急変し、一触即発のイラン情勢ですが、今のところは沈静化に向けて動いているかのように見えます。
これに対して長期金利はというと、この事態の深刻さとは裏腹に上昇していますね。
去年から続いているリスクオンの流れは変わらず、むしろこの事態によって一時的に下がった株価をチャンスとみなす投資家が多かったのです。
このような前提で、2月の住宅ローンの金利動向がどうなるか?
現時点の公開情報を前提として予想をしたいと思います。
※当記事の金利や情報は2020年1月時点のものを記載しております。最新の金利情報は、必ず金融機関の公式サイトをご確認下さい。
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
住宅ローンの金利予想は調達金利と融資金利の側面から行う
千日の公開する金利予想は今のところ5か月連続でほぼ的中しています。
なぜ精度の高い予想ができるのか?簡単に解説します。
金融機関では、小売店が原価と売価の差益によって儲けを得るように、調達金利と融資金利の差益によって儲けを得ています。
お金を商品にしていると考えれば、調達金利は商品の原価であり、融資金利は商品の売価です。
調達金利:金融市場から資金を調達するために払う金利 融資金利:私たちに住宅ローンを融資するときに課す金利 ➤:お金の流れ ():金利の種類 |
わたしは、金融市場の動向から少し先の調達金利を予想し、金融機関の営業方針から融資金利の傾向を推理して予想を出しています。
調達金利の側面:2020年2月の住宅ローン金利に影響する金融市場の動向
金融機関にとっての調達金利が上がったり下がったりする要因の一つが金融市場の長期金利(10年国債利回り)です。
こちらは2019年7月の米利下げから2020年1月9日までの日米長期金利の推移をグラフにしたものです。
米国と日本ではもともとの金利のベースが異なるので、両者を比べやすくするように米国の2.2%と日本の0%が同じ高さにくるようにしており、目盛りは0.1%刻みで統一しています。
1月3日に米長期金利が大きく下がっているのは、米軍がイランのソレイマニ司令官を殺害したことが原因ですが、すぐに上昇しています。
冒頭に述べたように、多くの投資家は株価が下がったのをチャンスと捉え、株を買ったからです。
つまり、市場としては大きなリスクとは捉えなかったということですね。
今のところ米イランの対立は沈静化しつつありますが、再び緊張が走ったとしてもマーケットが過敏に反応する展開にはなりにくいでしょう。
では、このまま長期金利は上昇していくか?というとそうはならないでしょう。
特に日本の長期金利は0%で頭打ちになっている状態です。
日本国債は長い間マイナス金利で取引されてきましたから、プラス金利の日本国債はリスク回避型の投資家たちにとっては、極めて魅力的な投資対象となります。
利回りがプラスになりそうになれば、たちどころにこうした投資家から買いが入って債券価格は上がり、利回りは下がります。
このようにして0%での横ばい傾向はしばらく続くものと予想しています。
融資金利の側面:2020年2月の住宅ローンの金利に影響する銀行の営業方針
2020年2月は29日まであるうるう年ですが、一年の中で最も営業日数が少ないですね。
そして、2月は決算月(3月)の直前月であるというのがポイントです。
つまり、住宅ローンの実行件数としては少なめですが、新築マンションの完成引き渡しが集中する3月決算のかき入れ時に向けて最後にユーザーへ低金利やメリットをアピールする月であるということです。
つまり、長期金利の上昇にともなって、金利を上げる銀行も出てくるでしょうが、主力商品を決めて戦略的に下げてくる(又は据え置く)こともあるのです。
1月には早くもその傾向が見えてきましたね。
ジャパンネット銀行が変動金利としては史上初の0.399%という低金利商品を発表して話題となっています。
これまでの決算直前期には10年固定金利を下げてくるパターンが多かったので、変動金利を下げるというのは正直意外でした。
ただし変動金利はもともと低金利だったのが、さらに少し下がったというものですから、総支払額への影響は微妙なところです。
金利タイプ別2020年2月の金利予想
では、金利タイプ別に2020年2月の金利がどうなっていくのか予想していきます。
プラス利回りの国債に対する需要は底堅く、長期金利は0%付近で頭打ちになるでしょうが、基本的には金利上昇局面であるという前提での予想となります。
30年超の超長期固定金利は横ばいor上がる
30年超の超長期固定金利の代表であるフラット35の金利は2019年10月から2020年1月まで連続して上昇し続けています。
フラット35の金利は前月の20日前後に決まりますので、その時点に青い棒グラフのフラット35(買取型)金利を立てています。
長期金利の動向については前述した通り、ゼロ%で横ばいというものです。
このまま1月20日ごろまで0%(右軸)で推移したら、フラット35金利は左軸の1.3%あたりになるということですね。
民間銀行の超長期固定金利の住宅ローンは、フラット35の金利を参考に金利を決めていますので、おおむね同じ傾向になるでしょう。
つまり横ばいか少し上がると予想しています。
20年前後の長期固定金利は横ばいor上がる
基本的にはフラット35が上がるならば、民間銀行の20年固定金利も上がると予想すべきです。
2019年12月から2020年1月にかけては、多くの銀行で金利を上げています。
ただ、現在の20年固定金利は妥当な金利水準に近づいてきているので、上がるにしても大きくは上がらないでしょう。
3月の需要期を控えているため横ばいにする銀行もあり、上げる銀行も微妙に上げる程度ではないかと予想しています。
10年前後の中期固定金利は横ばい
2019年上半期までの主要銀行の住宅ローンは10年固定をメインとして価格競争の様相を呈してきました。
そのため、10年固定はだいぶ下がりきっている状態で、これ以上に下げると必要な利益が取れない状態になってきます。
金利上昇局面の2019年末から2020年1月にかけて、フラット35や20年固定が上がったなか、10年固定金利については一部のネット銀行やメガバンクは据え置いています。
これは3月に向けての戦略商品としてあえて据え置いているので、直前の2月になってから上げるということは考えにくいです。
2月の10年固定金利は横ばいとなるでしょう。
変動金利は横ばい
変動金利は日銀の政策金利の影響を受けますので、黒田総裁が政策金利を下げれば、変動金利が下がり、逆に政策金利が上がれば全ての銀行で一斉に変動金利が上がります。
いまのところ日銀が政策金利を上げるそぶりは一切無く、変動金利を選択する人が増加傾向にあります。
住宅金融支援機構の調査によると、住宅ローンにおける新規貸出額の金利タイプ別構成比は、変動金利が70.4%(前年度比6.9ポイント増)と2年連続で上昇した一方で10年固定は14.3%(同5.4ポイント減)と2年連続で減少したそうです。
そんな中で、2020年1月にはジャパンネット銀行が変動金利としては初めて0.4%台を切る0.399%という金利を発表しました。
今のところは、ジャパンネット銀行に対抗して0.3%台にする銀行は出てきていないので、2月の実行金利としては横ばいで推移すると予想しています。
まとめ ~市場は不安定なので複数の金利タイプで審査を通しておこう
年明け早々に中東情勢が悪化しましたが、むしろ金利を上げる結果となりました。
また、今年はトランプ大統領の再選がかかっており、米中貿易協議の楽観的な見通しが優勢となっています。
2月の金利が決まる下旬までの間に大きな事件が起こらなければ、住宅ローンの金利は概ね横ばいか若干の上昇となりそうです。
もちろんこれは千日個人の予想であり、実際の金利の動きとは異なってくる可能性は大いにあります。
ある程度複数の金利タイプで審査を出しておき、予想が外れた場合の保険としてください。