2019年8月までの住宅ローンの金利を「金利タイプ」ごとに振り返ってみる
執筆者: 千日太郎 (オフィス千日合同会社 代表社員)
こんにちはブロガーの千日太郎です。
住宅ローンを借りる銀行をどこにするのか?金利タイプは?本当に悩ましいです。
ナビナビ住宅ローンでは、金利タイプ別の来月の金利予想を月の前半に公表しています。
そして同時に過去から今までの金利推移とその分析を毎月行っていこうと思います。よろしくお願いします!
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
過去の金利動向を知ることで、今最もおトクな金利タイプが見えてくる
私たちが借りる住宅ローンの金利には今の金融市場の金利が反映されています。
住宅ローンを貸す銀行もまた、利息を払って金融市場から資金を調達しており、それに自分の利益をオンして私たちに貸しているからです。
お金の流れを矢印として整理すると以下のようになります。
ですから、金融市場からの調達金利が上がれば住宅ローンの金利が上がり、金融市場からの調達金利が下がれば住宅ローンの金利が下がる、というのがマクロな法則です。
時期によっておトクな金利タイプは変遷していく
しかし、銀行は必ずしも全ての住宅ローンの商品について調達金利と連動させて金利を変動させている訳ではありません。
その時々の営業方針によって、頑張って金利を下げる商品もあれば、高い金利で据え置く商品もあるのです。
そして不思議なことに、多くの銀行が金利を下げて価格競争となる金利タイプは集中する傾向があります。そして、その金利タイプは時とともに変遷していくのです。
こうしたことは、金利タイプごとに過去の金利推移と、その時にあった事象を照らしあわせていくことで見えてきます。
金利タイプ別2019年の金利推移
では、直近2019年8月までの各金利タイプごとの金利推移についてお話ししていきましょう。
30年超の超長期固定金利は2019年8月で史上最低金利を更新した
30年超の超長期固定金利の代表はフラット35です。
もともと金融市場の長期金利が低いため低金利で推移していたのですが、7月を境としてさらに低金利になっています。
1月と8月の比較では実に0.16%の低下になっています。この1.17%という金利はフラット35史上最低金利なのです!
(注)グラフのフラット35の金利は買取型の最低金利としており、長期金利は住宅金融支援機構が販売する機構債の表面利率の発表日前日の新発10年国債利回りの終値としています。
<2019年度のフラット35(買取型)金利推移>
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
---|---|---|---|---|---|
1.33% | 1.31% | 1.27% | 1.27% | 1.29% | 1.27% |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
1.18% | 1.17% |
中には、2016年8月に英国のEU離脱ショックで0.9%になったときが最低金利だと言う人も居るでしょう。
しかし2017年9月までのフラット35は団信保険料が別になっていて、毎年一回、残高の0.358%を一括前払いするというものでした。
それが2017年10月からは金利に団信の保険料が込みとなっており、団信に加入しない場合は団信込みの金利から0.2%引き下げとなるのです。
分かりやすく並べて比較すると下表のようになります。
年月 | フラット35金利 | 団信料率 | 住宅ローン+団信 |
---|---|---|---|
2016年8月 | 0.9% | 0.358% | 1.258% |
2018年8月 | 1.17%(団信込み) 0.97%(団信抜き) |
1.17% |
なので、団信に加入しない場合は2016年8月がフラット35の史上最低金利ですが、団信に加入する場合では2018年8月がフラット35の史上最低金利なのですね。
ですから、長期の固定金利で借りたい、かつ、団信に加入したいと言う人にとって今のフラット35で借りるということは、最も低金利で借りることが出来るということになります。
20年固定金利もまた史上最低金利に突入!
