2020年12月までの住宅ローンの金利推移を金利タイプごとに振り返り!
執筆者: 千日太郎 (オフィス千日合同会社 代表社員)
こんにちはブロガーの千日太郎です。
ナビナビ住宅ローンでは、金利タイプ別の来月の金利予想を毎月公表しています。
この記事では、前月の予想に対して実績の金利がどうなったか?また、過去から今月までの金利推移を分析し、現時点でのおススメ度を5段階評価で評価します。
この記事を執筆・監修している専門家
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
この記事の目次
コロナ感染拡大下でおトクな金利タイプは?
2020年はほぼコロナ一色でしたが、年末にかけて株価は上昇しています。
これは90%の有効性があるというワクチン開発への期待から、景気敏感株へリスクマネーが流れ込んでいるためです。
しかし、一方で新型コロナウイルスの感染が再び拡大しており、安全資産としての債券への需要も根強く長期金利は上がりにくい状況が続いており、株価は約30年ぶりの高騰となっているものの、長期金利はおおむね横ばいで推移しています。
こうした現在の状況に至るまでの2020年12月までの金利動向を振り返り、今おトクな金利タイプを分析します。
金利タイプ別2020年1月~2020年12月の金利推移
では、直近2020年12月までの、住宅ローン金利タイプごとの前月予想の答え合わせとこれまでの金利推移、おススメ度について見ていきましょう。
30年超の超長期固定金利
30年超の超長期固定金利の代表はフラット35です。
住宅金融支援機構の証券化支援事業をもとに民間金融機関と共同で2003年から提供されている住宅ローンであり、民間銀行が金利を決める際にも参考になっています。
フラット35の金利はおおむね横ばいで推移
2020年 | 1月 | 2月 | 3月 コロナショック |
4月 |
---|---|---|---|---|
千日予想 | 横ばい or 上がる |
横ばい or 上がる |
横ばい or 下がる |
下がる |
実績 | 上がった 的中!! |
上がった 的中!! |
下がった 的中!! |
上がった! |
2020年 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 |
千日予想 | 横ばい | 横ばい | 横ばい | 横ばい |
実績 | 横ばい 的中!! |
0.01下がった ほぼ的中 |
0.01上がった ほぼ的中 |
0.01上がった ほぼ的中 |
2020年 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
千日予想 | 横ばい | 横ばい | 横ばい | 横ばい |
実績 | 0.01上がった ほぼ的中 |
0.02下がった! | 0.01上がった! | 横ばい 的中!! |
新型コロナウイルスの感染拡大の第一波(コロナショック)は落ち着き、直近の数か月は0.01ポイントの小幅な上下を交互に繰り返しています。
概ね横ばいという予想どおりに実績も概ね横ばいとなっており、12月の予想は的中しました。
株価は上昇していますが、長期金利は横ばいと予想しており2021年1月の予想も横ばいとしています。
詳しくは下記記事を読んでみてくださいね。
2020年12月までの推移とおススメ度
2020年3月のコロナショックの前後では乱高下しましたが、その後なだらかな右肩上がりを経て、おおむね1.3%前後に落ち着いています。
(注)グラフのフラット35の金利は買取型の最低金利としており、長期金利は住宅金融支援機構が販売する機構債の表面利率の発表日前日の新発10年国債利回りの終値としています。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
---|---|---|---|---|---|
1.27% | 1.28% | 1.24% | 1.30% | 1.30% | 1.29% |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
1.30% | 1.31% | 1.32% | 1.30% | 1.31% | 1.31% |
千日太郎としてはコロナ不況下のフラット35の適正水準を1.3%と考えており、数か月先に実行を予定している人の住宅ローンシミュレーションを行う場合の金利は1.3%で行います。
しかしグラフを見てもわかるように、コロナ前の方が長期金利は低金利であり、フラット35の金利も今よりはるかに低金利でした。
過ぎたこととは言え、今の金利水準は経済実体と比較すると少し割高という感は否めません。
フラット35については、オススメ度は基本的に高いものの、前月の4.0から横ばいとします。
ただし、2021年の3月は決算月ですので、1月から3月にかけて民間銀行の超長期固定金利は下がる傾向があり、この年内から実際に下がってきています。
民間の超長期固定金利は前月の4.0よりお勧め度はアップし4.5とします。
★★★★★オススメ度は5点満点で4.5点★★★★★ |
20年固定金利
20年固定金利は、40代から住宅ローンをスタートする人によくお勧めしています。
定年退職までの期間と金利の固定期間が近似しているので、定年までに完済する計画とマッチするためです。