当初固定金利の中ではこれまで20年の固定金利はあまり目立つ位置づけではありませんでした。6月まではフラット35(買取型)の金利と50歩100歩という感じでした。
金利が同じくらいならば金利が固定されている期間の長いフラット35の方がおトクという位置づけでした。
(注)グラフのフラット35の金利は買取型の最低金利としており、20年固定金利は7月から金利を下げてきている金融機関の2019年初頭から直近までの金利推移を模式的に表したものとなっています。
<2019年度の20年固定金利推移 >
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
---|---|---|---|---|---|
1.3%前後 | 1.3%前後 | 1.3%前後 | 1.3%前後 | 1.3%前後 | 1.3%前後 |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
0.9~0.95% | 0.9~0.95% |
しかし2019年7月を境として、1%を下回る金利を出している金融機関が数社出てきています。
フラット35の金利が下がったのは長期金利と連動して下がっているという説明が出来るのですが、20年固定については明らかに長期金利の低下を超えた引き下げになっていますよね。
過去から今までで20年の固定金利が1%を下回るということはありませんでした。
30年超の超長期固定金利と並んで史上最も低金利で借りることの出来る金利タイプと言えそうです。
10年前後の中期固定金利は横ばい
主要銀行の住宅ローンは10年固定をメインとして価格競争となっており、10年固定はだいぶ下がりきっている状態です。
7月を境としてフラット35の金利が下がっているのですが、10年固定については横ばいで推移しています。
(注)グラフのフラット35の金利は買取型の最低金利としており、10年固定金利は過去から低金利で主力商品としている金融機関の2019年初頭から直近までの金利推移を模式的に表したものとなっています。
<2019年度の10年固定金利推移 >
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
---|---|---|---|---|---|
0.6%前後 | 0.6%前後 | 0.6%前後 | 0.6%前後 | 0.6%前後 | 0.6%前後 |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
0.6%前後 | 0.6%前後 |
この10年固定が史上最も下がったのは英国のEU離脱ショック直後2016年8月の0.35%です。
フラット35は団信込みでその当時よりも低金利になっているのですが、10年固定については、当時よりも少し高めの金利なのです。
変動金利は過去10年半にわたり下がり続けてきたが…?
住宅ローンをインターネットで検索していて、まず目につくのが変動金利だと思います。数値としては最も低金利になるので、各行が最も目立つところに金利を表示しています。
変動金利は銀行間で資金の融通を行うときの金利に連動し、これは中央銀行(日銀)が民間銀行に融資する政策金利の影響を受けます。
私が初めて住宅ローンを借りたのは2008年9月のリーマンショック直後で政策金利が大幅低下したタイミングです。そのとき最も低金利の変動金利で0.975%くらいでした。
それから10年半の間、日本の政策金利は一向に上がらず、住宅ローンの変動金利はその間に少しずつ下がり半分位になり今に至るのです。
最近では2019年7月に米国が利下げしたことが大きなニュースとなっていて、日銀もさらに利下げが必要な局面か?と言われていますが、これによって今後変動金利が下がるということはあまり期待できないでしょう。
政策金利が下がれば、変動金利が下がるはずなのですが、実質的に政策金利はマイナスになっていまして、もう下げ代が残っていない状態です。
また民間銀行は営利企業ですから明らかに赤字となるような金利まで下げることはないでしょう。
まとめ~過去からの推移で考えると長期固定金利がおトク
住宅ローンの金利は金融市場の金利の影響を受けます。今は金利が下がっている状況なので、基本的にどの金利タイプについても低金利だと言えますが、特に下がっているのは長期の固定金利です。
まとめると以下のようになります。
金利タイプ | コメント |
---|---|
30年超の固定金利 | フラット35が団信込みで史上最低金利にまで下がっている。 |
20年固定金利 | 1%未満となる史上最低金利にまで下がっている。 |
10年固定金利 | 低金利ではあるが、2019年度内は基本的に横ばい。 |
変動金利 | 低金利ではあるが、ここ数年は横ばい。 |
住宅ローンの広告を見ると変動金利が一番に目を引きますが、過去からの金利推移という面から見ると、より長期の固定金利におトク感があるのです。ぜひ参考にしてください。