20年固定金利は、金融市場の動向だけでなく、銀行の営業方針によって変動する傾向が高いため金利予想の難度が上がります。
下半期に入って銀行間の低金利競争がスタート
2020年 | 1月 | 2月 | 3月 コロナショック |
4月 |
---|---|---|---|---|
千日予想 | 上がる | 横ばい or 上がる |
横ばい or (期待含みで) 下がる |
横ばい or (期待含みで) 下がる |
実績 | 上がった 的中!! |
横ばい 的中!! |
下がった 的中!! |
下がった 的中!! |
2020年 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 |
千日予想 | 横ばい | 横ばい or 上がる |
横ばい | 横ばい |
実績 | 横ばい or 上がった 的中!! |
横ばい 的中!! |
0.05上がった! ほぼ的中 |
銀行により対応が 分かれた |
2020年 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
千日予想 | 横ばい | 横ばい | 横ばい or 下がる |
横ばい or 下がる |
実績 | 銀行により対応が 分かれた |
下がった! | 銀行により対応が分かれた | 横ばい or 下がった 的中!! |
年度の下半期に入り、民間金融機関の間で住宅ローンの金利引き下げ競争が始まっています。
そうした傾向を反映してか、11月から12月にかけて、主要銀行が金利を下げてきました。
あくまで私見ですが、まだまだ下がる余地があると見ています。
2021年1月の20年固定は横ばい又は期待含みで下がると予想しています。
詳しくは下記記事を読んでみてくださいね。
2020年12月までの推移とおススメ度
直近の6か月で「住宅ローン控除で借入が多いほどおトクになる」1%のラインを下回る水準で推移しています。
(注)グラフのフラット35の金利は買取型の最低金利としており、20年固定金利は7月から金利を下げてきている金融機関の2019年初頭から直近までの金利推移を模式的に表したものとなっています。
今の20年固定の最低金利は1% を下回っています。
これに対して住宅ローン控除で住宅ローン残高×1%の税金が還付されるので、ローン残高が多ければ多いほど逆に儲かってしまうのです。
実は、これに対して会計検査院の検査で「住宅購入者ばかり優遇しすぎではないか?」という指摘があり、将来的には今のような儲け方ができなくなる可能性もあります。
また、借入から10年を上限にこの住宅ローン控除を受けられるのですが、2019年10月に行われた10%の消費増税の特例で13年間に延長されています。
コロナ不況が長引く見込みとなっているため、この13年の延長措置はさらに今後も延長して適用される可能性があります。
- 住宅ローン控除が1%であること
- 住宅ローン控除の期間が13年であること
- 20年固定金利が1%未満であること
この3つがそろう条件下では、20年固定金利のオススメ度はかなり高いです。
前月と同じく4.5とします。
★★★★★オススメ度は5点満点で4.5点★★★★★ |
10年前後の中期固定金利
主要銀行の10年固定金利のトレンドとしては長期金利が上下しても住宅ローンの金利に影響せず、9月までの10年固定金利は一貫して横ばいで推移してきました。
しかし、2020年度の下半期に入る10月から12月にかけて一斉に主要銀行が金利を下げ始めています。
12月は嬉しい誤算も
2020年 | 1月 | 2月 | 3月 コロナショック |
4月 |
---|---|---|---|---|
千日予想 | 横ばい or 上がる |
横ばい | 上がる or (期待含みで) 横ばい |
横ばい or (期待含みで) 下がる |
実績 | 横ばい 的中!! |
下がった! | 横ばい 的中!! |
横ばい 的中!! |
2020年 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 |
千日予想 | 横ばい | 横ばい or 上がる |
横ばい | 横ばい |
実績 | 横ばい or 上がった 的中!! |
横ばい 的中!! |
横ばい 的中!! |
横ばい 的中!! |
2020年 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
千日予想 | 横ばい | 横ばい | 横ばい or 下がる |
横ばい or 下がる |
実績 | 横ばい 的中!! |
下がった! | 横ばい or 下がった 的中!! |
横ばい or 下がった 的中!! |
12月には最低金利を付けているネット銀行の金利が金利を0.01ポイント下げたのが嬉しい誤算でした。
そして2位グループの三井住友信託銀行も金利を下げました。主要銀行の中で金利を上げた銀行はなく、ほぼ予想が的中しました。
ちなみに2020年12月の10年固定金利についても「横ばい(2位グループは下げる可能性あり)」と予想しています。
詳しくは下記記事を読んでみてくださいね。
2020年12月までの推移とおススメ度
コロナショック後、ほとんど横ばいで推移してきましたが、下半期を境に下がっています。
前述のフラット35や20年固定は一時的に上がった局面もあるのですが、10年固定の主要銀行の最低金利については、ここ2年は一貫して下がり続けていると言えます。
(注)グラフは過去から10年固定金利を主力商品としている金融機関の2019年初頭から直近までの最低金利の推移を模式的に表したものとなっています。
10年固定金利の最低金利はネット銀行の0.53%です。2位グループのメガバンク(三菱UFJ銀行、りそな銀行など)は10月11月の2か月連続で金利を下げましたが、12月は横ばいです。
今はコロナの感染拡大期にあり、これまで一貫して下がってきていた10年固定金利が上がる要素は少なく、おススメ度は依然として高く前回の4.5点を維持します。
★★★★★オススメ度は5点満点で4.5点★★★★★ |
変動金利
各行が名目上の最低金利を競っているような状態ですが、変動金利についてはどの銀行も僅差です。
利用者の我々としては金利だけに引っ張られず、実際の支払額(毎月の返済額や総支払額)で比較すべきです。
期間限定のキャンペーンを除きおおむね横ばい
2020年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 |
---|---|---|---|---|
千日予想 | 横ばい | 横ばい | 横ばい | 横ばい |
実績 | 少し下がった | 横ばい 的中!! |
横ばい 的中!! |
少し下がった |
2020年 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 |
千日予想 | 横ばい | 横ばい | 横ばい | 横ばい |
実績 | 横ばい 的中!! |
横ばい 的中!! |
少し下がった | 横ばい 的中!! |
2020年 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
千日予想 | 横ばい | 横ばい | 横ばい | 横ばい |
実績 | 横ばい 的中!! |
横ばい 的中!! |
横ばい 的中!! |
横ばい 的中!! |
変動金利はどの銀行もおおむね0.5%台かそれを下回る水準です。
ジャパンネット銀行など一部のネット銀行では0.3%台に突入しています。
ただしベースの金利が低いため、実際に毎月の返済額や総支払額で比較すると、変動金利同士では有意な差にならないことが多いです。
そうした場合は無料で付帯する疾病保障の手厚さなどが決め手になると思います。
なお、2021年1月の金利予想は「横ばい」としています。
詳しくは下記記事を読んでみてくださいね。
2020年12月までの推移とおススメ度
住宅ローンの変動金利は銀行間で資金の融通を行うと市中金利に連動し、これは中央銀行(日銀)が民間銀行に融資する政策金利の影響を受けると言われます。
ただし、日銀の政策金利はすでにマイナスとなっており、現時点ではその影響力を失っていると考えています。
むしろ前述のように銀行間の駆け引きによって上がったり下がったりする傾向にあります。
しかし、念のため直近の政策金利の動向について確認しておきましょう。
米連邦準備理事会(FRB)はコロナショックの2020年3月にゼロ金利政策を導入しており、少なくとも2022年末までという長期間にわたりマイナス成長が続くとの見通しを表明しています。
さらに、大手銀行3グループは2020年度の中間決算で日本経済の回復ペースは当初の想定よりも遅くなるとの見方を示しています。
現時点で変動金利が上がる要素は皆無と言えるでしょう。
しかし、変動金利は6か月ごとに金利を見直し、銀行の判断で上げることのできる金利タイプです。
ワクチン開発への期待から株価は30年ぶりの上昇となっています。
想定よりも早くコロナ収束への期待が高まれば、急激なV字回復で金利が上がる可能性もゼロとは言えません。
おススメ度は前月の4.5から0.5ダウンの4.0とします。
★★★★★オススメ度は5点満点で4.0点★★★★★ |
まとめ~年度末にかけて住宅ローンの金利面では追い風
株価は上昇していますが、新型コロナウイルスの感染拡大影響によって長期金利は短期的には上がらないと予想しています。
また、年度末に向けて民間銀行の低金利競争が加速しつつあるため、どの金利タイプを選んでも、低い金利で実行できる可能性が高いでしょう。
住宅ローンの金利面では追い風が吹いています。
この記事の執筆時点で、ということですが千日太郎の考えるおススメの住宅ローンは以下の通りです。
金利タイプ | オススメ度 | コメント |
---|---|---|
変動金利 | 4.0点 | もともと低金利で、今後さらなる下がり代は少ない。 ワクチン開発によって想定より早くV字回復し適用金利が上がるリスクがある。 |
30年超の 固定金利 |
フラット35 4.0点 |
フラット35の金利はコロナ不況下の割には高い水準。 |
民間 4.5点 |
年度末にかけて金利が下がってきている。 | |
20年 固定金利 |
4.5点 | 1%未満ならば住宅ローン控除でメリットが大きく、今後期末に向けてさらに下がる可能性もある。 |
10年 固定金利 |
4.5点 | コロナショック前後で変わらず低金利で推移している。 今後期末に向けてさらに下がる可能性もある。 |
少しでも低金利で低リスク、低コストの住宅ローンを選ぶための参考としてください。